Bethesdaとマイクロソフトが、買収劇の裏側を明かす。今後の方針や『Starfield』の進捗など
マイクロソフトは9月21日、Bethesda Softworksの親会社ZeniMax Mediaを買収することで合意したと発表。ゲーム業界を代表するパブリッシャーのひとつであり、数々の著名タイトルを手がけてきた開発スタジオ群を抱えるメーカーを傘下に収める巨額買収とあって、国内外で非常に大きな話題となった。これを受け、マイクロソフトのコーポレートコミュニケーション担当シニアマネジャーのMajor NelsonことLarry Hryb氏が、発表から一夜明けた関係者へのインタビュー映像を公開した。
インタビューには、マイクロソフトでXbox事業のトップを務めるPhil Spencer氏と、Bethesda Game Studiosを率いるゲームディレクターTodd Howard氏、そしてBethesdaのPR/マーケティング担当バイス・プレジデントのPete Hines氏が出演。両社は、初代Xboxがまだ開発中だった頃から協力関係にあったこともあり、時折昔話に花を咲かせる和やかなリモートインタビューとなった。
Spencer氏によると、今回の買収についてはこの夏に話が持ち上がったという。長きにわたる両社の良好な関係はもとより、革新や成長を続け、コミュニティやチームを大事にするベセスダの姿勢から正しいことだと感じたとし、より直接的に協働できることを誇りに思うと述べている。
一方Howard氏は、Bethesdaはずっと独立した企業でいたたため、以前とは環境が変わってしまうのではないかと少しショックを感じたとコメント。ただ、マイクロソフトのビジョンを理解することで興奮に変わったとし、これまで築いてきたパートナーシップはより深まり、開発中の作品はより良いものとなると述べる。そして、大きな一歩を踏み出すこととなったが、会社やチームにフィットした決断でもあったと振り返っている。またHines氏は、買収を受け入れるにあたってはマイクロソフトが何をしてくれるのかだけではなく、お互いの信頼も重要だったとし、信頼できる相手と一緒に仕事をできるということがもっとも大事なことだったと述べた。
*マイクロソフトが、Xbox Game Passに大きなタイトルを近く配信すると示唆。画像のコントラストなどをいじると「THE SLAYER IS COMING」という言葉が浮かび上がり、『DOOM Eternal』ではないかと噂されている。
Xbox/PC向けサブスクリプションサービスXbox Game Passについても触れられている。Bethesdaは、すでにいくつかのタイトルを同サービス向けに提供しており、『Fallout 76』や『The Elder Scrolls Online』といったライブサービス型のタイトルでは大きな成功を得ているという。
今回の買収発表では、今後発売されるBethesdaの新作については、ほかのファーストパーティタイトルと同様に、発売日と同時にXbox Game Pass向けにも提供されることが明らかに。Pete Hines氏は、過去のタイトルをさらに提供することにも意欲を示している。自身でこのサービスを試したところ、それまで見逃していたタイトルがたくさんあったことに気づいたそうで、より広い客層にBethesdaタイトルをプレイしてもらえることに繋がるのではないかとしている。
インタビューにてLarry Hryb氏は、大きな注目を集めている新作RPG『Starfield』についてTodd Howard氏に尋ねる場面もあった。本作については、まだほとんど情報公開がされておらず謎が多い。Howard氏は、準備が整うまでは何も見せない自身の性格は皆理解しているだろうとして、今回もゲーム内容については触れなかった。ただ、『The Elder Scrolls IV: Oblivion』以来となる、独自エンジンの大きなオーバーホールをおこなっており、『Starfield』や『The Elder Scrolls VI』を含む新作に最新技術を投入していくとのこと。
またHoward氏は、初代Xbox向けにリリースした『The Elder Scrolls III: Morrowind』についての裏話も明かしている。本作をプレイ中に使えるメモリがなくなった場合、実はプレイヤーが気づかないところでXbox本体を再起動させてメモリを解放していたそうだ。妙にロード時間が長い場面があったなら、その裏で本体を再起動させているとのこと。この強引だが巧妙なテクニックには、一同大笑いしている。
今回のマイクロソフトによるZeniMax Mediaの買収には、現金で75億ドル(約7840億円)が投じられる。2014年にマイクロソフトが『マインクラフト』の権利を買収した当時の3倍の金額であり、正式には当局による規制審査の完了をもって手続きが完了する予定。具体的には、2021年度の下半期の完了を見込んでいるとのこと。
グループ内には『Fallout』『The Elder Scrolls』のBethesda Game Studiosのほか、『DOOM』のid Software、『Wolfenstein』のMachineGames、『Dishonored』のArkane Studios、そして『サイコブレイク』のTango Gameworksなど8つの開発スタジオが存在し、マイクロソフトが手にしたものの巨大さがうかがえるだろう。先述したXbox Game Passの価値を大きく引き上げることにも繋がるはず。またBethesdaは、ゲームストリーミング時の遅延と帯域消費を抑える独自技術「Orion」も保有。ストリーミングサービスを海外で展開しているマイクロソフトにとっては、こちらも魅力的だったのかもしれない(Windows Central)。
なお、『Ghostwire: Tokyo』や『DEATHLOOP』といった、PS5向けの時限独占が発表されている新作タイトルについては、Phil Spencer氏がその契約を尊重すると発言したと伝えられている。一方、それ以降のタイトルについては、ほかのコンソール向けにはケースバイケースで判断するとのこと(関連記事)。大きなフランチャズを多く抱えるBethesdaの新作がどのように展開されていくのか、今後常に注目されることとなりそうだ。