変則ソリティア『The Solitaire Conspiracy』が、著名インディースタジオにとって最高のスタートを切る。多言語対応が功を奏す

変則ソリティア『The Solitaire Conspiracy』が、英国のゲームスタジオBithell Gamesにとって最高のスタートを切る。多言語対応が功を奏したと振り返る。

『Thomas Was Alone』『Volume』『John Wick Hex』などで知られるインディースタジオBithell Games。同スタジオが10月6日に配信した変則ソリティアゲーム『The Solitaire Conspiracy』が好調のようだ。同スタジオを率いるMike Bithell氏は、スタジオにとって最高のスタートを切ったと、セールス面での好調ぶりを伝えていたほか(該当ツイート)、多言語対応したことが功を奏したと語っている。

https://twitter.com/mikeBithell/status/1313618285884248065
https://twitter.com/mikeBithell/status/1317530831397728264


ミニマルなゲームデザインとビジュアルが特徴的なBithell Games。実験的な作品が多く、これまではリーチする層を絞った作品づくりをしているという印象が強かった。『The Solitaire Conspiracy』はソリティアを土台としつつ、変則ルールとFMVカットシーンによるナラティブ要素、そしてBithell Gamesの強みであるスタイリッシュなビジュアル&サウンドデザインを取り入れており、過去作のような変わり種ながらも、同スタジオの作品の中ではとっつきやすい印象を受ける。

『The Solitaire Conspiracy』は、トランプを使ったカードゲーム「ソリティア」のゲームルールのひとつ「Streets and Alleys」をアレンジした作品。左右に4つずつ積まれた山からトランプを引き、それぞれの種類のエースからキングへと順に中央のスペースに並べ、すべてのカードを並べることができればクリア。変則ルールとして、ダイヤやスペードといったスートのかわりに登場各勢力(クルー)が割り当てられ、J/Q/Kの絵札は特殊なスキルを発動させることができる。

たとえば「Mantis Group」というクルーの絵札は、任意のスタック(カードの山)を爆発させ、そのスタックにあったカードを、ランダムで他のスタックに移動させる。「Omega Coda」というクルーの絵札は、任意のカードの上に移動させると、そのカードと同じ数字のカードを、それぞれのスタックの一番上に移動させる。ゲーム進行の手助けになるパワーがある一方で、進行の邪魔になり得るパワーも。例として「Scorpio」クルーの絵札は、移動した先のトップにあるスート/クルーの次に必要なカードを、スタックの一番下に移動させる。こうしたクルーの力をうまく使い、ときにはうまく避けることで、ゲームを攻略していく。


物語としては、世界屈指の諜報機関であるプロテゴが崩壊し、誰も信用することのできない陰謀が渦巻くなか、離散した諜報員たちを掌握するという近未来を舞台にした内容となっている。プロテゴ唯一の生き残りであるアナリストのジム・レイショの指示を受けながら、「ソリティア」と呼ばれる危険人物の行方を追うのだ。キャンペーンモードでは、ミッションをクリアして新しいクルーをアンロックしつつ、Greg Miller氏が演じるジム・レイショのフルモーションビデオを通じて物語が展開していく。


『The Solitaire Conspiracy』は日本語を含む8言語に対応しており、Bithell氏によると、こうした多言語対応が新規プレイヤーの開拓にうまくつながったという。これまでBithell Gamesが出したタイトルのローカライズ歴を振り返ってみると、同スタジオのヒット作『Volume』は7言語(のちに日本語も追加)、Good Shepherd Entertainmentがパブリッシャーとしてついた『John Wick Hex』は7言語と、多言語対応に無縁だったわけではない。

ただ、『Thomas Was Alone』『Subsurface Circular』『Quarantine Circular』といった実験的な小規模プロジェクトは英語のみの対応にとどまる傾向にあった。また過去に多言語対応した作品と違い、『The Solitaire Conspiracy』はプレイヤー人口の多い中国語(簡体字)にも対応している。細かいところであるが、Steamストアページのスクリーンショットも、言語設定によって切り替わるようになっている。

https://twitter.com/mikeBithell/status/1314145055268048902


本作は多言語に対応しているほか、ソリティアという多世代に訴求し得るカジュアルゲームであることも特徴のひとつ。「親や祖父母と一緒にプレイした」というエピソードを多く耳にしたと、Bithell氏は報告している。普段ビデオゲームを遊ばなくとも、ソリティアのルールさえ知っていればすんなり入っていけるのだ。

本作のキャンペーンミッションの合間では、フルモーションビデオのカットシーンによって物語が展開される。中心人物であるジム・レイショを演じるのは、Kinda FunnyのGreg Miller氏。同氏は近年、海外ゲームイベントの司会役として起用される機会も多く、その顔を知っているゲーマーも増えてきていることだろう。俳優業は本職ではない。ゲームメディア編集者出身であるMiller氏の熱演も、本作の見どころのひとつ。Kinda Funnyファンとしても楽しめるわけだ。なお作中ではKinda Funnyの動画を見たことのある人にだけわかるような小ネタも、台詞の一部としてさりげなく取り入れられている。

『The Solitaire Conspiracy』の成功を受けて、Bithell氏は定期アップデートの配信を告知。さっそく先日10月15日には「キャンペーン・プラス」モードを追加した。通常のキャンペーンとは違い初期カードの並びを固定にし、ターン制限を設けることで、パズル的な側面を強めたモードだ。通常のキャンペーン以上に、各クルーの有効活用が求められる。11月にはロードマップの公開を予定しているとのことで、コンテンツは今後も増えていきそうだ。

https://twitter.com/mikeBithell/status/1314601502711975936

『The Solitaire Conspiracy』はSteamにて配信中。価格は1220円で、日本語にも対応している。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

Articles: 1953