インディーパブリッシャーChucklefish Gamesは8月21日、アクションアドベンチャー『INMOST』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam/GOG/Humble Bundle)およびNintendo Switchで、日本語に対応。価格は1520円 となっている。なおFreebird Gamesの『To The Moon』を所有している場合は自動的に10%のディスカウントが適用される。開発者がインスピレーションを受けた縁で実現したキャンペーンだという。
本作はパズル要素の強いドット絵アクションゲームだ。目を引くのは極めて細密に描かれたピクセルアートと、独特の光源描写だろう。美しくも冷たい色合いで描かれた廃墟を舞台に、3人の異なる主人公を切り替えながら物語が進行する。幼い女の子・中年の放浪者・剣を携えた騎士と、一見まったく無関係な登場人物たちはプレイスタイルもばらばらだ。それぞれの得意分野を使い分けながら攻略を考えることになる。
女の子は小さな身体のため、動きが制限されている。できることといえば、物を持ち上げることと、狭いところを通ることくらい。うまく足場を重ねて高所へ登るなど、限られた動作でルートを導きだすことが重要となる。冒険好きで好奇心旺盛な少女だが、彼女が探索するのは深い闇に閉ざされた古い屋敷。いったいなぜここにいるのか、この場所で何が起こったのか、子どもの無邪気な目線と荒廃した邸宅のギャップが独特の不気味さを醸し出している。
放浪者は平凡な成人男性といった風態だ。ジャンプやローリングなど人並みの動作は可能だが、力仕事をするにはツルハシなどのアイテムを必要とする。また放浪者が辿る道にはしばしば、黒い粘液のような不気味な敵が待ち構えているが、彼は身を守る術をもっていない。襲われると即座にやり直しとなるため、知恵と道具で回避しながら道を切り拓こう。
騎士はもっとも「アクションゲーム」の主人公らしいプレイヤーキャラといえる。硬い鎧に身を包み、1本の剣を携えている。異形の敵に襲われても即死せず、その武器で打ち倒すことも可能だ。またフックショットを使うことで特定の場所から一気に高所へ上がることもできる。一方重い装備のために、女の子や放浪者が上がれるような段差で行き止まってしまうという弱点も。ときに手を汚すこともいとわない彼の道のりは、ほかのふたりにも増して険しいものとなる。
美麗なビジュアルから「雰囲気ゲー」のようにも見える本作だが、意外とシビアなタイミングアクションを求められる場面が頻出する。黒い異形の敵は触れると即死か、倒すにしてもそれなりに固い相手となるため、ある程度死にながら覚えることは覚悟しよう。とはいえ倒されてからリスタートするまでは間をおかず、復活地点も親切なためストレスはそれほどないはず。
本作で印象的なのはキャラクターの「重み」だ。可愛らしいドット絵というと軽快なアクションを連想してしまいがちだが、『INMOST』の住人たちは「ピコピコ」的な無重力感とは無縁である。女の子は非力ゆえに、物を運ぶのも見ていてつらくなるような鈍重さだ。放浪者はひととおりの動作が可能なものの、足場が悪ければよろめくし、高所から落ちれば(小さいながら)顔を歪める。騎士はそこそこの身体能力を有しているようだが、やはり身にまとう甲冑の重さから不自由を余儀なくされている。デフォルメされた外見とは裏腹なキャラクターの重量感が、それぞれが背負うものや物語の沈鬱たる雰囲気を印象づけている。
2Dスクロールという画面構成を維持しつつ、ライティングや音響などを駆使して映画のような演出を実現しているのも見所だ。クリアまでの時間は3〜5時間のため、劇場で作品を堪能するような気分で遊ぶといいだろう。『INMOST』はPC(Steam)およびNintendo Switch向けに配信中。ほか、昨年先行リリースされたApple Arcade版もプレイが可能となっている。