『Call of Duty』シリーズに登場する車両を巡って、販売元のActivisionが大手自動車メーカーAM Generalから訴えられていた件について、裁判所がActivision側の主張を支持する判決を下していたことが明らかになった。海外メディアHollywood Reporterなどが報じている。
AM Generalは、アメリカ軍に配備されている軍用車両「HMMWV(ハンヴィー)」を製造しているメーカーだ。ハンヴィーにはさまざまなモデルが存在するが、そのシルエットは非常に特徴的のため何らかの形で目にしたことがあるという方は多いだろう。そして同社は2017年11月、『Call of Duty』シリーズに登場する車両はハンヴィーのイメージを無断使用しているとし、Activisionおよび同シリーズを使用することの多いeスポーツ団体Major League Gamingを相手取り、知的財産権の侵害を訴えていた。
権利侵害がおこなわれていると指摘されたタイトルは、『Call of Duty 4: Modern Warfare』から『Call of Duty: Ghosts』まで、モバイル向けを含むシリーズ8作品。現代戦を描くこれらのタイトルには、確かにハンヴィーのような車両がアメリカ軍と共に登場し、プレイヤーがそれに乗り込むシーンもある。AM Generalによると、『Homefront』や『Operation Flashpoint: Red River』といった他社作品では、正式にライセンス契約を結んだ上で収録しているという。同社は、Activisionに対して複数回にわたって交渉を求めたが決裂。その後『Call of Duty: Modern Warfare Remastered』がリリースされ、訴訟へと至った(関連記事)。
AM Generalからの訴えに対してActivisionは2019年6月、本件は合衆国憲法修正第1条が定める表現の自由への攻撃であるとして、略式判決の動議を出した。政府請負業者として、米国民の税金によって購入されたハンヴィーを過去30年間にわたって米軍に納入し、それがすべての主要紛争地域に投入されてきた事実を踏まえ、現代戦を表現する同社タイトル内の車両描写について、商標権を盾に制限を試みることは認められないというのがActivision側の主張である。
そしてニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は2020年3月31日、Activisionが求めた略式判決の動議を認め、同社の主張を支持する判決を下した。判決では、現代戦をシミュレートするゲーム内で、軍事作戦に実在の車両が登場することは、プレイヤーに戦場のリアルさや迫真感を与えることに繋がると言及。その上で、作品における芸術的な目標がリアリズムにあるとするならば、実際の軍隊にて使用される車両をゲーム内で表現することは、間違いなくその目標の達成を促進するだろうとして、Activision側の主張を支持した形だ。
米軍の登場する現代戦を再現する『Call of Duty』タイトルにて、ハンヴィーのような車両を使用することについて裁判所のお墨付きを得た形だ。なお、今回の判決に対して両社は特に公に反応を示していない。AM Generalが控訴するのかどうかも現時点では不明である。
ちなみに、2019年に発売された『Call of Duty: Modern Warfare』では、リブート作品としてシナリオを大きく変えたこともあり、ハンヴィー風の車両が登場する機会はなかった。もしかすると、今回の訴訟を受けてあえて控えていたのかもしれない。ただ、Activisionの主張を認める判決が下された翌日4月1日には『Call of Duty: Modern Warfare 2 Campaign Remastered』がリリース。序盤からハンヴィーに似た車両が登場し、その銃座に座って進むミッションも体験できる。