“魚”による『ポケモン』ゲーム実況が今アツい。笑いあり逃がしあり、魚たちが描く青春ドラマ

Image Credit : むてきまるちゃんねる

今「魚」による『ポケットモンスター』ゲーム実況に注目が集まっている。仕掛け人となっているのは、むてきまるちゃんねる氏。飼っている魚の名前のむてきまるを、そのままチャンネル名にしているYouTuberだ。むてきまるちゃんねる氏は、2匹の魚(熱帯魚のベタ)を飼っており、“魚たち”に『ポケットモンスター ルビー・サファイア』をプレイさせている。この「おさかな実況」が人気を集めているわけだ。

同実況は、「社会人のかわりにお魚がゲームをプレイする」動画。エミュレーターではなく実機を使用。ニンテンドーゲームキューブ(ゲームボーイプレーヤー)とUSBカメラ、独自のプログラムと基盤により、魚の動きによって入力が発生しゲームが進行していく仕組み。背景に十字キーやAやBといった入力ボタンを示すポスターが貼られており、魚がその場所を通過することでゲーム上のキャラも行動する。

一方で、すべてがお魚任せというわけではなく、どうしようもない大事故などを防ぐためレポートは人力で書かれているほか、全滅時やとてつもなく迷子になった時、そして詰みが発生した時などはむてきまるちゃんねる氏が介入し、人力で調整している。魚2匹の健康面についても、配慮されているという。青い魚である、ややおとなしい初代むてきまるのモーリスと、やや活発な2代目むてきまるのポニョ。魚の体調面を考慮し、2匹を12時間の交代制で実況させている。なお水槽にエアーポンプがないのは、ベタはラビリンス器官を持っているので不要であるからとのこと。

ゲーム実況の内容はというと、かなりゆるい。魚は当然何かを操作する意図がないので、基本的には運任せ。オープニング後、隣の家に行って女の子に挨拶するまで19時間、御三家ポケモンの入手に60時間を要するなど、ゆるゆるの実況である。その後同氏が入力プログラムを改良したことでいくらか進行はスムーズに。配信当初採用していたダイジェスト中心ではなく、そのままプレイする姿を放送するスタイルへとシフト。張り付いて見続けるというよりは、作業BGM的な「ながら見コンテンツ」として好評を博している。常に移動し弧を描くように動くという魚の動きと入力が絶妙にマッチしている。

大きな変化がないだけに、正しいムーブをとっただけで大騒ぎされるのが「おさかな実況」の魅力。うまくアチャモにキズぐすりを使ったり、アクア団を倒すだけでもどんちゃん騒ぎ。色違いとの遭遇などもビッグイベントだ。そして同実況が大きな注目を集めたのは、ひとつの大事故にある。プレイ時間は654時間を超え、ムロタウンをうろついていたある日。ポケモンセンターに入っていたお魚は、ボックスの整理に躍起になり荒ぶっていた。

Image Credit : むてきまるちゃんねる


ポケモンボックスは、容易にポケモンの出し入れができる危険な場所として、視聴者に懸念されている場所。そしてその予想は当たってしまったのだ。ハスボーを逃し、ココドラも逃す。そして、大黒柱のバシャーモをも鮮やかに逃がしてしまった。不幸の連鎖は続く。同氏は、さすがにバシャーモ逃がしはまずいということでリセットを計画。しかしその時は外出中ということで、レポートが書かれないことを祈りながら帰宅を目指していた。

視聴者をあざ笑うかのように、ポケモンセンターの2階に上がり、トレードセンターの受付に話しかけることでレポートを書こうとしてしまうお魚たち。最初は手持ちのポケモンの数が足りずレポートは書かれなかったが、わざわざ手持ちポケモンを増やし、レポートをきっちり書いてセーブ。その後3回セーブを重ねて、バシャーモは二度と帰らないことが確定してしまった。この悲劇がTwitterにて話題を呼んでおり、おさかな実況の人気はさらに拡大し続けている。ことのあらましについては、YouTubeチャンネルのダイジェスト版を確認するのが手っ取り早いだろう。ほかのダイジェスト版動画は、こちらのリストから確認できる。

ゲーム配信においては、人が普通にプレイするものだけでなく、ユーザーのチャットの入力によってキャラを操作するTwitch Playなども登場している。おさかな実況は、この形式をさらに発展させたものだ。しかし、単にTwitch Playの亜種として人気が出たわけではないだろう。というのも、この実況、単純にゲーム実況だけでなく、かわいい魚が泳ぐ姿を鑑賞できるという、2倍おいしいコンテンツなのである。またむてきまるちゃんねる氏がしっかりとハンドリングしており、コントロール面の改良を含めて、視聴者を飽きさせないように方向性を微調整している点も、人気のひとつだろう。

さっぱり進まないゲームプレイをゆるく楽しめるライブ配信だけでなく、要所のシーンを丁寧な編集により紹介するダイジェスト動画も、実況の動向を追いやすくしている。魚の動きはランダムであるものの、常に移動し弧を描くように動いている点も、ゲーム入力として絶妙にマッチしている。また同配信は、Twitch Playにようにユーザーが介入することができない。操作については魚に祈るしかないため、視聴者側が“うまく進まない”ことへのフラストレーションをためづらい側面もある。

そのゆるさと丁寧さによって、人気を博しつつあるむてきまるちゃんねる。680時間経過時点で、次の目標はカイナシティのクスノギぞうせんじょに行くこと。ゲームとしてはまだまだ序盤だ。モーリスとポニョは果たして、『ポケットモンスター ルビー・サファイア』にて四天王に打ち勝ち、ゲームをクリアすることができるのだろうか。魚たちによるゲーム実況は、まだまだ続きそうだ。