どのゲームが「ジュネーヴ条約」に違反できるのか。独自の観点からゲームを紹介する謎アカウントに注目集まる


「ジュネーヴ諸条約」を破ることができるゲームを紹介する謎めいたTwitterアカウントが2020年4月24日から稼働しており、話題を呼んでいる。「Can You Violate The Geneva Conventions? (@ViolateGeneva)」というアカウントは、ジュネーヴ諸条約に違反した行動をとれる、または違反できないゲームを紹介し続けている。特定のゲームの画像に、そのゲーム内ではジュネーヴ条約に違反した行為ができるかどうかの一文を添えて投稿を行う不思議なアカウントだ。

ジュネーヴ諸条約は、1949年にスイスのジュネーヴで締結された国際法。戦時下において一般市民から傷病兵、捕虜など戦闘を行わない人々の保護を目的としている。つまりこのアカウントは、ゲームのなかでジュネーヴ諸条約に反するような非人道的な行いができるかを検証しているのだ。とはいえ、戦争を扱ったゲームを取り上げることは少なく、あえて関係のなさそうなゲームを取り上げている。

記念すべき以下の初投稿では、『スーパーマリオ64』を紹介。「『スーパーマリオ64』ではジュネーヴ諸条約に違反することができます(You can violate the Geneva Conventions in Super Mario 64.)」の一文と一緒に、子どものペンギンをステージ外へ落とそうとするマリオの写真が投稿されている。『スーパーマリオ64』のさむいさむいマウンテンでは、子ペンギンを持ち上げ親ペンギンのもとへ連れていくとスターを獲得できる。一方で、このとき子ペンギンを崖から落とすことも可能である。崖から落とし子ペンギンを虐待することが、家族から離れた児童の遺棄(第四条約 第二十四条)に当てはまるということだろうか。ジュネーヴ諸条約内のどこに違反するか明らかではないが、この調子で投稿が続く。

『メタルギアソリッドV ファントムペイン』も、ジュネーヴ条約に違反できるゲームとして紹介されている。本来ジュネーヴ諸条約の名宛人であるはずの軍事組織が、このアカウントで取り上げられるのは珍しいかもしれない。内容はというと、麻酔銃で眠らせた敵兵をフルトン回収することは、捕虜や傷病者への虐待に当たるというものだ。軍事組織なら遵守するべきジュネーヴ諸条約だが、スネークをはじめダイアモンド・ドッグスのメンバーは条約が守れていない。『メタルギアソリッド』でオセロットが放ったセリフ「ジュネーヴ条約も関係ない」をリプライに貼るユーザーもあらわれている。

『グランド・セフト・オートV』ではゲーム内のどの行為が、ジュネーヴ条約のどの項目に違反しているのか分かりやすく紹介されている。「『グランド・セフト・オートV』では第四条約第三十二条に違反できます。(You can violate Article 32 of the Fourth Geneva Convention in Grand Theft Auto 5.)」の文と、同作の主人公のトレバーが政府組織のエージェントと、民間人を尋問するシーンを紹介。第四条約第三十二条は、肉体罰禁止。民間人にたいして、拷問や殺害を行うことは上の条項で禁じられているのだ。

『スーパーマリオメーカー 2』もジュネーヴ諸条約を破ることができるゲームのひとつ。違反している内容は捕虜の後送と後送の条件(第三条約十九条と二十条)に関する条項だ。これによると捕虜はできるだけすみやかに、なおかつ人道的に戦闘地域から後送されなければいけない。しかしマリオを捕虜に見立てた場合、安全にゴールまで後送されることはないに等しい。『スーパーマリオメーカー 2』は、ゲーム全体がジュネーヴ諸条約に違反している可能性があると言いたいのだろう。

『アサシン クリードⅡ』は条約に違反できないゲームとして紹介。理由は「15世紀のルネサンス期には条約は存在しないから」だそうだ。ほかにも『XCOM: チーム・キメラ』はジュネーヴ諸条約に違反できるゲームとして紹介。地球に残ったエイリアンを捕虜にして、兵士という危険な労働を強いているということだろうか。リプライ欄では、エイリアンにそもそも人権があるのか、ユーザー間で議論が交わされている。なお画像左側に写っているエイリアンは人類との共存を目指しており、捕虜という扱いを受けていない。このシーンでは、同キャラクターがサイキック能力により敵兵のマインドに介入している。そうした意味で、捕虜化した敵兵に危険な労働を強いているとも捉えうる。

ちなみに、こちらの「Can You Violate The Geneva Conventions?」アカウントを運営しているのは、海外メディアThe Hard Timesだ。ゲームや映画、音楽、政治などを幅広く取り扱うエンターテインメントメディアである。メディア運営で蓄積された知識やノウハウをもって、このジョークアカウントは運用されているのだろう。また形式としては、ゲーム内の犬にふれられるかどうかを判定する「Can You Pet the Dog?」アカウントをベースにしていると考えられる。

ユーザーによっては、「自分の好きなゲームがジュネーヴ諸条約に違反できるのかどうか」が紹介されていると、嬉しくなるかもしれない。いまのところ継続的に投稿がなされており、さまざまなゲームが紹介されている。気の抜けたユーモアを楽しめる同アカウントとしてフォローしてみてはいかがだろうか。