「コナミとSIEが『サイレントヒル』新作を開発中」という噂が否定され終結。怪しげに始まり終わる噂の顛末

『サイレントヒル』にまつわる噂が、Konami Corporation of Americaの広報担当者が否定したことにより、消滅した。実はこの噂、その出元もかなり怪しげである。その顛末を追っていく。

コナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)が発売してきたホラーゲーム『サイレントヒル』シリーズ。同作にまつわる噂が、しばらくインターネット上で飛び交っていた。その内容とは、ざっくりといえば「コナミがソニー・インタラクティブエンタテインメントと共に『サイレントヒル』新作を開発している」というもの。この噂について、Konami Corporation of Americaの広報担当者が否定したことにより、その可能性が消滅した。実はこの噂、その出元もかなり怪しげである。その顛末を追っていく。

まずは、あらましについてざっと振り返ろう。まずこの噂が大きく動き出したのは、今年1月末。ホラーゲームのリークなどをおこなうインフルエンサーDuskGolem氏が、『サイレントヒル』のプロジェクトが動いていると示唆するツイートをおこなったことにある。内容をまとめると、コナミ内で複数の『サイレントヒル』のゲームが開発中であるというもの。2年前に同社はさまざまなデベロッパーとアイデアを共有しており、1つはフランチャイズのソフトリブート、もう1つはリブート作と並行して展開されるエピソード形式の『Until Dawn』スタイルのゲームだったとコメント。同氏は自身の推測であるとしながら、2020年にどちらかが発売されるだろうと見立てた。

ホラーゲームを扱うメディアRely on Horrorは、このDuskGolem氏のツイートを紹介しながら、この情報について同意。詳細は明かせないながら、独自ソースから『サイレントヒル』が開発中であることを確認していると添えていた。

そしてこの噂にさらに火がついたのは、さらに具体的な「追加情報」が出たこと。Rely on Horrorは3月12日、またしても独自ソースから『サイレントヒル』新作が開発中であると報道。ソース元から得た情報は複数あると主張していた。ひとつめは、SIEが絡んでいるという情報だ。『サイレントヒル』開発初期メンバーであり、『サイレン』の生みの親である外山圭一郎氏と『サイレントヒル』シリーズコンポーザーの山岡晃氏が、同シリーズでデザイナーを努めた伊藤暢達氏と共に、ソフトリブートに携わっているとの情報。SIE Japan Studioの『サイレン』チームが作っている可能性があると補足している。1年前から開発が進んでいるとも。

ふたつめは、コジマプロダクションがもうひとつの『サイレントヒル』新作を開発しているというもの。実際に、小島秀夫氏はコナミではPS4向けに『Silent Hills』を開発していた過去があり、『P.T.』はそのティザーであった。結果的にプロジェクトは立ち消えになったが、SIEがコナミと協働してこの『サイレントヒル』プロジェクトを復活させられるように動いていると報道。またRely on Horrorは、現時点で開発が進んでいるのは前者(サイレンチーム開発)のみであるとも報告している。

伊藤暢達氏といえば、今年はじめコアメンバーとして新たなプロジェクトに取り組んでいると明かしており、「キャンセルされないことを望む」と示唆的なコメントもあわせて話題を呼んだ。そしてコジマプロダクションといえば、『デス・ストランディング』のリリースを終えたばかり。外山圭一郎氏についても、『GRAVITY DAZE 2』リリース以来、目立った音沙汰がない。“それらしいパズルのピース”が揃っているのも確かである。

しかしながら、Rely on Horrorはこれらの噂の真偽をコナミに問い合わせ、その結果噂はあくまで噂であることが明らかになった。コナミの北米広報担当は「噂が出回っていることは知っているが、それらは事実無根である」とコメントしたという。一方で、担当者は『サイレンヒル』のIPの扉が閉じられていないことを強調。ただし、IPは噂のような形で展開されるわけではないとも語ったそうだ。なおRely on Horrorは、前出の「サイレンチーム新作」と「コジマプロダクション新作」について個別の回答を尋ねたところ、返信はもらえていないという。

と、ここまでの流れをざっと説明したが、この話はDuskGolem氏のツイートを発端として、ホラーメディアRely on Horrorが広げ、同メディアが終えた噂話である。オリジナルのソースをもって、同様の報道をしているメディアは他にない。Rely on Horrorだけが主張している構図だ。コナミ広報は噂話レベルで丁寧な対応をする企業であり、コメントを含め問い合わせたこと自体は事実だろうが、話を作って注目を引き収束させるマッチポンプ感も否めない。外山圭一郎氏や小島秀夫氏、そして伊藤暢達氏を引き合いに出し“それらしいシナリオ”を作っているが、ある意味ではファンが考えられそうな話であるとも言える。いずれにせよ、コナミの担当者が否定した以上は、新作プロジェクトは現時点で噂の域を出ないだろう。

※ 『サイレントヒル』においては、2015年よりパチスロも展開されている

ただし、噂話を取り上げて注目を集められるほど、『サイレントヒル』シリーズが今でも全世界で人気を誇るのは確か。Twitterなどでも、霧が深い日には「サイレントヒル」の言葉が飛び交い、トレンド入りするようなケースもしばしば散見される。フランチャイズの扉が閉じられていないという回答が真実であれば、新たな展開を目撃できるかもしれない。噂レベルの話ではなく、コナミより直々新たな発表がなされる日をのんびりと待ちたいところだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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