『Apex Legends』の開発が「在宅労働により苦境に陥っている」との情報が投稿され注目集める。Respawnスタッフはコメント


『Apex Legends』開発者がRespawn Entertainmentの在宅労働環境を批判する書き込みが発見され、注目を集めている。今年に入ってから続くコロナ禍はゲーム業界にさまざまな影響を与えてきた。イベント中止やビッグタイトル発売延期のほか、多くのスタジオが出社を控え在宅環境で開発を進めるようになった。そんな中、海外掲示板Redditにてあるスクリーンショットが投稿され話題となっている。切り取られているのはアメリカの企業口コミサービス「Glassdoor」で、今年の4月に投稿された文書だ。Respawnの評価を記したその投稿は「消耗、ストレス、Apex Legendsへの強い不安」と題されている。列挙された欠点は次のとおりだ。

・ほとんどのゲーム会社(Epic Games、Activision、Bungieなど)はCOVID 19における効率低下や全般的なストレス/不安に配慮するため、プロジェクトの締め切りや機能/コンテンツのロードマップを延期しているのに、Apexプロジェクトにはそれがありません。

・シーズンのリリースを、オフィス勤務時の生産性で達成していた過酷なタイムラインのまま維持することに極めてストレスを感じ、消耗しています。現在は1日12〜13時間働いており、生活と仕事を分けられていません。

・ライブサービスプロジェクトを活かしていく道筋が不透明です。つまり計画的な決定に欠け、仕事量が調節できていません。つまり実際のところ、与えられたひと月の間に完遂できる量がほとんど見通せていないのです。

・この期間中、従業員の健康へ注意が払われていません。「健康に気をつけるように」「予定どおりのスケジュールを維持し、締め切りに合わせるためにより長い時間働かなくてはならない」という、ふたつの矛盾するメッセージが出されています。

・私は本当に消耗しているので、次の職が決まらないうちに会社を去り、ただ精神的によりよいところへいくことを検討しています。


要約すると、投稿者は新型コロナウイルスの影響にもかかわらず『Apex Legends』プロジェクトのスケジュールが調整されなかったことを批判。在宅勤務により能率が落ちているにもかかわらず進行に合わせなくてはならないため、長時間労働につながり強いストレスを感じているようだ。このレポートを切り取った画像が7月24日にRedditへ投稿されて以来大きな反響を呼び、開発陣の健康面を心配する声が少なくない。一方このポストは、Respawn内部スタッフからも注目を集めたようだ。『Apex Legends』ゲームディレクターのChad Grenier氏が社内の実情について、詳細なレスポンスを寄せている。


Grenier氏はこのたびのパンデミックが未曾有の事態であり、それに適応するため非常に大きな負担がチームにかかっていることを認めた。同氏は『Apex Legends』チームのリーダーとして、毎日「できる分だけ」勤務するように声高に呼びかけていたという。これはRespawnおよびElectronic Arts(以下、EA)の上層部で繰り返し伝えられているそうだ。RespawnとEAは従業員の健康を維持するために多くの手当を適用しているという。肉体/精神的に調子がすぐれないときは、無制限で有給休暇をとることができる。自宅勤務をより便利に/快適にするためのいかなる買い物も補償される。光熱費やインターネット料金の増加分、フレックス労働時間などは給与支払のたびに追加で支払われる、などの施策が挙げられている。

締め切りと遅延についてGrenier氏は、「もし無理な働き方をしないと間に合いそうにない場合はマネージャーに相談するように」強く呼びかけていたという。実際に『Apex Legends』のシーズン4終了が延長された件について、シーズン5のリリースを遅らせるためだったことを告白した。同氏は口コミの投稿者を非難するわけではないとしつつ、RespawnやEA、および上層部が可能な限りチームの健康に配慮している旨を強調している。


Grenier氏の書き込みには多くの好意的な反応が寄せられた。中には「Respawnがこれを書くようにあなたの頭へG7スカウトを突きつけていないことを祈ります」とのコメントもあるが、同氏は「いや、モザンビークだから大丈夫です」とジョークを交えて返答している。このほか、Respawnのアーティストとして勤務するMoy Parra氏(公式バッジにより確認)もコメント。同氏は、完璧ではないにしろスタジオが従業員を可能な限りサポートしていると語る。「無限に続くZoom会議」には苦言を呈しつつも、これまでにないほど支えられ、理解されていると感じているという。

イレギュラーな状況下にあって、いずれの企業も大きな負担を強いられていることは事実だろう。特に『Apex Legends』のようなライブサービスゲームにおいては、継続的なコンテンツ提供のため苦しい開発状況が続いているようだ。発端の投稿をした開発者が現在も勤務を続けているかは不明だが、思わぬきっかけでスタジオの苦境が露わになった一幕といえる。