PS5『Marvel’s Spider-Man』クリエイティブディレクター、脅迫被害に遭う。理由は“ピーターの顔を変えたから”

 

Insomniac GamesのクリエイティブディレクターBryan Intihar氏は10月4日、Twitterにて脅迫被害に遭っていることを告白した。Intihar氏は「スパイダーマン」のファンの情熱に感謝しつつも、脅迫じみたメッセージを送りつけてくるユーザーに対し警鐘を鳴らしている。同氏によると、「見つけ出して懲らしめてやる!早く直すんだ!」といった脅しが届けられているそうで、そうした行動はクールではないとコメント。お互いを尊重して、いい方向にしていこうと呼びかけた。

脅迫されている理由はずばり、『Marvel’s Spider-Man』の“ピーター顔変更問題”だろう。PS4で発売された『Marvel’s Spider-Man』は、PS5向けにリマスターされ11月12日に発売される。リマスター版は、『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales Ultimate Edition』を買うことで手に入るコンテンツだ。コンテンツこそ大きく追加されていないが、次世代コンソールPS5のパワーを活かしたリマスターとなっており、ビジュアルがアップグレードされているほか、レイトレーシング表現の導入やアンビエントシャドウが実装されている。またリマスターにあわせて、主人公のピーター・パーカーのフェイスモデルが変更されており、この変更が議論を呼んでいるようだ。

PS4版『Marvel’s Spider-Man』のピーター・パーカーは、ニューヨーク生まれのアメリカ人俳優John Bubniak氏がフェイスモデルを務め、声優のYuri Lowenthal氏が声とモーションキャプチャーを担当していた。しかしPS5向けリマスター版では、Lowenthal氏の担当パートはそのままに、ピーターのフェイスモデルがBen Jordan氏へと変更されている。Insomniac Gamesは、PS5版をリリースするにあたり、Lowenthal氏の演技により合うフェイスモデルを見つける必要があったと説明。ファンの声に耳を傾けゲームを改善していくと語りながら、フランチャイズの将来を見据えた自分たちの決断を信じてほしいと、呼びかけていた。


しかし、見知ったピーターの顔が変更されることに、ユーザーは大きく反発。YouTubeのリマスター版トレイラーの評価は低評価が高評価を上回り、SNSでは顔が変わることに不満を呈する声が多数。シリーズを率いるIntihar氏もこうした不満は予想していたようだが、それ以上にファンにとってピーターの顔の変更は受け入れがたいものだったようだ。Lowenthal氏は「俺の顔が悪かった。俺の骨格が残念だったので、俺の骨格を責めてくれ」と自虐するなど、コミュニティは異様な雰囲気に包まれていた。

そして、そうした不満は過激化し、Intihar氏のもとに嫌がらせのようなコメントが届けられていたようだ。SNSでは、数々のクリエイターがIntihar氏を擁護し脅迫コメントに反発。ライターや声優として活躍するAlanah Pearce氏は、ユーザーはゲームに対して情熱的になることもできるし、開発側が下した決定に対し“情熱を怒りに変えずに”嫌がることもできるとコメント。ハラスメントは、恥ずべきことだと批判している。

またInsomniac Games と同じくSIEワールドワイド・スタジオ傘下スタジオに属する、『ゴッド・オブ・ウォー』ディレクターCory Barlog氏も注意喚起。Intihar氏は善き人であり、チームは懸命にゲーム制作に取り組んでいるとコメントし、脅迫は論外だと否定。自分たちが愛するモノを作る人々に、良くしていくべきだと唱えた。また同じくユーザーから脅迫行為を受けた経験があるという『The Last of Us Part II』クリエイティブディレクターNeil Druckmann氏も、とんだひどい目に遭っているとしてIntihar氏に同情を示した。

ピーター・パーカーのフェイスモデルを変更するという決断は、Marvel側も指示している様子。Marvel Gamesのヴァイス・プレジデントを務めるBill Rosemann氏は、Intihar氏への脅迫というのは、ノーマン・オズボーンやオクトパス博士、そしてミスター・ネガティブといったヴィランがするような行為だと、『Marvel’s Spider-Man』の悪役の名をあげつつ問題提起。ファンに、「あなたの人生をヴィランとして過ごしたいですか、それともピーター・パーカーのようなヒーローとして過ごしたいですか?ヒーローに、ピーターになりましょうよ」と、独特の言い回しで脅迫コメントを咎めている。

Insomniac Gamesは批判を受け入れ、フィードバックを聞いていくとしているが、脅迫やハラスメントになればまったく別の話。それゆえに、開発側は攻撃性の高いメッセージに対して注意喚起しているのだろう。少なくとも、脅迫めいた批判がきたからといって、仕様を変更するわけではないとも受け取れる。フェイスモデルの変更には困惑の声が集まっているが、親愛なる隣人の新しい顔として受け入れられるには、まだまだ時間が必要かもしれない。

※ 『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』PS5版のゲームプレイ映像