『スマブラ』プロシーンの、大量のハラスメント告発が界隈を大きく揺るがす。時を同じくして「EVO Online」が中止に
【UPDATE 2020/7/3 12:00】
事象の関連性の誤解を防ぐため、タイトルを“『スマブラ』プロシーンの、大量のハラスメント告発が界隈を大きく揺るがす。時を同じくして「EVO Online」が中止に”へと変更。
【原文】
「Remember when the biggest problem in the community was wifi sonic(無線のソニック使いがコミュニティで一番の問題だった頃を覚えてるか?)」。列挙されるかつてない量のスキャンダルを目にした、とあるredditユーザーの嘆きである。『大乱闘スマッシュブラザーズ』(以下、スマブラ)の競技シーンは今、未曾有の大混乱に陥っている。皮切りとなったのは若きポケモントレーナー使いPuppeh氏による自身の体験の告白ツイートだ。
Puppeh氏の文章では、2016年夏に、彼が14歳の時に当時24歳だったCinnpie氏(シーンではよく知られた女性コメンテーター)と性的な関係を持っており、その時の経験が大きな爪痕となって今も彼を苛んでいることが綴られている。なお、アメリカにおいては多くの州が性的同意年齢を16~18歳に設定しており、成人がこの年齢を下回る相手と関係を持つことはいかなる場合であっても違法。法定強姦と見なされる。つまり、このPuppeh氏の文章は自身の体験記というだけではなく、実質的にCinnpie氏の犯罪を告発するものでもある。ちなみに「これ未満の相手とだといかなる場合でも違法」となる性的同意年齢は日本では13歳に設定されており、アメリカとは法の違いからくる価値観の差があることには注意が必要だ。
これだけでも十分すぎるほどのスキャンダルなのだが、このツイートに呼応するように、ここ2日間で膨大な数の「告発」が発生した。そしてその多くが未成年による、過去にあった成人との性的関係を告白するものであった。中でも世界におけるトップ5プレイヤーの一人とされることも多いNairo氏が過去に当時15歳のCaptainZack氏と関係を持っていたことが明るみに出たことは、日本も含めて大きな話題となった。Nairo、CaptainZack両氏は最初にこの噂が出た時は双方とも否定していたが、CaptainZack氏が「嘘をつきつづけるのに疲れた」として告白、Nairo氏もそれを真実として認めた。現在Nairo氏のツイッターには謝罪文が掲載されており、NRGとのスポンサー契約は全て打ち切られた。
CaptainZack氏は他にも過去にAlly氏との関係が発覚した過去があり、その影響でAlly選手は一時シーンから引退している。また、シーンの有名コメンテーターではD1氏がKTDominate氏による告発、Keitaro氏がshiva氏による告発を受けている。どちらも、未成年との性的関係だ。さらには『スマブラ』シーンから少し離れたところでは、この動きに触発されてか「EVO」創始者Joey Cuellar(Wizard)氏の未成年に対するセクハラ告発も発生。カプコンとバンダイナムコエンターテインメントはすぐさま「EVO 2020(EVO Online)」の参加中止を発表。「EVO」本部はこれを受けてWizard氏をEVO運営から永久に追放することと、7月4日から開始する予定であった「EVO Online」のキャンセルを発表している。
ここまでの内容全部だけでも前代未聞の事態なのは間違いないのだが、残念ながらこれでも連日の騒ぎの文字通り氷山の一角に過ぎない。『スマブラ』シリーズのredditではここ数日の流れを受けて「告発」をまとめたスレッドがピンされている。スレッドには思わず目眩がするような数の告発文章・体験記と、それに対する返答・謝罪がリンクされていて、記事執筆現在、その数は120を超えている。ほとんどは未成年が過去に持った成人との性的な関係や、成人に受けた性的な辱めを告白するものだ。これら全てが事実だと限っておらず、またスレッドの注意書きにもあるように「疑わしきは罰せず」という段階ではあるが、勇気をもって告発したことには間違いない。いずれにせよ、どれも軽く目を通すだけでもガリガリと人間性が削られていくような代物だ。
「告発ラッシュ」は現在進行系で続いており、混乱は当分収まりそうにもない。近頃はゲーム業界全体でこうした告発が続いており、中小開発会社から大手パブリッシャーまで、さまざまなゲーム会社内にてハラスメントが告発される事例が相次いでいる。その流れはゲーム企業だけでなく、ゲーム実況者や配信者界隈にも波及していたが、ユーザーコミュニティもそうした問題を抱えており、このような騒動に発展したのだろう。今回の『スマブラ』版#MeTooともいえる動きにも、背景には沈黙を余儀なくされていた未成年が多かったという事実があり、『スマブラ』シーンもその膿を出す過程にあるのかもしれない。