大阪・関西万博ロゴがゲーマーの感性を刺激。「目が弱点の中ボス」「倒すと分裂して厄介」と『R-TYPE』や『CARRION』ファンもソワソワ
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は8月25日、2025年国際博覧会(以下、大阪・関西万博)ロゴを発表した。選ばれたのはアートディレクターのシマダタモツ氏が率いる「TEAM INARI」による作品だ。「いのちの輝き」をテーマに、「セル(細胞)」をイメージした赤い球体をつなげたデザイン。目玉のように見える青い丸は、70年万博のシンボルマークの流れを汲んでいるという。
まるで生き物のように見えるロゴマークのインパクトは大きく、「ポップで可愛い」と肯定的な意見から「気持ち悪い」とおののく声まで賛否両論。その中でも浮き足立っているのは日ごろゲームに親しんでいるユーザーたちだ。というのも大阪・関西万博ロゴは不思議と、存在しない“攻略方法”をゲーマーに見せてしまうのである。Twitterでは「目玉をすべて弓矢で射抜くと倒せる」「攻撃すると分裂する」といった幻覚を見る人が後を絶たない。さまざまなゲームのボスを連想する人も多いようだ。
*『妖怪ウォッチ』シリーズより「枝魔目さま」。
想像力を刺激するのは、さまざまなゲームに登場する先駆者たちの影響があるだろう。もっともよく聞かれるのは『グラディウス』をはじめとするシューティングゲーム内ボスキャラとの類似だ。シューティングにおいて、弱点を部位破壊してボスを撃破するのは常套手段。それゆえ多くのゲームで、ボスキャラクターの「コア」となる部分が視認しやすいようにデザインされている。万博ロゴの目玉を強調したビジュアルが、これらボスの弱点を連想させているようだ。また生命感を強調した有機的なデザインから、いっそう『グラディウス』細胞ステージや『R-TYPE』などの生々しい作品を思い浮かべる人も多い。
さらにタイムリーなところでいえば、先月発売されたインディーゲーム『CARRION』主人公との相似も見逃せないところだ。同作は触手の怪物となって人々を襲う「逆ホラー」アクション。真っ赤なボディカラーと軟らかボディが万博ロゴとうりふたつ、かもしれない。『CARRION』はさまざまなDNAを吸収しながら突き進むクリーチャーの成長物語でもある。そういった意味で、「1970年のデザインエレメントをDNAとして宿した」万博ロゴは親和性が高いのかもしれない。外部からの遺伝子を吸収し多様に変化していく可能性を表現しようとしたからこそ、どちらも不定形なフォルムとなったのだろう。このほか触手つながりで『沙耶の唄』、目玉つながりで『星のカービィ』を挙げるユーザーなどもいる。
ところでゲームにおけるボスキャラクターの条件とは何だろうか。「強そうなこと」「怖そうなこと」は、実は最重要事項ではない。もっとも大切なのは「倒せること」だ。ゲームの関門である以上、いつかはプレイヤーの手にかかる宿命にある。それは言い換えれば「インタラクト可能であること」でもあるのだ。どこを攻撃すればダメージが入り、どうすれば撃破できるのか。そうした情報をわかりやすく伝えることが、“ゲームの”ボスとしていちばん求められる条件である。その意味で、ボスたちは常にプレイヤーとコミュニケーションしている。
そして万博ロゴも「キャラクターとしてコミュニケーションする」ためにデザインされている。それは「いのちの輝き」を表現するにあたり、架空の生命体としてのイメージを与える手法をTEAM INARIが選択したからにすぎない。「コミュニケーションできそう」という余白が、さまざまな先行作品のモチーフと相互作用する中で、「インタラクトできそう=倒せそう」=「ゲームのボスっぽい」という想像力に結実したのではないだろうか。
*啓蒙高めの界隈にも好評。
ゲーマーをはじめ多くの人に強いインパクトを残した万博ロゴ。2025年の開催までにどのように定着していくか、長い目で見守りたいところだ。