Valveが「Steamにおける新規リリースの販売成績」を公表。成功を収めるゲームが増加傾向も、競争環境も厳しさを増す

 

Valveは4月8日、「Steamにおける新規リリースの販売成績」と題して、Steamの成長が新しいタイトルに及ぼす影響と、開発者にとってそれが何を意味するかを調査した結果を投稿した。

ここで示されたのは、2005年から2019年にかけて、リリース後最初の2週間の収益が1万ドル(約108万円)以上に達した、有料で販売されているゲームの数である。最初の2週間を調査対象にした理由は、1年のどの時期にリリースされたとしても公平に評価できることと、多くの開発者が初期収益を重要な指標にしているためとのこと。

掲載されたグラフは文字どおり右肩上がりであり、ValveはSteamで成功をおさめているゲームの数は継続的に増加していると述べる。このリリース後最初の2週間という期間に1万ドル程度の収益を上げた最近のゲームのほとんどは、リリース後12か月の間に2万ドルから6万ドルの収益を上げているという。また、同期間で5000ドル・5万ドル・10万ドル・25万ドルの収益を上げたゲームも、それぞれ増加傾向にあると報告している。

2014年にグラフが跳ね上がっているのは、Steam Greenlightが2012年に導入され、その承認のための内部ツール実装の効果が出始めたのがこの年だったため。つまりリリース数の増加が反映された形だ。2017年にはSteam Greenlightが終了し、代わってSteam Directが開始。そして2019年には前年比18%とまた大きく増加している。これは単純にリリース数が増えただけではなく、成功基準を満たしたゲームの割合も11%増加していたとのこと。

Image Credit: ArsTechnica

今回のValveの投稿では、Steamにて成功を収めているゲームの数が継続的に増加している点に焦点を当てて報告している。その要因のひとつとしてリリース数全体の増加も挙げられていたが、海外メディアArsTechnicaは、Valveが示したグラフの具体的な数値の推計と、Steam Spyが集計した各年のリリース数全体を比較(無料ゲームは除く)。その結果、リリース後最初の2週間の収益が5000ドル(約54万円)以下のゲームについては、その数が増加しているだけでなく、全体に占める割合も増加傾向にあると指摘。2018〜2019年には80%を超える結果となっている。

Blue Isle Studiosなどを渡り歩き、現在はUbisoftに勤めるプログラマのPetar Markovich氏は、リリース後最初の2週間に5000ドルを稼ぎ出すゲームは全体の20%だけというこの報告に反応。一般的に最初の2週間はもっとも多くの売り上げを記録する期間であり、その金額を3倍にした数字が1年間のおおよその収益に相当するという。つまり、ある年にSteamでリリースされたゲームの80%は、1年間で1万5000ドル(約160万円)あるいはそれ以下の収益を得る計算になる。

開発費の回収や自身の生活費、またスタッフを雇っているならその賃金など現実を見てみると、年間の目標収益が見えてくるだろう。そして、それが高額になればなるほど、達成できる確率はさらに下がっていく。Markovich氏は、仮に4人のスタッフと3年かけてゲームを制作した場合、リリース後1年で損益分岐点を超えられる確率は2〜3%だと述べる。

Steamはそれくらい競争の激しいストアであるため、同氏はコンソールを含めほかのストアでのリリースも検討した方が良いとコメント。またもっとも重要なこととして、無料で販売しても良いくらいの余裕ができるまではリリースすべきでないとも。それまではパブリッシャーや投資家からの出資を求めたり、ほかの仕事を続け、決して家を抵当に入れてゲームをリリースするようなことのないようにとアドバイスしている。

Markovich氏の指摘はあくまで確率論ではあるが、Valveが公開した数字の裏には、それだけ厳しい競争環境がSteamに存在することを改めて気づかせてくれる。Valveは、機械学習を用いてユーザーにおすすめの作品を示すインタラクティブレコメンダーやプレイネクストといった機能をテストしており、また検索性を向上させるアップデートも続けている。冒頭のグラフでの2018年から2019年にかけての大きな上昇は、そうしたシステムの改善が要因のひとつとも考えられ、2019年にはほとんどのゲームの収益見通しが改善されたという。Valveとしても、より多くのゲームが成功を収められるよう努力を続けていると言えるだろう。今回の報告の詳しい内容はSteamの該当ページを参照してほしい。