自民党の石破氏が総裁選にむけ『あつまれ どうぶつの森』で活動開始、しかしすぐに動画は非公開に。規約違反の恐れか
自由民主党元幹事長の石破茂氏は9月6日、自民党総裁選挙に向けた自らの特設サイトにて、Nintendo Switch向け『あつまれ どうぶつの森』(以下、あつ森)の活用を始めたことを明らかにした。特設サイトでは、石破氏をイメージしたキャラクターを使って『あつ森』の活用法について解説するゲームプレイ動画「石破茂/あつまれどうぶつの森 はじめます。」を公開。しかし、程なくして動画は非公開になり、特設サイトからも姿を消す事態となった。
石破氏は、安倍晋三総理大臣・自民党総裁の先日の辞任表明を受けた次期総裁選に立候補しており、9月14日に開催予定の両院議員総会での投開票に向けて、菅義偉官房長官と岸田文雄政務調査会長と争っているところだ。新型コロナウイルスの影響もあり街頭演説を自粛するなか、連日テレビなどに出演して政策を訴えている。
そうした中で、今回の『あつ森』の活用が飛び出した。本作のゲーム空間を利用して党員らと交流を図ることが目的だそうで、石破氏の広報戦略を担当する平将明衆院議員によると、政治に接したことのない人も総裁候補と直接話をでき、政治に興味を持っていない人に興味を持ってもらうことが狙いだという(産経新聞)。
総裁選においては、菅氏が自民党内の5つの派閥からの支持を得て、当選に向けて有利な状況にあると報じられている。一方の石破氏は、一般の党員からの人気が高いとされる。今回の総裁選では党員投票はおこなわず、両院議員総会での国会議員と都道府県連の代表による投票で選出する形となるが、各都道府県連では独自に予備選を実施して投票先を決める動きが進んでいるところ。党員の意見が反映される余地が残されたことから、石破氏の陣営は『あつ森』の活用に打って出たのかもしれない。
『あつ森』の活用方法としては、石破氏の顔を描いたポスターのマイデザインを作成し、Twitterを通じて配布することが挙げられていた。そして、このマイデザインをダウンロードしてゲーム内に配置したユーザー(党員)のもとへ、石破氏をモチーフにしたキャラクターが「じみん島」からやって来るという。動画の概要欄には「石破茂が訪問」と記載されていたため、石破氏自身が操作して党員らとコミュニケーションをおこなうつもりだったようだ。
似た取り組みとしては、米国の大統領選に向けて米民主党ジョー・バイデン氏の陣営が、『あつ森』のマイデザイン配布をおこなっている。ほかのユーザーの島を直接訪れるようなことはしないようだが、任天堂の人気作を利用したキャンペーンとして注目を集めた(関連記事)。石破氏の陣営が、これを参考にした可能性もありそうだ。
しかし、こうした取り組みが報じられてから間もなく、石破氏の『あつ森』動画は非公開となり、特設サイトからも削除された。ポスターのマイデザインについては、まだ配布していなかった模様である。ただ、SNSなどでは規約違反を指摘する意見が相次ぎ、動画の公開時には多数の不評が投じられていた。
任天堂は、『あつ森』をプレイする際にも使用するニンテンドーアカウントの利用規約にて、「政治的または宗教的な主張を含む」行為を禁止事項としている。石破氏が、ゲーム内で党員などとコミュニケーションを取ること自体は問題ないかもしれない。ただ、今回は総裁選に向けた活動の一環としての取り組みであるため、交流する中で自らの政策を主張しないことは考えにくい。党員側としても、石破氏の政治姿勢などについて聞きたいところだろう。
石破氏陣営は、こうした規約について把握していなかったのかもしれない。あるいは、規約違反に当たらない活動を考えていたものの、批判の声に対応した可能性もあるだろう。なお本稿執筆時点では、石破氏陣営からは『あつ森』の活用を取りやめた経緯についての説明はない。