『Fall Guys』コラボスキンを賭けたTwitterチャリティーバトル、終結。激戦から芽生える友情、最後の1分で起きた奇跡

 
Image Credit : G2 Esports

今年の夏をもっとも熱くしたバトルロイヤルゲームのひとつ、『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)。8月31日をもって本作にまつわる“ある戦い”が幕を下ろした。「オリジナルスキン争奪チャリティーバトル」である(関連記事)。

先月18日、同作公式Twitterの発案で始まったこの企画。『Fall Guys』とコラボしたいブランドは誰でも参加可能で、もっとも高い金額を慈善団体「SpecialEffect」に寄付すると名乗り出たものが優勝する。賞品は本作にオリジナルのコラボスキンを出してもらえる権利だ。もともと『Fall Guys』には各企業アカウントからラブコールが届いていたこともあり、企画は初日から大いに盛り上がりを見せた。企業のみならず個人YouTuberがリードするなど、波乱の幕開けを見せる。2週間にわたり数多の企業やストリーマーがしのぎを削ったチャリティーバトルを、かいつまんで振り返ってみよう。


前回記事の時点ではYouTuberのMrBeast氏が10万ドル(約1056万円)寄付で先頭をかっさらっていたが、同日中に新たな猛者が現れる。世界有数のeスポーツチーム「G2 Esports」(以下、G2)だ。チームシンボルの武士をモチーフにしたハイクオリティなスキン案を引っ提げて、13万とんで3ドルを叩きつけてきた。これには『Fall Guys』側も「2020年のeスポーツはFall Guysで決まりだね」と浮き足立つ。その後別のeスポーツ団体が参戦するも、これを軽くいなすG2。さらに5000ドルを積み上げ、盤石の牙城を築き上げた。

猛将の出現により激しさを増すチャリティーバトル。しかし侍の前に思わぬ伏兵が立ちはだかる。忍者だ。人気ストリーマーNinja氏が、個人勢の新たなプレイヤーとして見参したのである。過去には『フォートナイト』でオリジナルスキンを実現した同氏だが、『Fall Guys』でもおなじみ青色ニンジャスタイルで殴り込み。その寄付金額は一挙に跳ね上がり20万ドルとなる。


戦いは新たなステージへと突入した。予期せぬNinja氏の参陣に、G2はすぐさま追加で3000ドルを投入し応戦の構え。バトルは早くもサムライとシノビの一騎討ちの様相を呈した……かと思いきや、ここに1発の弾丸が撃ち込まれる。その名も『Aim Lab』。同タイトルは、Steamにて無料配信中の「FPSトレーニング専用ソフト」だ。数々の射手のエイム力を鍛え上げてきた『Aim Lab』。その公式アカウントが『Fall Guys』にも狙いを定めてきたのである。すっかりタイマンのつもりでいたG2・Ninja氏もこれには虚をつかれたことだろう。寄付金額、この時点で21万とんで69ドルである。


ますます混迷を極めるチャリティーバトル。G2・Ninja氏・Aim Labの三すくみと思われたとき、あの男が帰ってきた。初日にトップを走っていたMrBeast氏が30万ドルの大台で首位に返り咲いたのである。G2はさらなる挑戦者に苦戦しつつも33万3ドルで応戦。一方個人勢のNinja氏は、企業のリソースとMrBeast氏の謎の資金力を前にひとりでは太刀打ちできないことを悟ったという。そこで彼は奇策に出た。なんと、ライバルAim Labから共闘の誘いを承諾したのである。このときNinja氏が提示していたのが21万ドル、Aim Labは21万69ドル。合わせて両者の戦闘力は42万69ドルとなった。

好敵手同士が手を組んだ合体攻撃、少年漫画のような展開でチャリティーバトルはひとまず第一幕が終結した、かに思われた。怪しく忍び寄る影、あのTUSHY Bidetが舞い戻ってきたのだ。米国のウォシュレット販売企業は前回の投げやりなスキンデザインをリニューアルし、ピーチをあしらった可愛らしいゼリービーンズで再参戦した。ただし依然として「ケツ穴T」は残存。なぜかこの後1日誰も声を上げず、TUSHY Bidetが首位であった。あわやと思われたとき、最後の黒船がやってくる。「FGTeeV」、家族ぐるみのゲーム実況で知られるYouTuberチームが42万2222ドル22セントでTUSHY Bidetの息の根を止めた。


その後1週間膠着が続き、世間では『Fall Guys』のシーズン2が発表された。バトルは残り3日を切りファイナルラウンドに入る。8月29日に長い沈黙を破り、Ninja氏・Aim Labのタッグが記録を更新。最後の力を振り絞り、ついに50万ドルの寄付額まで上り詰める。しかしこれをものともしないFGTeeVは、51万ドルでカウンターを決めた。全参加者が精魂込めた一撃を放ち、ここから最終日の8月31日までチャリティー関連のツイートはぱたりと途絶える。残り24時間となった。半日が過ぎ、6時間が過ぎ、依然としてFGTeeVが首位をキープしている。残り1時間。30分が経った。あと15分。5分。『Fall Guys』アカウント担当者はパソコンの前を離れることができなかった。残り1分。

そのとき閃光が走った。ツイートを送ったのはNinja氏だ。そして、Aim Lab・MrBeast氏・G2のアカウントも連名で記載されていた。もっとも大切なこと、それはできる限り大きな支援をSpecialEffectに届けることである。こう結論づけた彼らは、4者連名での寄付金額を提示した。その額、100万ドル(約1億565万円)。ラスト1分にして決着はつけられた。4アカウントからなるチームが、チャリティーバトルロイヤルにおけるクラウンを手に入れたのだ。


かくして長きにわたる戦いは幕を下ろした。それにしても優勝者が4人もいては、賞品のオリジナルスキンはどうするのか? 『Fall Guys』は頭の固いチームではない。約束通り勝者にスキンを、すなわちNinja氏・Aim Lab・MrBeast氏・G2すべてとコラボし、4つのコスチュームを実装することを約束したのだ。100万ドルの寄付という偉業に対し、同アカウントからは改めて感謝の言葉が述べられた。FGTeeVも「4vs1ってそりゃないよ!」とぼやきつつ、最大限の寄付が実現したことに祝福を送っている。

SpecialEffectは英国に拠点をおく慈善団体だ。身体にハンディキャップを負った人の支援を目的としており、そうした人々がゲームを遊ぶための特殊な機材を提供する活動をしている。SpecialEffectから最後に、本企画への感謝に代えてある動画が送られてきた。8歳の少年Theoくんは『Fall Guys』の大ファンだという。しかし彼にとってPlayStation 4のコントローラーやiPadの操作は困難なものだった、そこでSpecialEffectが彼に送ったのは、特別なジョイスティックと大きく押しやすいボタンのセットだ。以来Theoくんは夢中で『Fall Guys』を遊び続けているとのこと。今回集められた100万ドル(約1億565万円)により、このような景色がますます世界に生まれることだろう。