『Fall Guys』人気に乗じた詐欺サイトや模倣ゲーム増殖中。あの手この手、嘘と悪意で“本物のふりをする”ダマシロイヤル
今をときめくアスレティックゲーム『Fall Guys: Ultimate Knockout』(以下、Fall Guys)。その人気にあやかりつつ、ユーザーを騙そうとするコンテンツが量産されているようだ。その手口は、サイト、動画、ゲームなんでもござれ。旬を逃さんと言わんばかりに卑劣な戦いが繰り広げられているのだ。
『Fall Guys』はPC/PS4向けに発売中のバトルロイヤルゲームだ。最大60人のプレイヤーが、指定のステージにて生き残りを目指す競争が繰り広げられる。物理演算と障害物が引き起こすアクシデント性や、気軽に始められるカジュアル性が好評を博している。さらに見ているだけでも面白いというゲーム配信との相性の良さから、ゲーム動画が大量に投稿されており、そうした後押しを受け爆発的な人気を呼んでいる。
しかし人気者といえば、“狙われる立場”でもある。というのも、『Fall Guys』を騙ったさまざまな怪しげなコンテンツが登場しているのだ。この問題が明るみになったのは、『Fall Guys』公式Twitterアカウントによる訴えがきっかけ。同アカウントは、モバイル版『Fall Guys』なる動画が出回っているようだが、そうした広告は詐欺であると主張。モバイルで動いているように見えるが、それはあくまで動画でプレイしているように見せているだけであり、マウスカーソルが画面に映っている(つまり動画である)と根拠を補強。もうこんな星で暮らしたくない、太陽まで弾き飛ばしてほしいと、持ち前のジョークをまじえて笑いを誘っている。
このツイートは、ひとつの動画をあげつつモバイル版は存在しないと訴える内容。しかし掘り下げてみると、こうした動画は氷山の一角に過ぎない。そもそもなぜこのような、ありもしないモバイル版を宣伝する動画が存在するのか。それは、“とある場所”へと誘導するためだ。映像を数多く投稿しているFall Guys MobileなるYouTubeチャンネルの動画を見てみよう。
たとえばこちらの「Fall Guys Mobile 2020 [TRUTH + METHOD] -」と題されたいかにもな動画では、スマートフォンにて『Fall Guys』を遊んでいる様子を披露。その後、fallguysmobi.comなるサイト(アクセス非推奨)に誘導している。そこから無関係のアプリをダウンロードさせ、いくつかゲームをプレイすれば、モバイル版『Fall Guys』が手に入るという売り文句である。手口としては、PS4やPCを持っていないが『Fall Guys』を遊びたい子どもたちに、ニセのモバイル版をちらつかせ、怪しげなサイトに誘導して詐欺に誘いこむ仕組み。
アフィリエイトプログラムの中には、ユーザーにゲームをダウンロードさせ遊ばせることで報酬を受け取れるというものが存在する。その類だろう。単なるアフィリエイトならかわいいもので、スマートフォンに怪しげなプログラムを仕込んだり、架空請求サイトへ呼び込んだりといった、より悪質な手口である可能性もある。たとえば、別のニセサイトfallguyscode.com (アクセス非推奨) では、メールアドレスの登録が促される。いずれにせよ、なんらかのフィッシング詐欺へとつながっていることが濃厚。嘘の動画で架空のモバイル版の存在を見せつけ、信じたユーザーを騙すという卑劣な手口が横行しているわけだ。当該動画には、お決まりともいえる「本当にダウンロードできたよ!」「すばらしい!」といった怪しげなコメントもセットで寄せられている。
『Fall Guys』のネームバリューを利用するのは、何も動画やサイト業者に限った話ではない。8月4日のリリース直後から、ラグドールキャラが障害物を避けていくゲームがGoogle Playにて増殖中なのだ。既視感バリバリの『Fall Dudes 3D』は、オリジナルタイトルとして開発されているため、まだクリーンなもの。一方で、『Fall Guys Run』に『Fall Guyz – Ultimate Battle』、『Fall Guys:Ultimate Bumper』など、本家がリリースしたかのように錯覚させる、悪質なゲームものさばっている。『Stickman Parkour Race 3D』として今年5月にリリースされていたカジュアルゲームは、最近になり『Fall Guys : Ultimate Opstacles Game』へと改称。ゲーム内容に類似性があるとはいえ、ゲームタイトルごと変えて『Fall Guys』に寄せるという節操のなさを見せている。
Google Playより比較的審査の厳しいApp Storeでも『Knockout Race』や『Run Royale 3D』といった即席クローンアプリがリリースされており、状況は似ている。『Fall Guys』は発売されてからまだ2週間しか経っていないながら、多くの模倣アプリがリリースされているのだ。今後その数を増やしていき、体力のあるモバイルメーカーが、似たようなゲームコンセプトのヒット作を生み出す。そんな未来をはっきりと想像できる。
しかし面白いことに、「Fall Guys」で検索して表示されるゲームが、すべて模倣というわけではない。実はその中には“先駆者”が存在している。Google Playにて検索すると上位に表示される『ウーぷすタクル(Oopstacles)』は、実は今から3年以上前の2017年3月にリリースされた作品。Unityによるコンテンツ紹介プラットフォームMade with Unityにて特集されるなど、ゲームエンジンメーカーに認められたゲームである。テーマとしては、ぐにゃぐにゃのキャラを操作し、ステージのゴールへと導く作品。ただし、求められる操作は前進とジャンプがメイン、障害物に当たれば一発アウト。障害物レースというコンセプトこそ『Fall Guys』に似通っているが、ゲームプレイは大きく異なっている。
しかしながら、検索などに導かれ『ウーぷすタクル(Oopstacles)』のユーザーが激増中の模様。特にGoogle Playでは今年の8月に入ってから大量のユーザーレビューが投じられており、盛況を見せている。開発元であるCrystal Pugも思わぬ余波を受けてウキウキ。8月に入ってからは、放置状態であったTwitterアカウントが活性しており、「『Fall Guys』と『ウーぷすタクル(Oopstacles)』が大好きだよ!」とラブコールをおくっている。Twitterアカウントのフォロワーが急増し5000人を突破し、新規プレイヤーにむけてマルチプレイのサーバーを補強したともコメント。どの程度かは定かではないが、『Fall Guys』旋風の恩恵を感じていることがうかがえる。モバイルストアにある多くが模倣作品であるが、思わぬ形でスポットライトを浴びている“先輩”もいるということだ。
とはいえ、『Fall Guys』のモバイル版は存在しないことや、人気に乗じようとする悪徳業者がいることを知っておいて損はない。今後はさらに、『Fall Guys』を思わせる作品が世に出ていくことだろう。コピーゲームかオリジナルかは問わず、パーティーバトルロイヤルゲーム市場をめぐる、メーカーたちの新たな戦いはすでに始まっている。