Appleは9月11日、開発者向けのApp Store Reviewガイドラインを改訂した。これは、App Store向けアプリがAppleによる承認を受けるための基準を示すものだ。改訂内容は多岐にわたるが、その中で「Streaming games」の項目が追加されたことが注目を集めている。
Streaming gamesとは、サーバー上で実行したゲームの映像を、ユーザーのスマホなどと操作情報をやり取りする形でゲームプレイをおこなうクラウドゲームのこと。具体的なサービスとしては、GoogleのStadiaやNVIDIAのGeForce NOW、マイクロソフトのクラウドゲーミング(Project xCloud)などがある。今回のガイドライン改訂では、そうしたサービスをiOSなどのApp Storeを通じて展開するための要件を明確化する内容となっている。
Appleは、すべてのガイドラインを遵守する限りにおいて、クラウドゲームのApp Storeでの提供は許可されると明記。その内容としては、まず提供するクラウドゲームは、個別のアプリとしてApp Storeに提出することが挙げられている。これは、個別の製品ページを用意して検索やランキングに反映し、ユーザーレビュー・評価の対象にするためとのこと。また、スクリーンタイム機能などによるペアレンタルコントロールを可能にするためでもあるとしている。さらに、個々のゲームはアップデートのたびにAppleによる審査を受けることも求められる。
カタログアプリとして多数のクラウドゲームを提供するサービスにおいても、同様のガイドラインの遵守が必要。上述した、個別のアプリとしてゲームの製品ページをそれぞれ用意しリンクすることのほか、サービスへの加入料金の支払いにApp内課金を使用すること、「Appleでサインイン」を使用することも含まれる。
先述したGoogleのStadiaやNVIDIAのGeForce NOW、マイクロソフトのクラウドゲーミングといったクラウドゲームサービスは、現時点ではAndroid向けにのみ提供されており、iOS版は存在しない。マイクロソフトについては、Project xCloudとしてテストをおこなっていた時期があったが、すでに終了している。
今回Appleは、ガイドラインにてポリシーを明確にすることで、App Storeを通じてクラウドゲームサービスを提供したい企業に門戸を開いた形である。しかし、これによって参入が促進されるかというと、実際にはそうはならないかもしれない。
このガイドライン改訂についてマイクロソフトは、消費者にとって悪い体験になると懸念を示す。同社は、ひとつのアプリ内のキュレーティングされたカタログから、直接ゲームをプレイできる環境こそゲーマーから求められていると主張。映画や音楽のストリーミングサービスを例に挙げ、プレイするゲームごとにアプリの製品ページに飛び、ダウンロードを求めるような仕様は受け入れられないとしている(The Verge)。
NetflixやSpotifyといったストリーミングサービスでは、ひとつのアプリ内で完結するユーザー体験があり、また配信する映画ごとにAppleによる審査を受け直すこともない。これと比べると、クラウドゲームサービスの提供にはハードルがあまりにも多い印象だ。Apple側の言い分としては、映画や音楽とは異なり、ゲームはインタラクティブな体験であるためであるとしている(Business Insider)。消費者を守るためにも、ゲーム内容を審査することを含め自らの管理下に置きたいということだろうか。
先述した、マイクロソフトがProject xCloudのiOS向けテストを終了したのも、こうしたAppleのポリシーに従ってサービスを続けることは難しいという判断があったためだった。つまり今回のガイドライン改訂では、実質的に状況は何も変わっていないということ。GoogleやNVIDIA、そしてマイクロソフトに対しては、iOSユーザーから各クラウドゲームサービスの提供を求める声が絶えないが、現時点では各社がユーザー体験を犠牲に妥協するか、Appleが要件を緩和しない限り難しそうである。