SNKは5月27日、『サムライスピリッツ ネオジオコレクション』をPC/PS4/Nintendo Switch向けに正式発表した。本作はもともと2019年4月に海外で発表され、今年1月に開催された格闘ゲーム大会「EVO Japan 2020」にて試遊出展。それまでは初代『SAMURAI SPIRITS』から『サムライスピリッツ零SPECIAL』までの計6タイトルを収録するとしていたが、今回の発表ではさらに『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』を追加収録するとしてファンを驚かせた。
『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』は未発売作品であり、公式に発表されたこともない。ただ、『サムライスピリッツ零SPECIAL』の次作である『サムライスピリッツ 天下一剣客伝』の発売前に、一部ゲームセンターにて短期間ロケテストがおこなわれていたとして、当時の写真がインターネット上には出回っている。言わば幻の作品として知られていた同作が、どのような経緯で『サムライスピリッツ ネオジオコレクション』に収録されることになったのか、開発に協力したNecrosoft GamesのBrandon Sheffield氏が明かしている。
Sheffield氏は2019年初頭、SNKのAdam Laatz氏と共に『サムライスピリッツ零』シリーズのディレクターを務めた高屋幸治氏(チームアルカナ・元エクサム)を訪ねた。そこで『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』について覚えているか訊いたところ、高屋氏は同作について語ってくれたという。そこでLaatz氏は、SNKとして同作を『サムライスピリッツ ネオジオコレクション』に収録したい旨を伝え、ソースコードか何かをまだ持っていないか尋ねる。それから数日後、高屋氏は当時のソースコードはもう残っていないが、“完成版”のROMが1枚だけ存在したとし、それをLaatz氏らに託したそうだ。
『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』の概要については、SNKからの発表では、『サムライスピリッツ零SPECIAL』のゲーム性はそのままに、オリジナルには存在しなかったストーリーやエンディングを新たに追加したと説明されている。ROMを確認したSheffield氏によると、そのほかに小規模なバランス調整やバグ修正がおこなわれていたそうだ。「炎邪」のスピードアップ技の削除や、「羅将神ミヅキ」の背景が変更されているとも(Kotaku)。また、風間火月と風間蒼月の妹である「風間葉月」が当時ファンからの人気が高かったこともあり、追加されたストーリーの中には彼女に関するちょっとした冗談が仕込まれているという。
開発途中のものではなく、既に完成したバージョンの『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』のROMが残っていたことにSheffield氏らは驚いた様子。これをもとに、デベロッパーのDigital Eclipseが移植したのだろう。オリジナルにはなかったオンライン対戦機能が追加され、Sheffield氏自ら英語へのローカライズもおこなったそうだ。
『サムライスピリッツ ネオジオコレクション』への『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』の収録に寄与した高屋氏は、今回の依頼を受けた際には驚いたと当時の心境を語る。また、同作がお蔵入りになった経緯を、本作に収録されるインタビューにて「洗いざらい吐きました」としている。本作には「ミュージアム」機能が用意され、“今だからこそ話せる当時の開発スタッフのビデオインタビュー”などを視聴可能。おそらくここで、高屋氏の口からこの幻の作品にまつわるすべてが語られるのだろう。
『サムライスピリッツ ネオジオコレクション』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)版が6月19日、PS4/Nintendo Switch版が7月30日配信予定だ。なお、Epic Gamesストアでは6月12日から18日までの期間限定で「先行無料配信」がおこなわれる。またPS4/Nintendo Switch向けには、豪華限定版を含むパッケージ版も発売予定となっている(関連記事)。