『あつまれ どうぶつの森』アップデートにより「ムービー職人」が救われる。任天堂の歩み寄りが、小さなコミュニティに笑顔をもたらす
任天堂は7月30日、『あつまれ どうぶつの森』更新データVer. 1.4.0を配信開始した。夏のアップデート第二弾となる同更新では、季節のイベントである花火大会が追加。またベッドで眠ることで夢の世界へと行く、ゆめみ要素も追加されている。目玉となるのはこのふたつであるが、些細ながらもコミュニティの一部ユーザーにとって、重要な変更がなされていた。それが「カメラ仕様の変更」である。
『あつまれ どうぶつの森』では、ゲーム内スマホからカメラを立ち上げることで、フォトモードが起動可能。カメラ位置を固定し、画面を拡大・縮小をしたり、画面を動かしたり、エフェクトをつけたりすることで、お気に入りの一枚を撮影できる。このカメラモードを利用して、ゲーム内ムービーを創り出す集団が現れていたのだ。ゲーム内編集と映像編集を組み合わせることで、楽しげかつ不思議な『あつまれ どうぶつの森』ムービーが続々と生み出されてきた。どれも個性と創造力にあふれるものだ。しかし7月頭のアップデートにより、このムービー職人は窮地に陥っていた。とあるバグが“修正”されたからである。
『あつまれ どうぶつの森』においては、リリース初期から「カメラUIバグ」なる不具合が存在していた。カメラモードでは常にUIが表示される仕様になっているが、カメラを起動したタイミングで+ボタンを押すことで、UIを消したままカメラモードが運用できる。ゲーム内ムービーを撮影する上では、没入感を提供するためにもUIを消しておきたい。ムービー職人たちは、映像を撮る際にはこの「カメラUIバグ」を利用し、作品を作り上げてきたわけだ。
しかし不具合である「カメラUIバグ」がVer.1.3.0が修正されたことで、UIのない状態での撮影が不可能に。職人たちのムービー撮影は困難を極め、「無害なバグ」をなぜ修正したのだと、嘆く声がムービー撮影コミュニティより寄せられる。「#saveACfilm」というハッシュタグが作成され、『あつまれ どうぶつの森』ゲーム内ムービーを再び撮影できる環境の復活を求めていた(関連記事)。
そして本日のアップデートにて、カメラモードにおける変更がなされたのだ。変更とは、「スマホのカメラ機能のガイド表示をOFFにする機能を追加しました(Rスティック押し込み)」というもの。つまり、カメラモードにて右スティックを押し込むことで、UIを非表示にすることができるようになったのだ。かなり細かく具体的な変更であることから、これはムービー職人たちの声を聞き入れたと見ていいだろう。
「#saveACfilm」のコミュニティはそれほど大きくはなく、ムービー職人たちは大規模に抗議していたわけではなかった。しかし今回のアップデートをもって、彼らの願いは叶えられたことになる。ACfilmは、まさしくSaveされたのだ。コミュニティはこの変更を受け、歓喜に湧いている。抗議の発起人であるムービー職人のEvil Imp氏も、Chase Crossing氏が、アップデートでUI非表示機能が追加されたことに喜び狂うツイートをRTし、その喜びを示している。
『あつまれ どうぶつの森』においては、精力的なアップデートが続けられているが、公式Twitterの投稿には、要望や変更を求めるユーザーの声が数多く届けられている。『あつまれ どうぶつの森』が魅力的なゲームだからこそもどかしいのか。もしくは自分たちの声が届いているのか不安なのか。いずれにせよ、直接リプライすることで不満を表明するユーザーが非常に多い。その中には、ゲームバランス崩れなど運営側が被害をこうむる不具合/仕様はすぐに変更され、ユーザー側が被害をこうむる不具合/仕様は放置されているのではないか、と厳しく指摘する声もある。
しかし今回、小さなコミュニティの声が聞き入れられ、ムービー職人たちは救われた。変更に踏み切られた理由は不透明。職人たちの抗議を深刻に受け止めて優先度を上げたのか。あるいは、UIを非表示にする作業に工数がかからないため、優先度を上げずともすぐに対応できたのか。いずれにせよ、ユーザー側だけが被害をこうむる現象への対処もなされていることが証明されることとなった。おそらく、任天堂はこれまでにもユーザー側が困る現象について、その声を聞き入れ修正してきただろう。カメラUIの改善は、そのひとつに過ぎないかもしれない。ただ、こうして目に見える形で声を聞き入れることで、ユーザーと向き合っていることが示されることとなった。
なお今回のアップデートにおいては、目元につけるアクセサリーのひとつ「をかしなめがね」が、プレイヤーの肌のバリエーションに対応した。細やかな調整であるが、これも多様性を尊重する配慮のひとつ。そして、ゲーム内ムービー撮影は、遊びにおける多様性のひとつだ。表現の多様性と遊びの多様性。今回のアップデートは、それぞれのユーザーのありかたを尊重する『あつまれ どうぶつの森』開発陣のスタンスが見て取れる、やさしいアップデートになったのではないだろうか。