香港を憂う人々は、『あつまれ どうぶつの森』の中でもデモ活動を続けている

Image Credit : 黄之鋒 / 任天堂

昨月発売された『どうぶつの森』シリーズの最新作『あつまれ どうぶつの森』が、世界中でヒット中。普段からゲームを遊ばない人も同作に没頭。新型コロナウイルスの影響でパッケージ版のゲームおよびゲーム機が入手困難、価格が高騰中の今でも、定価以上のお金を出してこのゲームを遊んでいる。筆者自身も、Nintendo Switchで10人以上のフレンドが同時にオンライン状態でプレイする盛況を最近目にした。

『あつまれ どうぶつの森』は、いままでのシリーズ作品以上のグラフィックスと自由度を誇る内容になっている。プレイヤーは、自分の部屋だけではなく、島のどこでも自由にデコレーションをすることができる。自分でデザインを作れるし、世界中の人々にシェアもできる。また、こうしたサイトなどを利用すれば、ほぼすべての画像をQRコード化できるし、そのQRコードを使ってアプリのタヌポータルでスキャンをすることで、あらゆるデザインを自分の島に導入できる仕様になっている(Nintendo Switch Onlineの加入が必要)。

世界中のユーザーたちが理想のお家と島を作っている中、香港のプロテスターたちも島生活で彼・彼女たちの理想を語っている。たとえばこちらのユーザーは、ゲーム内で「香港プロテスターコーデ」を披露している。全身真っ黒の服に、マスクとヘルメット。よくデモ抗議の現場で見かける服装だ。

https://twitter.com/Cara_ACNHHK/status/1246268005895438337

 

実際まちに出たプロテスターたちの姿

こちらの投稿は、フレンドと共に香港の行政長官であるCarry Lam(林鄭月娥)氏を虫取りあみで叩く動画である。砂場にある文字は、去年から始まった香港デモでもっとも叫ばれたスローガン「光復香港、時代革命」だ。

こちらの投稿では、上記にもあったスローガンに加えて、香港デモが始まって以来起こったさまざまな代表的な事件の写真が展示されている。たとえば去年7月1日「香港帰還記念日」に行われた香港立法会の占領、プロテスターたちを支援するために自発的に自動車を出してプロテスターの若者を保護した市民たちなど、さまざまである。

その中には、有名人からの投稿もあった。香港の民主化団体「学民思潮」の元リーダー、香港衆志事務局長、2014年に世界を震撼した中環占拠(2014年香港反政府デモ)の中心人物Joshua Wong(黄之鋒)氏も、『あつまれ どうぶつの森』で以下のような投稿をした。ちなみに、彼が『どうぶつの森』シリーズをプレイしたのは、今作が初めて。普段は『ポケットモンスター』と『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズをよく遊ぶという。

このように、数はすくないものの、『あつまれ どうぶつの森』の自分の島で、香港デモの意志を貫くプレイヤーたちがいる。もともと『どうぶつの森』シリーズでは、ゲーム内で自分の理想的な生活を送ることが一つの大きなテーマになっているが、このように、香港の人々にとっては、やはり「光復香港、時代革命」が、その理想の一つになっているのだろう。

ちなみに、『どうぶつの森』が大フィーバー中の中国でも、前述した香港プロテスターたちの投稿が一部で広まっている。多くの人がコメントで「理解できない」「香港の人たちのせいで、ゲームが中国でBANされるのは嫌だ」「香港プロテスターたちは暴力者だ、許されない」と危惧している。香港と中国大陸との溝は、『どうぶつの森』を介して見ても、深まっていることがうかがえる。