Steamの運営元Valveが反人種差別運動への支持表明を“出さない”ことに抗議して、Steamでのゲーム販売を停止するインディー開発者が現れる

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Steamの運営元Valveが、「Black Lives Matter」および反人種差別運動への支持表明を出さないことを理由として、Steamから自身のゲームを削除するインディー開発者が現れ始めた。海外メディアのGamesIndustry.bizGameSpotが報じている。

Steamにて『ART SQOOL』という、お絵かきをしてAIに評価を下してもらうシミュレーションゲームを販売していたJulian Glander氏は、6月12日にSteamでのゲーム販売を停止したとTwitterで報告。今後、同販売プラットフォームでゲームを出すことはないだろうと述べ、ほかのインディー開発者も販売を停止すべきだと伝えた。なお販売を停止しただけで、ストアページはまだ残っている。

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Glander氏はValveに販売停止申請を送る際のスクリーンショットを添えている。SteamおよびValveは「Black Lives Matter」運動に言及せず、人種的正義に関する大まかな声明すらも出していないと指摘。「このプラットフォームの運営元が、怒れる白人男性ゲーマー層に負い目を感じていることが、かつてないほど明らかになりました。私としては、そうした人々にこそBlack Lives Matterのメッセージを届けるべきだと思っているので、Steamの姿勢はとても残念です」と、自身の思いを記している。

もちろん、声明を出すかどうかは各社の自由であり、サービスを利用するかどうかも利用者の自由だ。Valveは声明を出す義務を負っているわけではない。Glander氏としても、その点はわきまえていると説明。ただ、自身のゲームがSteamと関連付くことは恥ずかしいことであり、嫌悪感を覚えるとして、『ART SQOOL』および『Lovely Weather We’re Having』(こちらもGlander氏の作品)の販売停止を要請している。

『ART SQOOL』

Glander氏のツイートを受けて、『Jettomero: Hero of the Universe』のクリエイターGabriel Koenig氏が追従。Steamでの自作品販売を停止した。ストアページには「パブリッシャーからのリクエストにより、Jettomero: Hero of the UniverseのSteamでの販売は終了しました」とのお知らせが掲載されている。販売するゲームあってこそのSteamであり、開発者には変化を求める力があるのだと、Koenig氏はツイッター上で伝えている。

Glander氏およびKoenig氏の作品は、いずれも配信開始から1年以上が経過している。とはいえ販売停止による経済的なダメージがないわけではなく、Koenig氏は月間で最大1000ドルの売り上げを出していたと述べている。収入源を断つことには抵抗があったが、Steamを通したゲーム販売により収入を得続けると、運営元の沈黙に加担することになると自身の考えを伝えた。ストアページのゲーム説明文には、誹謗中傷に満ちたSteamのコミュニティに対処しようとしないValveへの抗議として、ゲームを削除したと記載されている。

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『Jettomero: Hero of the Universe』

もちろんTwitterは優しい世界ではなく、Koenig氏のツイートには「Steamからクソゲーが減ってよかった」「抗議の仕方を完全に間違ってますよ」「Steamはあなたのような人間と、“傑作”インディーのせいでゴミプラットフォームになっているので、いなくなってくれて嬉しいです!まともな大人はわざわざ収入源を断って損をするような真似はしません。こんなことをするのは、あなたのような子供だけです」といったリプライが寄せられている。

Glander氏とKoenig氏のほかには、『First Winter』というホラーゲームを販売していたDan Sanderson氏が販売停止を決断(該当ツイート)。反人種差別に関する明確なメッセージを発信している、もしくは、少なくとも何かしらのアクションを起こしているプラットフォームにだけゲームを販売すると述べている。例として出されているitch.ioは先日、「Bundle for Racial Justice and Equality」という、反人種差別運動への支援を目的としたチャリティーバンドルを販売(関連記事)。最終的な寄付額は800万ドル(約8億6000万円)に達していた。なお、そのほかのPCゲーム販売プラットフォームでいうと、Epic Gamesストアを運営するEpic Gamesが、簡易ながらメッセージを出している。

Steamでのゲーム販売を停止した3名は、いずれも小規模なインディーデベロッパーであり、Valveとしての損失はほぼないだろう。また、わざわざ声明を出していなくとも、それとなくValveのスタンスを知ることは可能だ。Valveは先日開催されたデジタルイベント「Guerrilla Collective」における「Black Voices in Gaming」ライブストリームを支援していた。また9月19日に開催される「Game Devs of Color Expo」の大口スポンサーになっていると、同イベントのオーガナイザーであるShawn Alexander Allen氏が伝えている(該当ツイート)。Game Dev of Color Expoは、インクルーシブなゲーム展示会/カンファレンスを謳うイベントである。

企業のスタンスというのは、何も声明文だけで読み取るものではない。また、Glander氏のように声明を出してほしいという意見もあれば、先述したAllen氏のように「嘘をつかれるよりは、黙っていてもらった方がいい」という意見もある。各企業は、そうしたサービス利用者の多様な意見含め、各方面への影響度合いや、企業としてのメリット・デメリットを踏まえて、どのような対応を取るか判断することになる。人種差別と向き合うこと、構造的差別に異を唱えることは、意味のあるおこないではあるが、声明の有無がすべてではない。

一方で、Glander氏のように声明の有無を重要視する、もしくはKoenig氏のようにSteamがコミュニティのモデレーションに消極的であることを批判し、サービスを利用しないという決断を下すのも、これまたサービス利用者の自由だ。Steamほどの一大プラットフォームにもなると、利用者全員を喜ばせることは不可能である。販売停止という、インパクトのある行動ゆえに各メディアが取り上げているが、Glander氏の後に続く者は現状ごく少数であることも、気に留めておきたい。

ジョージ・フロイド氏の事件を受けて本格化した、人種差別および警官による差別的な暴行に対する抗議運動。それは純粋な抗議運動としてだけでなく、企業ブランディングとしての支持声明、警官側の心理、各地での暴動発生、前科持ちであるフロイド氏個人としての評価と「警官による過度な暴力」という問題の区別など、関連する複数の議論へと波及している。ゲーム業界においても、引き続き何かしらの形で一連の運動と関わっていくことになるだろう。

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