Respawn Entertainmentは10月7日、『Apex Legends』にて期間限定イベント「Aftermarket」を開始した。同イベントでは、限定モード「Flashpoint」が登場。昨日には先立ってアップデートが配信され、クロスプレイベータや各種レジェンド・武器に向けたバランス調整などが実施された。そうした中、海外掲示板Redditでは、今回のレジェンドの調整内容や要望などについて、さまざまな意見がユーザーらによって交わされている。なかでもローバについては特に話題性の高いトピックとして注目されており、今回『Apex Legends』の開発陣は、同レジェンドに付随するユーザーからの疑問に対し、コメントを寄せている。
最新パッチにてバランス調整の対象となったローバ。ウルトおよびパッシブの効果範囲が約1.5倍となり、さらに試合開始時におけるウルトのチャージ量が50%に引き上げられた。一方、該当の調整内容について、一部ユーザーは難色を示しており、「ウルトではなく、戦術アビリティを強化してほしい」とのコメントも寄せられている。というのも、ローバのタクティカルについてはたびたびその弱点の大きさが指摘されており、リングを投てきした際の硬直時間や目立つSEなどが一部プレイヤーから好ましく思われていない。少なくともALGS(『Apex Legends』の公式大会)などの競技シーンにおいてはピック率も低く、一部では“一般人枠”(競技には向いていない枠)との皮肉めいたレッテルが貼られている側面もある。
ローバに対する評価として、前述のようなネガティブな意見も散見される中、なぜ今回のアップデートで戦術アビリティに手を加えなかったのか。その答えとして、開発陣はテレポート能力が試合環境に与える影響と、その繊細さについて語っている。どうやらローバの戦術アビリティ、ひいてはテレポート能力の強化はゲームバランスを大きく崩す可能性があるようだ。まず、『Apex Legends』の戦闘において開発陣は、予見可能性と行動の可読性を重視しているという。つまり、敵の行動を予測することで、それに対処できる余地を常にプレイヤーに与えなければならないと考えているようだ。
そこで、仮にローバのテレポートがボタンひとつで瞬時に可能になったとしよう。すると相手プレイヤーは、ローバの行動をまったく予測できなくなり、対処の余地も喪失してしまう。また、ローバが一切の硬直時間なしにテレポート可能になると、撃ち合いにおいても大きすぎるアドバンテージを与えてしまうと開発陣は考えているようだ。撃ち合い中に突然姿を消すことは、戦闘を台無しにしてしまう要因になりかねないという。これらの懸念を踏まえると、『Apex Legends』の戦闘バランスを保つうえで、テレポートの強化にはかなりの慎重さを要さなければならないのだろう。
以上のこともあり、ローバの戦術アビリティに関しては、簡単には調整できない事情があるようだ。開発陣は現在のテレポート能力について、硬直時間や特徴的な投てき音は、前述した懸念を避けるためにあえて実装しているという。そうすることで、ローバのテレポートに対処できる余地を残しつつ、公平なゲームバランスを保っているとのこと。あくまでいかなる状況においても、プレイヤー同士が対等に戦える環境を構築していきたいのだろう。そうした観点を踏まえると、ローバの戦術アビリティになかなか手が加えられないことにも納得できそうだ。
ただし、今後ローバの戦術アビリティに一切調整が入らないと決まったわけではない。ユーザーのひとりが「前に開発者がローバの戦術アビリティの調整には、新しいアニメーションが必要だと言っていたから、(今回のウルト・パッシブ強化は)次シーズンでの強化に向けた調整の可能性がある」とコメントしたところ、それに対して開発陣は「その可能性はあるよ!」とポジティブな回答。将来的には、ランパートのガトリングや防護壁にもアニメーションの調整とともに強化を施す予定があることに触れつつ、それと同様にローバの戦術アビリティにも手を加えることをほのめかしている。一方で、あくまで可能性の段階ということも強調しており、確実に強化されるとは言い切れない面もあるようだ。
今回開発陣はローバのほか、レジェンド全体におけるバランス調整の方針についても説明している。それによると、『Apex Legends』はあくまで銃撃戦を主体としたFPS作品であるといい、意図的にレジェンドごとの能力が強くなりすぎないように調整しているようだ。たとえば、ボタンひとつでダメージを与えるだけの能力など、単純な効果に終わってしまうアビリティは作らないようにしているという。開発陣はレジェンドづくりにおいて、バトルロイヤルにおける戦闘面以外のあらゆる側面にリーチする能力も必要だと考えているようで、ローバもそうした考えのもと生み出されたレジェンドのひとり。戦利品の獲得という、戦闘とはまた異なる軸に強みを持つキャラクターとして彼女は戦場に降り立った。
しかし現時点では、開発陣もローバにはさらなる調整が必要だと考えているようだ。実装前の予想に反して、ローバの戦利品に特化した能力は、それほど強力な効果を発揮できていない印象を受けたという。開発陣曰く、ローバについては今後も調整していきたいものの、ゲーム内の環境変化を踏まえると、調整には時間がかかるかもしれないとも述べている。一方で、性能の強さだけがすべてではないともコメントしており、キャラクターとしての人気に焦点を当てると、ローバを好んで使用するプレイヤーも少なくないという。ローバも含め、レジェンドの調整については、性能の強さのみを見てその内容を決めるのではなく、キャラクターとしてのアイデンティティも尊重していく必要があるとし、開発陣は今回の回答を終えている。
『Apex Legends』はライブサービス型の作品。その内容や環境は流動的であり、さまざまな面において都度適切な変化が求められる。今回はその中のレジェンド、特にローバについて、戦術アビリティの調整に対する開発陣のスタンスが明らかになった。ローバのみならず、レジェンドについては日々その性能について、改善や調整の要望が持ち上がっている。一方で、開発陣が今回述べたように、強さだけがキャラクターのすべてではない面も大いにあるだろう。『Apex Legends』が抱える圧倒的なプレイヤーベースの中には、さまざまプレイヤー層が存在する。勝つことを念頭にキャラクターを選ぶものもいれば、好きという感情でキャラクターを選ぶものいる。この両スタイルに決して優劣はない。開発陣は今後も、両方のユーザーにとって満足のいくバランス調整を模索し続けていくのだろう。