『スマブラ』プロプレイヤーNairo氏、Twitchよりアカウント停止される。ハラスメント告発で“絶対王者”ZeRo氏に続くBAN


Twitchは9月11日、『大乱闘スマッシュブラザーズ』(以下、スマブラ)プロプレイヤーNairo氏のアカウント停止処分を下した。同氏のTwitchパートナーシップも剥奪され、実質的にストリーマーとしての道を断たれたかたちとなった。今年7月に生じた、『スマブラ』競技シーンにおけるハラスメント告発ラッシュの余波が今もなお続いている。

Nairo氏は『スマブラX』時代より活躍を続ける古参プレイヤーのひとりだ。頭角を現し始めたのは米国のeスポーツトーナメントApex 2012の『スマブラX』部門において。日本人プレイヤーおおとり氏・にえとの氏に次いで3位入りを果たしている。当初はメタナイト使いとして、激しい攻撃型のプレイヤーとして人気を集めることとなった。その後『スマブラ for』時代に入るとゼロスーツサムスの使い手に転向。フロリダ州で行われたCEO 2015では、当時王者として名を馳せていたチリ出身選手ZeRo氏に次いで2位を獲得した。アメリカの『スマブラ』シーンはNairo氏・ZeRo氏の二強に占められることとなる。2015年から2016年にかけては正式にeスポーツチームへの所属が決まり、つねに国際大会で上位に現れた。『スマブラSP』シーズンに入っても活躍は続き、新たにパルテナを武器にベテランとしての地位を築いている。日本へもゆかりがあり、たびたび来日して国内大会で猛威を振るっていた(関連記事)。


ところが今年の夏に入り、Nairo氏にとっても『スマブラ』シーンにとっても大きな事件が起きる。『スマブラ』プレイヤーのひとりPuppeh氏が、かつて有名コメンテーターCinnpie氏と性的な関係をもっていたことを告白したのだ(関連記事)。当時のPuppeh氏が性的同意年齢に至らない歳での出来事だったことから、法定強姦の犯罪告発として業界は大きく震撼した。衝撃はそれだけにとどまらない。以降立て続けに未成年による、過去にあった成人との性的関係告発が噴出したのだ。

その流れにあってとりわけ大きなスキャンダルがNairo氏に関するものだった。2017年、当時20歳だったNairo氏が15歳のCaptainZack氏と性的関係をもったとする噂が流布し、当初これを両人とも否定した。しかしまもなく、CaptainZack氏が「嘘をつきつづけるのに疲れた」として噂を認める告発文を発表する。追ってNairo氏も罪を認めることとなり、同氏のTwitter(現在は非公開)には謝罪文が掲載された。スポンサーだったNRGとの契約は打ち切られ、主要大会への出場も禁止される事態となる。Nairo氏は6月末に『スマブラSP』の練習を配信してからTwitchにて活動を行っていない。今回Twitch側の対応が遅れたのは、この空白期間を鑑みてのことかもしれない。

『スマブラ』界における告発ショックでTwitchからBANを受けたのは、Nairo氏のみではない。同氏とともに一時代を築き上げた“絶対王者”ZeRo氏も、先んじてアカウント停止処分を受けていた。2014年から2015年にかけては56大会連続優勝の記録でギネスに認定され(なお連勝を止めたのはNairo氏)、EVO 2015では1セットも落とさずグランプリを勝ちとった伝説のプレイヤーだ。2018年にはいちど競技シーンを引退、のちに復帰してからはストリーミング活動を中心に行ってきた。そのZeRo氏にも告発があり、同氏は複数の未成年女性に対し性的なメッセージを送信していたことを認めた。今後は大会への出入りを一切しないこと・スポンサー契約をすべて打ち切ること・ゲーム関連コンテンツを制作しないことなどを自身で表明しており、追って7月23日にTwitchからのBANが下されたかたちとなった。

『スマブラ』プロシーンの一時代を築き上げてきた、ふたつの巨星がゲーム実況においても身を引くこととなった。依然として業界は混迷の状態にあり、余波は今後も続いていくことだろう。ふたたび競技大会における活況が見られる日を忍耐強く待ち続ける必要がありそうだ。