マーベラスが中国テンセントの子会社と資本業務提携。海外展開や新規IP創出に向けた投資を強化
【UPDATE 2020/5/26 12:10】
マーベラスは、今回のテンセント子会社との資本業務提携について「今回の資本業務提携により、テンセントグループは当社の筆頭株主となりますが、取得される株式は議決権の20%であり、当社は独立性・自主性を保っております。」と弊誌にコメント。コメントにあわせ、「マーベラスが中国テンセントの傘下会社に」としていた、記事タイトルを変更。
【原文】
マーベラスは5月25日、中国Image Frame Investmentと資本業務提携を結ぶことを発表した(リンク先はpdf)。あわせて、第三者割当の方法により新株式の発行をおこなうと告知した。Image Frame Investmentは、テンセントホールディングスの子会社(投資持株会社)。まず、マーベラスの主要株主である株式会社アミューズキャピタルと創業者中山隼雄氏によりマーベラス株式の売出しが行われるとのこと。同会社および同氏の保有普通株式 354万3100 株が本売出しにより Image Frame Investment に譲渡され、マーベラスはテンセントの持分法適用会社となる予定だという。株式の売出しにくわえて、新株式発行(第三者割当)もおこなわれるとのこと。新株式数は862万3300 株で、調達資金は49億6702万800 円。調達資金の用途については、「新規 IP 創出及び新規事業展開」に約39億円、「既存 IP のグローバル展開」に10億円投じるという。
テンセントによれば、通常投資案件において同社が直接の投資主体になることはないという。そして、Image Frame Investment は、同社の完全子会社で、投資持株会社であることから、Image Frame Investment がマーベラス株式を保有することが適切であると考えたとのこと。つまり、マーベラスの資本業務提携契約の契約相手は Image Frame Investment となるが、実際の業務の提携先は、Image Frame Investmentではなく、テンセントのグループ会社となることがあるとも語っている。
マーベラスは、バンダイやセガに務めていた中山晴喜が1997年に立ち上げたゲーム会社。ビクターインタラクティブソフトウエア(パック・イン・ビデオ)を連結子会社化することにより、『牧場物語』や『ぬし釣り』シリーズなどIPを取得しながら、ゲーム企業として躍進。 AQインタラクティブとライブウェアを合併吸収するなどしながら、その後も『閃乱カグラ』や『No More Heroes』『ルーンファクトリー』など、人気IPを生み出してきた。そのほか、さまざまなアニメやミュージカル、アミューズメントを手がけており、“テニミュ”を始めたとした舞台プロデュースにも定評がある。グループ会社としては、ジーモードや、 Marvelous USA (XSEED Games名義)、Marvelous Europe Limitedなどが存在する。
マーベラスとテンセントは、これまでもゲーム事業において連携をとっており、2019年3月には、『牧場物語』のモバイルゲーム展開について、テンセントの子会社であるテンセントテクノロジーとライセンス契約を締結していた。今回の発表においては、『牧場物語』を始めとしてIPの世界展開を目標として掲げている。『牧場物語』といえば、かつては『Harvest Moon』という名で海外展開されていたが、現在の英語名は『Story of Seasons』。ある時期から、それまで海外販売を担当していた“Natsumeによる新シリーズ”である『Harvest Moon』と、X-SEED Gamesが発売する本家牧場物語の『Story of Seasons』に分かれた。その事情は不明であるが、本家である『牧場物語』が別タイトルを名乗らざるを得なくなったわけだ。Natsumeはその後も、精力的に『Harvest Moon』シリーズ新作を発売しているが、いずれの作品も評価が芳しくない。本家『牧場物語』新作および英語版もなかなか発売されず、ユーザーは分家である『Harvest Moon』シリーズを遊び、シリーズの評価が落ちていくという負のスパイラルに陥っていた。
今回の動きは、資金調達に加えてIPの海外展開や新規IPの創出に向けた投資を強める意義もあるだろう。6月の取締役人事では、Shin Joon Oh氏と種田慶郎氏が社外取締役として就任する予定だという。テンセントとの提携を経て資金を得たマーベラスの、今後の躍進に注目したいところだ。