オーストラリアに拠点を置くインディースタジオemergeWorldsは7月9日、ダンス&リズムゲーム『Dance Collider』をPlayStation VR向けに配信した。日本でも『ダンスファイター』というタイトルで、2090円で販売開始。しかし、程なくしてストアから突如取り下げられてしまった。
実は本作の配信開始直後には、一部ユーザーからは本作の国内ストアページのレーティング表記に注目が集まっていたが、どうやらここに原因があったようだ。
上の画像は、日本のPlayStation Storeにてまだ配信されていた頃の『ダンスファイター』のストアページの様子である。注目したいのは、左下にある「IARC 3+」というマークだ。これは海外のレーティング機関IARC(International Age Rating Coalition)が本作を審査して年齢区分を発行したことを示しており、3+とはおおむね全年齢対象を意味する。ただし、このレーティングをPS Storeで見かけることはまずない。というのも通常であれば、ここにはCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)の年齢区分マークが表示されるはず。日本で家庭用ゲームをリリースするには、一部の例外を除き、CEROレーティングの取得が必須となっているからだ。
上述した例外というのは、Xbox One向けのダウンロード専用ゲームである。日本マイクロソフトは、Microsoft StoreにてIARCレーティングをもってゲームを販売することを許可している。ダウンロード専用ゲームに限定しているのは、IARCはそうしたゲームのみを審査対象としているから。しかしSIEは、日本ではパッケージであれダウンロードであれCEROレーティングの取得を義務付けてきたため、『ダンスファイター』がIARCレーティングをもって国内PS Storeに登場したことに注目が集まった。つまり、日本マイクロソフトと同様に、CEROの審査を受けずともIARCレーティングにてゲームを販売できるように、SIEが方針転換したのではないかと受け止められたわけだ。
しかし、本作はPS Storeから取り下げられた。弊誌が開発元emergeWorldsに事実関係を確認したところ、日本のPlayStation向けにリリースするにはCEROレーティングが必要であるにも関わらず、取得していなかったため取り下げられたとの回答があった。どうやら、国内PS Storeにて本作が配信されたことそのものがミスだったようだ。同時に、SIEはCEROレーティングを必須としているポリシーを変えてはいなかったことになる。
今回、IARCレーティングの表記に注目が集まったのは、単にレーティングの違いだけではない。先述したようにCEROレーティングなしで販売できるXbox Oneでは、国内PS4では未発売の海外タイトルが数多く配信されている。しかしCEROレーティングの取得は海外パブリッシャーにとって負担になっている。IARCのレーティング取得は無料であるが、CEROの取得には一定の金額を要する。また最近になりオンライン申請が可能になったものの、DVDで審査資料を送らなければいけないという点も、CERO取得難易度を上げる一因となっていた。
そうした背景を踏まえ、もしSIEが日本でもIARCレーティングを採用したとすれば、PS4でも同様に海外と同時配信されるタイトルが今後増えるのではないかという期待があったのだ。しかし最終的には、依然としてCEROの取得が必要であることが濃厚となった。
IARCレーティングは、一度取得すると同機関に加盟する世界各国・地域のレーティング機関の年齢区分に変換される。PS Storeに関しては、現時点では北米(ESRB)とブラジル(ClassInd)にのみ対応し、それらの国で販売可能(Xbox Oneではすべての加盟機関のレーティングに変換される)。『ダンスファイター』の開発元emergeWorldsは、CEROレーティングには変換されないことを審査時に知らされなかったため、気付かずそのままSIEに提出したそうだ。同スタジオは、できるだけ早く再配信できるようにしたいとコメントしている。
なお、IARCとはどういうものかについては弊誌にて以前解説しているため、こちらの記事を参照してほしい。