『Her Story』開発者が新作ADV『Project A███████』発表、日本語対応予定。 ストアページからして謎だらけ
インディーゲームデベロッパーのSam Barlow氏は6月24日、実写アドベンチャー『Project A███████』の制作を明かした。ところが、タイトルをはじめ同作のSteamページは伏せ字だらけになっており、その詳細は謎に満ちている。PC/Mac向けに日本語対応でリリースされ、「2███年」に発売されるという次回作。いったいどのような作品となるのか、Barlow氏自身の発言から少しでもその姿を紐解いてみよう。
Barlow氏は、2010年に発売された『サイレントヒル シャッタードメモリーズ』のシナリオを務めた人物だ。同時に『Telling Lies』などの実写映像を用いたアドベンチャー作品で知られる開発者でもある。特に2015年に発表された『Her Story』はBafta、IGF、GDC、The Game Awards 2015など数々のアワードを受賞した(関連記事)。今年は『Her Story』の5周年イヤーにあたり、アニバーサリーを祝うと同時に新作の情報がアナウンスされたかたちだ。
ところが公開された新作のSteamページは謎だらけである。ほとんどの部分が黒塗りで伏せ字にされてしまっているのだ。まずタイトルからして『Project A███████』とされており、読むことができない。ゲームについての概要欄ではかろうじていくつかのキーワードと、4つの年号が明らかにされている。「1968年/ゴシック」「1971年/ニューヨーク」「1999年/ポップスター」「2022年/バーロウ/管理人/調和」といったヒントから、本作がいくつかの年代にまたがるストーリーであることがうかがい知れる。作者である「バーロウ(Barlow)」氏本人の名前が含まれているのも気になるところだ。
公開されているムービーや画像もミステリアスなものばかり。Steamページでは3つの映像が用意されており、「うごめく蛇の体」「燃えさかる家屋」「水面から突き出た2本の脚」が映し出されている。いずれもノイズが走り、不自然に逆再生されるなど不安をあおるクリップだ。また「仮面」「窓」「銃」「鏡」「唇」という5枚の写真も添付されており、それぞれに不規則な番号が振られている。これらが意味するところは今のところ不明だ。なおSteamのコミュニティページには『Project Ambrosio』との表記が見られ、こちらが正式タイトルである可能性が高い。またファンはこの“読めない”ストアページを面白がっており、伏せ字だらけのページを真似て「█████ █ ██のときって、███ ████だよな 。頑張って!」といった応援コメントを寄せている。
不明なことづくしの本作だが、いくつかのヒントをBarlow氏自身の発言から得られるかもしれない。同氏は『Her Story』の5周年を記念して、海外メディアPC Gamerのインタビューに答えている。そこでの発言によれば次の作品は「広い意味でのホラー」になるという。Barlow氏が個人的な作風として培い、『サイレントヒル シャッタードメモリーズ』で結実させた「心理的で陰鬱な調子」へ回帰するものになるそうだ。同氏は、2007年ごろ『サイレントヒル』に携わっていた当時「世界で唯一キャラクターの内的思考を描けるゲーム」だと感じていたという。『Her Story』や『Telling Lies』を終えた今、そうした原点に立ち返ることに興奮しているそうだ。
新作は「ゲームとプレイヤーの関係性」について迫るといい、「対立するものではなく『引き/押し』の関係にしたいんです」とBarlow氏は語る。「プレイヤーを抑圧したり、必ずしも安心とはいえない方向へ押し出したりしたとき、どうなるかを見たいんです」「いちどホラーになってしまえば、ゲームをそういうふうにする選択肢はもっとたくさんあるんです。『Her Story』と『Telling Lies』は写実的なファウンド・フッテージ(※「何らかの事情で埋もれていた映像が流出した」という設定の擬似ドキュメンタリー作品)として構成されていましたが、いまだにインタラクディブ映画と呼ばれています。だから次のプロジェクトでは映画に取り組むんです」。
その言葉どおり、『Project A███████』は「映画」という概念を批評するような作品にもなるようだ。自らを病的な映画ファンだと称し、その表現手法に精通するBarlow氏だが、ゲームを制作するときはあえて映画的な作り方になることを避けているという。一方で『Telling Lies』の制作チームや演者が彼らのやり方で実現できることを見てきたBarlow氏は、その畑でともに作品を作れることを喜ばしく思っているそうだ。映画のフィールドに熟練したスタッフとともに、あえて映画的でないやり方に挑戦したいということだろう。Barlow氏いわく、新たなプロジェクトは「全制作工程から視聴に至るまでに、映画のストーリーがいかに伝えられるか」に迫るものになるという。「ある意味、楽しい研究をするための口実なんです」。
『Telling Lies』の発表後、潤沢な資金を得ることができたというBarlow氏とHalf Mermaidプロダクション。次回作は前作の「10倍は野心的な」作品になるそうだ。『Project A███████』はPC/Mac向けにSteamにて配信予定。日本語への対応がアナウンスされており、リリース時期は「2███年」とされている。