『あつまれ どうぶつの森』人気実況者の解説動画がYouTubeにてBANされる。裏の世界を暴きすぎたか


人気YouTuberのShesez氏が、自身の『あつまれ どうぶつの森』関連動画が削除されたとして任天堂に抗議しており、話題を呼んでいる。同氏は人気動画シリーズ「Boundary Break」の投稿主である。ゲームの知られざる“裏側”を報告し、細やかな考察をするYouTuberとして人気を博してきた。しかしここにきて、6月27日に投稿された最新の動画が任天堂により削除されたようだ。理由はDMCA(デジタルミレニアム著作権法)違反。一体どのような動画を投稿していたのだろうか。

Shesez氏が展開する「Boundary Break」シリーズは、日本語で表現すると「境界越え」。つまり、ゲームの境界を越えて“外の世界”からゲーム内を見つめることで、隠された要素を発見したり解説したりするといったコンテンツである。性質としてはデータマインに近い。同氏は任天堂作品を中心に、なんらかのツールを使用してゲーム内の世界を外から見ていたわけだ。たとえば、キノピオの頭部は体の一部か被り物か、ポリゴンの観点から検証していたのもShesez氏である。『スーパーマリオ オデッセイ』についての考察投稿もおこなっており、つい先日にもニュードンクシティを赤裸々にする動画が投稿されていた。

※ さまざまな作品に登場するキノピオの頭内部を調査する解説動画

今をときめく『あつまれ どうぶつの森』の動画も、もちろん投稿している。第一弾は、障害や建物を無視してフィールド上をうろつく動画。家の上や海の外、博物館の展示物の中など。そうしたフィールドの外に出たのち、外の世界にあるテクスチャやモデルなどの様相を報告しているわけだ。この動画では、同氏の動画としては珍しくゲーム内のカメラ視点に基づき、ゲーム内のさまざまな場所を調査していた。普通のプレイでは行けない場所に到達しているものの、これまで投稿されてきた他ユーザーのものとそれほど違いはなかったわけだ。この動画は現在も視聴可能である。

しかし、6月27日に公開された「More Out of Bounds Secrets」は、少々まずかったのかもしれない。というのも、最新動画では『あつまれ どうぶつの森』の視点そのものを変え、前回以上に世界を丸裸にしていたのだ。ゲーム内の視点にはとらわれず、より広い視点や高い視点から、島に広がるフィールドや見知った建物、水平線などを赤裸々に映し出していた。動画を見ることで、オブジェクトの描写メカニズムを把握できたりするほか、今後のアップデート内容について推察できるシーンも存在。そのほか、むらびとの服を脱がせるなど攻めまくり。結果として、「More Out of Bounds Secrets」は、公開停止処分を受けた。動画内容をキャプチャした画像は以下とおり。

Image Credit : Nintendo Soup / Shesez / 任天堂
Image Credit : GoNintendo / Shesez / 任天堂
Image Credit : Kotaku UK/ Shesez / 任天堂


Shesez氏は早速、任天堂に公開停止を取り消すことを願う動画を投稿している。任天堂がこうした厳しい処分を下すのは理解できるとしながらも、自身の動画はゲームの改造などの仕方を教えるものではないとコメント。ゲームの開発そのものを讃えるものであり、自身の動画が会社にとって損害にならないように配慮し続けているとも。部屋内のコレクションを見て、自分が任天堂の大ファンであり、同社を愛し続けていると強調している。公開停止されたのは最新の動画一本であるが、今後もこうした処分を受ける可能性についても懸念している。

YouTubeや海外サイトの管轄は、主に米任天堂。今回の処分も米任天堂によるものであると考えられる。2018年には「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を提示するなど、ゲーム実況動画などには寛容になりつつある任天堂だが、外部ツールやバグに関する動画については目を光らせている。たとえば、『あつまれ どうぶつの森』のアイテム増殖バグなどは、バグのやり方を広める旨の動画を対象に、数多くの公開停止処分をYouTube側に命じていた(関連記事)。あくまで動画全般には寛容な姿勢をとりながら、問題あるコンテンツはピンポイトに狙い撃つような動きを見せていたわけだ。

Shesez氏はこれまでにも、さまざまな任天堂タイトルを“外側”から見る動画を投稿してきたが、公開停止処分となったのは最新動画のみである。ほかのタイトルと異なるのは、『あつまれ どうぶつの森』は現在も開発やアップデートが続けられているという点だろう。多くのプレイヤーが現在も同作を遊んでいる。コンテンツの追加が続けられている現役作品は、買い切りの旧作よりも「バラされること」のダメージが大きい。『あつまれ どうぶつの森』の平和な世界を、ゲームデータとして解釈する試みそのものも、時期としては早すぎたかもしれない。いずれにせよ、ある種ライブサービスゲームである『あつまれ どうぶつの森』に関しては、任天堂としては特にデータマインや不具合の不正利用などに気を配っているという可能性はありそうだ。

※ 7月3日にも無料アップデートを実施予定

どのように主張しようとも、Shesez氏が不正ツールを用いて、外の世界から通常では見えないゲームの世界を映しているのは事実。規約違反であり、言い逃れはできない。『あつまれ どうぶつの森』は世界的に人気が高く、同作を取り扱えばYouTubeにおける動画も伸びやすい。しかしながら、攻めた結果取り扱う路線を誤れば処分を受けることになる。動画クリエイターは、そうした認識を持っておくといいのかもしれない。