「ハリー・ポッター」オープンワールド『ホグワーツ・レガシー』には、“渦中の人” J・K・ローリングは関わらず

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Warner Bros. Interactive Entertainmentが先日発表した『ホグワーツ・レガシー』。「ハリー・ポッター」を題材としたオープンワールドゲームとして注目を集めた同作であるが、原作者であるJ・K・ローリングは関与していないようだ。公式サイトのFAQにて明かされている

『ホグワーツ・レガシー』は、19世紀のホグワーツ魔法魔術学校を舞台としたオープンワールド型のアクションRPG。プレイヤーは古の魔法の力を秘め持つ魔法学生として、魔法を覚えながら仲間と助け合い、もしくは戦いをまじえながら成長していく。そうした生活の中で、強大な敵と対峙することになる。対応プラットフォームは、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC。開発を手がけるのは、数々のディズニー作品を制作してきたAvalanche Softwareだ。2021年の発売にむけて、目下開発されている。国内での発売も決定済みだ。

昨日に正式発表された同作であるが、公式ホームページにはFAQが早速掲載されており、ファンとしては気になるであろう点にふれられている。たとえば、『ホグワーツ・レガシー』の物語の位置づけ。小説や映画を改変する内容ではなく、「ハリー・ポッター」の世界に忠実であり、根ざしたものになるとのこと。ホグワーツの寮が選択可能であることや、原作よりも前の19世紀であることからハリーやロンなどは登場しないことなどを説明。その中で、原作者のJ・K・ローリングは、本作のストーリーづくりに、直接的に関わっていないことを明らかにしている。

本作はもちろん、J・K・ローリングの承諾を得て開発されている。ただ「ハリー・ポッター」シリーズの世界観という点ではJ・K・ローリングは間接的には関与しているものの、ゲーム制作には関与しておらず、彼女が手がけた物語ではないとはっきりと記している。IPモノのゲームは一般的に、IPを理解する原作者が監修していることが好まれる。そうしたIPゲームにおいて原作者が関与しないと早々に発表されることは珍しい。これは、ローリングをめぐる騒動が関連しているのかもしれない。


J・K・ローリングの騒動の始まりは、今年6月にまでさかのぼる。発端としては、健康や社会問題を取り扱うメディアDevexの記事に対して、ローリングが寄せた発言だ。同紙は「コロナ後の社会を生理がある人々にとってより平等なものにするために」と付けたタイトルにて、新型コロナ感染が蔓延る状況の中で月経の管理と理解の必要性を説いた。タイトルにある“生理のある人々”という表現は、女性のみを対象にしたものではなく、性別適合手術を受けていないトランス女性も対象にした、包括的な表現であった。この記事に対しローリングは、食って掛かった。「“月経のある人々”、そういう人たちを指す言葉があったはずだけど。ウンベン?ウィンパンド?ウーマッドだっけ?誰か教えて」。つまりローリングは、トランス女性に配慮し女性(ウィメン)と表現しないメディアを皮肉ったのだ。トランス女性について女性として認めていないことを意味するこの発言は、TERF(Trans-Exclusionary Radical Feminist=トランスジェンダーに排他的なラディカル・フェミニスト)的であると、大きな批判を受けた(OUT JAPAN)。
【UPDATE 2020/9/19 21:50】
トランス男性を記載していた部分を、トランス女性へと修正

その後ローリングは自身のブログにて、同発言について釈明。長文のエッセイを通じて、「性別がなければ、世界中の女性たちが生きる現実も消し去られてしまう」「トランスジェンダーの人たちを知っているし、愛しているけれど、性別の概念をなくしてしまえば、意義ある形で人生について話し合うこともできなくなってしまう」といったコメントを出した。しかしながら、トランスジェンダーについて好んでいるとしながら、性別の概念で区別することの重要性を説いた釈明もまた、TERF的であると再び批判を受けることになった。もともと反トランスジェンダー的な思想を支持するツイートをしていたローリング。よりそうした思想が表面化されたことにより、物議を醸すこととなった。

6月にローリングがSNSにて発信したメッセージに対して、映画「ハリー・ポッター」でハリー役を務めていたダニエル・ラドクリフは、自分の意思を表明。ローリングと衝突しているわけではないと前置きしつつ、トランスジェンダーの女性が、女性であることを尊重すると発言。ローリングの発言によって傷ついた人々を気の毒に思うと、LGBTQの自殺防止に取り組む団体のブログを通じて、トランスジェンダーの人々に寄り添う姿勢を明らかにした。ハーマイオニー役のエマ・ワトソンや映画「ファンタスティック・ビースト」の主演のエディ・レッドメインもまた、トランスジェンダーの人々をサポートすることを表明していた。

ローリングの発言を危惧したのは個人だけでなくWarner Brosもまたこうした騒動に反応。同社はローリングと仕事を共にしているが、Warner Bros自体はインクルーシブな環境を重要視していると発言。ストーリーテラーである原作者を高く評価しているとしつつ、ローリングのスタンスに同意していないことを、Varietyを通じて表明していたのだ。

ローリングのトランス嫌悪における波紋はまだ続いている。ローリングがロバート・ガルブレイス名義で手がける犯罪小説シリーズ「私立探偵コーモラン・ストライク」5巻が2020年9月15日に刊行されたが、同小説の中で登場する犯人が、女性を殺害するために女装をして連続殺人をおこなうシスジェンダーの男性だと判明したからだ。シスジェンダーとは、生まれた時の性と性自認が一致する人々。自分を男性だと認める男が、あえて女装をし殺人をおこなう。そうした描写が、トランスジェンダーへの差別を助長するとし、SNSに批判が殺到。Twitterでは「#RIPJKRowling」のハッシュタグがアメリカにてトレンド入りを果たしていた。

ローリングのトランスジェンダー嫌悪と捉えうるスタンスには世界中から批判が集まっており、彼女自身の言動も影響し、その流れは6月から留まることがない。一方で、『ホグワーツ・レガシー』はAAAタイトルとして開発されており、根幹の部分であるストーリーが、6月以降の騒動によって変更されたとは考えづらい。もともと作品づくりの理念においてローリングと独立していたのか、こうした彼女の性質を理解し距離を置いていたのか。監修程度の役割を任せており、騒動後に彼女自身の起用を外した可能性もあるだろう。いずれにせよ、ローリングの騒動には巻き込まれずプロモーションは展開されている。


『ホグワーツ・レガシー』はPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC向けに2021年発売予定だ。昨日「PLAYSTAION 5 SHOWCASE」で公開されたトレイラーはすでに420万回以上再生されており、大きな期待が寄せられている。

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