PS4でリリースされた『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』は、これまでのシリーズ作品と比べて、広いエリアが用意されているという特徴がある。たとえば、マダガスカルの平原では、より自由度の高い探索が可能だ。開発元であるNaughty DogのクリエイティブディレクターNeil Druckmann氏は、チーム内でこの設計をワイドリニアと呼んでいると明かしていた。このワイドリニアなゲームデザインは、このたびリマスター版が発売される『Crysis』から強い影響を受けていたようだ。かつてNaughty Dogに在籍し『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』に携わり、現在はInsomniac Gamesで活躍するゲームデザイナーJames Cooper氏が明かしている。
『Crysis』といえば、CryEngineを用いた美麗なグラフィックの近未来SFシューターとして名を馳せたが、ゲームデザインの面でも評価が高い。ストーリー指向の作品でありながら、チャプターごとに用意された広めのエリアを攻略する形式。敵との交戦においては、どのようなルートを選ぶかも重要となり、ステルス行動をする必要があるなど、リニアゲームとしては奥深い戦術性が存在する。このゲームデザインを、James Cooper氏を含んだ『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』開発チームはワイドリニアと呼んでおり、そうしたエッセンスが同作に取り入れた。
つながりとしては、Cooper氏はかつてCrytek UKに所属し、『Crysis』のコンソール版移植を携わっていたという。リニア型のゲームでありながらサンドボックス的なアプローチでのゲームプレイを実現する『Crysis』のレベルデザインは、のちに同氏が関わったタイトルにおけるワイドリニアなレベルデザインに多大な影響を与えたとのこと。Cooper氏の『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』での役職はゲームデザイナー。つまり、『Crysis』コンソール移植でのノウハウが、『アンチャーテッド』にて生かされたようだ。なお、両作ともにジープで平原を失踪するシーンが存在しており、レベルデザインだけに留まらない影響を感じさせる。
https://twitter.com/_James_Cooper/status/1250896536210272256
Cooper氏は『Marvel’s Spider-Man』にもリードデザイナーとして関わっている。同作はオープンワールドであるが、一部ミッションではワイドリニアなデザインが取り入れられている。『Crysis』の血脈は、断片的ながら、さまざまな大作に継承されていると言えるかもしれない。またCooper氏はTwitterにて、『Crysis』は過小評価されたシューターであるとコメント。同作はグラフィックの美麗さが注目されがちだが、コアゲームプレイ体験も非常に力強く、10年以上経っても、同作のやり方を継ぐ作品が(続編でさえ)出てこないのは、驚きであると語っている。同作の完成度を非常に高く評価しているようだ。
https://twitter.com/_James_Cooper/status/1251021637765353477
なお『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』において、オープンワールドではなくワイドリニアが採用されたことについて、Druckmann氏は緊張感の継続を理由のひとつとしてあげている(GameSpot)。『アンチャーテッド』シリーズはストーリー指向の作品であり、没入感と緊張感が重要。しかしオープンワールドを採用すると緊張感が欠如してしまうのではないかと懸念したという。オープンワールドゲームの場合、もし味方が危険な状態であっても、そっちのけで異なるサイドクエストクリアに行くことができてしまう。すると本当に危険が迫っているとは思えなくなる。そうならないよう、物語のペースをコントロールする必要がある。そうした経緯により、広さを感じられながらもストーリー指向の根幹を崩さないワイドリニアが採用されたのだろう。
『Crysis Remastered』は、PC/PS4/Xbox One/Nintendo Switch向けに2020年夏発売予定。美しく蘇るだけでなく、ソフトウェアベースのレイトレーシングなど新技術も採用されている。