『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』の目標のひとつとして「マイホームの増築」があげられる。たぬきちに依頼することで(莫大なローンと引き換えに)自宅の部屋を広げたり、もしくは部屋を増やすことができる。部屋ごとに違ったテイストのインテリアを楽しむのも一興だ。しかし昨今のトレンドでは、その「入り口」の演出にこだわるコーディネイトが登場しつつある。隣の部屋に続く通路の前に大きな家具を置いて、その口を塞いでしまう。わざわざ家具をどかさないと入ることができない、いわば「隠し部屋」的な見せ方が人気を集めているのだ。いったいプレイヤーたちはその奥に何を隠しているのか。それぞれの自宅に秘められた禁断の領域を覗き見してみよう。
隠し部屋、それは夢とロマン
隠し部屋といえばすなわち秘密基地。TwitterユーザーのLuis Cruz氏によるお手本ともいうべきコーディネイトは、隠し部屋の基礎をすべて押さえている。まず表の部屋はあくまで明るく演出するべし。アウトドア自転車や麦わらハットが飾られた健康的な部屋からは、住民のもつ秘密など微塵もにおわせないだろう。そして隠し扉はでかい本棚であるべし。重厚な書物の群れに隠されてこそ、その背後に閉ざされた空間への期待がいや増す。そして奥の部屋は徹底してロマンに努めるべし。『あつ森』が用意する「サイエンティスト」シリーズのアイテムは、マッドな研究者をロールプレイしたいユーザーに不足なく応えてくれる。またCruz氏の研究所は、秘密ラボでありながらどこか楽しげな雰囲気が漂うのもポイントだ。黄色くリメイクした「かべかけツールハンガー」やカラフルな作業服などが差し色となり、部屋全体を明るい空気にしている。おそらくこの部屋の研究者は「陽」の者で、ガジェットで人助けをするタイプかもしれない。この例のように、ワンルームから思わずストーリーを連想してしまうようなコーディネイトは人気が高い。
*Blizzard EntertainmentのDan Johnson氏はアダルトな「秘密」を演出。表向きはクロワッサンのおいしい喫茶店、だが常連になると奥へ通されシークレットなバーへ。表・裏とも、壁にかけられたメニューや酒類といったマイデザインの芸が細かい。
*TikTokクリエイターのはっくん氏の、より物語性のある隠し部屋。数々の褒賞を与えられるほど真面目で仕事熱心な警察官だが、彼のひそかな楽しみとは……思わずほっこりさせられるオチが光る。
表に出せない現実が眠る部屋
「カブ? 何のことを言ってるのかな? 非常部屋なんて絶対隠してないんだから、しーっ♡」とはTwitterユーザーEribun!氏の談である。表向きはカラフルな壁紙とオモチャに彩られたポップな部屋、しかしその影に隠されているのは莫大な資産……カブである。隠し部屋の利用手段としてカブを備蓄しておくユーザーは一定数存在する。実際、大量の売買で資産を形成しようとするとき、収納できないことも踏まえて、部屋にカブを置いておくのは有効な手段だ。増築した小部屋だけでも6×6マスで36個ものカブを格納することが可能。ポケットを圧迫せずに財をなす賢い手といえるだろう。とはいえ、せっかくカワイイものだらけの『あつ森』ワールドに来ておいて住まいが財テクに染まっているのは苦い気持ちにならなくもない。ならば、と理想の空間と財産の収納箇所を分けてしまう実用的な利用法の隠し部屋といえるだろう。Eribun!氏の場合、わざわざ監視カメラまで取り付けているところに並ならぬ執念を感じる。
*単に物置として使う部屋を「見せない収納」にするケースもあるようだ。Twitterユーザーのmaddie氏がしまっているのは数々のDIYレシピである。
やはり黙ってないホラー勢
隠し部屋、それは人目についてはいけないから隠しているのである。キャラクターデザイナーのTUTUSIA氏による邸宅は、表向きは上等な家具があつらえられたリビングに迎えられる。Nintendo Switchが複数台あったり、テレビに能天気なバラエティが映っていたり、おそらくそれほど不幸ではないであろう中流家庭の様相がうかがえる。しかし隠された部屋に気がつくと、そこには怪しい祭壇が。室内でも焚き火が置けてしまう小ネタを活かしながら、「えいしゃき」を不気味なオーパーツのように祭り上げている。部屋の隅で存在感を放つ亀は川で釣り上げることのできる「カミツキガメ」だ。室内外にムシやサカナを飾ることができる本作でも、なぜか水槽や生けすではなく放し飼いで設置できてしまう異色の生き物。そのシュールさに魅了されるプレイヤーは多く、怪しげなコーデで活用される例が散見される。このほか隠し部屋を不気味に仕立てるホラーファンの人気は根強い。
*Twitterユーザーfen氏の部屋で待ち受けるのは薄暗いへやと「おにんぎょう」。数々のホラー系コーデで一線を張るエースアイテムだ。奥に貼られた「行方不明」のポスターはマイデザインだろう。同時に飾られた2枚の住民の写真——片方はおそらくサイのユメコ、もう1名は不明——との関係性が気にかかる。
*ゲームデベロッパー・taco氏の作品は若干のスプラッタ注意だ。表の部屋からして人間味がなさすぎる。恐る恐る無機質な壁の裏を覗いてみると、そこには血濡れた車椅子が。入り口の「シンプルなパネル」と奥にある「くるまイス」はそれぞれ、マイデザインでリメイクが可能な家具だ。コンクリート風の壁面や染みのついた車椅子はお手製のデザインと思われる。それにしてもホラー映画のもっとも恐ろしい演出は、「実は主人公こそが異常者だった」と明かされるオチではないか。
“秘密”の番外編
マイホームの増築を進めると自宅に地下室を備えつけることが可能だ。そう、キングオブ隠し部屋である。実際、地下室が完成すると住民から「秘密の部屋?」といった話題を振られることがある。また、工夫次第では大規模な工事をしなくとも“秘密”を隠しもつことができるようだ。
多くの隠し部屋コーデで人気のカモフラージュ家具のひとつは「もくせいのほんだな」だ。こちらはDIYから作成可能で、デフォルトのカラーは明るい印象のライトブラウン。ただしリメイクでダークブラウンに塗り替えることもでき、中身の書籍も棚の色に合わせて物々しい背表紙になる。秘密の通路にふさわしい重厚な雰囲気を演出することが可能だ。またこのほかにも、「クライミングウォール」など巨大なインテリアであれば入り口をうまく隠すことが可能なので、部屋の雰囲気に合わせて試してみるといいだろう。自分の部屋にひと工夫加えて、なんともドキドキな演出を足してみるのはいかがだろうか。