アイルランドの作家、うっかり『ゼルダの伝説 BotW』のレシピを小説に登場させる。古代ローマの染料はハイラルダケにオクタの目玉
アイルランドの小説家が「とあるミス」を犯したとして、なぜかゲーム界隈で話題になっている。広いインターネットといえども、調べ物をしていてゲーム情報を回避するのは意外と難しい。たとえばこのご時世に「アイアンウッド テーブル DIY」と検索しようものなら、ハンズやカインズを差し置いて真っ先に無人島の情報が出てくるだろう。そんなときゲーマーであれば、すぐ誤ったページだと判断して別の検索に当たることができる。ところが困ったのは、普段そうした情報に触れていない層の人々である。
『縞模様のパジャマの少年』などで知られる作家ジョン・ボイン氏は今年7月、新作歴史小説『A Traveller at the Gates of Wisdom』を上梓した。問題となっているのは古代ローマの時代、語り手が衣服を染める材料を列挙している場面である。画像で赤線部が引かれている部分を訳すと、次のような内容となる。「…アブリラのドレスを染める赤色のために、私はポカポカ草の実、リザルフォスの赤しっぽ、そしてハイラルダケを使った」。
そう、作中で語られている「赤い染料の材料」は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザワイルド』で服を染めるための素材なのだ。日本語に訳すと違和感が際立つものの、英語では「ポカポカ草の実=spicy pepper」などと記載されており、ひと目読んだだけでは気がつかないかもしれない。とはいえこの部分以外にも「キースの羽」(keese wing)や「オクタの目玉」(octorok eyeball)といった固有名詞が並んでおり、明らかにハイラルの特産品が輸入されているのがわかるだろう。海外掲示板Redditでは、Googleで「ingredients to dye clothes red(衣服を赤く染める材料)」と調べるとトップに『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の攻略情報が表示されることが指摘されている。おそらくボイン氏は、ネットで染料の素材を検索した際に同様の情報へ行き当たり、誤って内容をそのまま小説内に記述してしまったものと思われる。
この話題はTwitterでも、ライターのダナ・シュワルツ氏が取り上げたことで大きな注目を浴びた。騒ぎはボイン氏本人にも届いたようだ。シュワルツ氏の指摘に対し、「完全にその通りです」と間違いを認めている。「恥ずかしい」「向こう数年はこのエピソードを語り継ぎます」と、苦笑を交えて自虐している。シュワルツ氏が「ぜひ編集せず残してほしい」と提案すると、ボイン氏も「このままにしておくつもりです」と返答。かなり赤面もののミスではあるが、偶然による愉快なコラボレーションとして受け入れているようだ。
*地元Irish Times紙の書評もこの件を“イジって”いる。
ゲームのあずかり知らぬところで起きた笑い話。もしかすると我々の時代が古代と称される遠い未来でも、ハイラルダケが食材として紹介されてしまうのかもしれない。