ドット絵ファンタジーRPG『Sea of Stars』発表、日本語対応予定。『The Messenger』スタジオがおくる、懐かしくも現代的なJRPG体験
カナダに拠点を置くインディースタジオSabotage Studioは3月19日、90年代RPGをリスペクトした新作ファンタジーRPG『Sea of Stars』を発表した。2022年にPC(Steam)とコンソール向けに発売予定で、日本語の対応もアナウンスされている。
『Sea of Stars』は同スタジオが2018年にリリースした2D忍者アクション『The Messenger』(関連記事)と世界観を同じくする前日譚にあたるという。主人公となるのは夏至の日に生まれた少年Zaleと、冬至の日に生まれた少女Valere。彼らは邪悪な錬金術師の軍勢を打ち倒すべく、太陽と月の力を合わせた唯一の対抗手段「蝕の魔法」を使って立ち向かう。ときに壮大、ときにおちゃらけ、またエモーショナルな物語が展開されるといい、「冒険と友情」というクラシカルなRPGのテーマを描き出す。一方でSabotageらしい「ひねくれた」ストーリーも詰め込まれているそうだ。
開発にあたっては伝統的なRPGシステムに敬意を払いつつ徹底的に分析、必要に応じて現代にふさわしいアレンジを加えたという。たとえば本作ではフィールド探索とバトルがシームレスに移り変わる。ローディングや画面切り替えによる中断を排することで没入感を高めた。また物語に沿って自然にゲームが進行するようなレベリングも調整。経験値稼ぎの必要に迫られて足止めを食らうことがないよう、ステータス値よりもスキルと戦略に重きをおいた戦闘に仕上がっている。
「スキルと戦略」とは具体的には何か。特徴的なのが“Timed hits”と呼ばれるシステムで、攻撃アニメーション中にプレイヤーがコマンドを入力できるというもの。うまくヒットすれば自分の攻撃がより強力になるほか、敵の技を弱体化することもできる。本システムはかつて『スーパーマリオRPG』で見られた、攻撃中にタイミングよくボタンを押すことで付加効果が得られる「アクションコマンド」を意識したものだろう。
ほか、戦略性の面でいえば“Spell-breaking”システムも独特だ。強力な魔法を詠唱している敵の上には、“locks”と呼ばれるアイコンが表示される。記号が示す特定の攻撃をこちらが与えれば、相手の魔法の威力を削いだり、完全にキャンセルさせたりすることも可能だ。また“Boost”システムでは、敵を攻撃した際に発生する“Eclipse Orbs”を吸収することで自身のあらゆる行動が強化される。オーブは後に備えてとっておくことも可能なため、長引くボス戦ではどのタイミングでバフを使うかが鍵となりそうだ。数々のシステムからは、単純なレベル上げにこだわるのではなく、プレイヤーの知恵と技術で壁を突破するスタイルへの強い志向が見てとれる。
フィールド探索へのこだわりも見所だ。レトロ志向な本作だが、懐古ゲームにありがちな「上下左右カクカク移動」はあえて不採用。むしろあらゆる方向に自由に動き回れることで、周囲のすべてに対してインタラクティブに触れられる環境づくりを目指した。ときには屋根に登り、崖から飛び降り、水中のトンネルを潜り抜けるなど、メインの道から積極的に外れることで隠されたご褒美をもらえる仕様になっているとのこと。
RPGの旅路におなじみの「船」も一風変わったつくりになっている。本作の船路ではただ進むだけではなく、波目を読み、風向きに沿って帆を張ることが必要になるという。一見厄介そうなシステムだが、開発陣によれば気楽に目的地へ行きたいプレイヤーの邪魔をするものではなく、予期せぬ島を見つけたり海中に沈む影に目を凝らしたりすることを楽しんでもらいたいとのこと。また船は移動手段ではなく小型の拠点にもなる。中ではパーティメンバーとの会話を楽しめるほか物語のリマインダー役も果たしてくれるそうで、「かの悪名高い『半月RPG放ったらかしの呪い』にかかっても大丈夫」との文言が添えられている。
「太陽と月」をストーリーの主軸におく本作は光の表現に強いこだわりを示す。リアルタイムに移り変わる陽の光、伸びる影、夕闇に発光する魔法の街灯などは白眉の描写だ。これらは物語の演出に強く結びつくほか、「白昼にだけ開く秘密の通路」「宵の口に咲く魔法の花」など時間経過にかかわるギミックも登場するようだ。まだ具体的なショットは明かされていないが、天候の変化も導入予定とのこと。昼と夜、晴れと雨、屋内と屋外といった環境の変化でシームレスに切り替わる音楽も旅路を盛り上げてくれるそうだ。
Sabotage Studioは現在、Kickstarterで本作の支援者を募集中している。リワードとして作中に登場する地下廟に石碑や彫像を残したり、廟の案内人となったりすることが可能だという。これらは物語から切り離された要素ではなくストーリーと深く結びついた存在となるそうなので、『Sea of Stars』の世界観にすでに魅了されたという人は参加してみるといいだろう。今回のクラウドファンディングは資金調達だけでなくユーザーからのフィードバック、またファンコミュニティの形成も目的としており、目標金額の達成如何によらずゲームはフルバージョンをリリース予定とのことだ。なお3月20日13時現在、Kickstarterキャンペーンは、目標額の13万3000カナダドルを大きく上回っている。
2022年にPC(Steam)とコンソール向けに発売予定の本作だが、後者については「新たな時代の夜明けにあって、対応プラットフォームを予測することは難しい」とコメント。ただしなるべく多くのプレイヤーに本作を触れてもらいたい旨を述べているため、複数の機種で遊べることが期待できそうだ。対応言語は日本語を含め10か国語におよぶという。なお前作はDevolver Digitalより発売されていたが、今作のパブリッシャーは現時点では決まっていないようだ。