米国カリフォルニア州のゲームスタジオManticore Gamesは3月16日、PC向けのゲームクリエイションプラットフォーム『Core』の無料オープン・アルファテストを開始した。『Core』は、3Dマルチプレイゲームの制作を念頭に置いたコンテンツ・クリエイションツールを提供すると同時に、オンライン上でコンテンツを共有できるプラットフォームとしても機能している。
『Core』自体はUnreal Engineを用いて作られており、スクリプト言語には軽量性や高速性が売りのLuaを採用(バージョン5.3.4)。ただ、ゲーム制作に慣れていないユーザーを想定したクリエイションツールということもあり、自分でスクリプトを書かなくてもゲームを作れる。外部で制作したアセットのインポートは不可。既存のアセットのみという制限はあれど、その制限ゆえに『Core』クライアントおよび各種ゲームは軽く、ゲーム間の移動もスムーズに行える。ゲームを作るのも、ゲームを遊ぶのも、速くて軽くて簡単。数多あるクリエイションツールの中で、『Core』が売りとしているポイントである。
Unreal Engineの力を活用しつつ、新世代のクリエイターに使いやすい学習・実験・制作用のツールを与え、簡単かつ手早くマルチプレイゲームを作り出すための環境を整える『Core』。ゲーム制作のさらなる民主化を試みる挑戦とも言えるだろう。コンテンツ制作時には、空のプロジェクトから始めるか、ロジックやプレースホルダーのアセットが用意されたフレームワーク、もしくはオンライン上で共有されているコミュニティ製コンテンツからプロジェクトを選択可能。テンプレートともいえるフレームワークは、一人称視点/三人称視点のデスマッチ、バトルロイヤル、キャプチャー・ザ・フラッグといった、マルチプレイゲームの基本的なゲームモードから選べるようになっている。
オンライン上で共有されたコンテンツを自由に参照できることから、クリエイター同士での共同制作やアレンジが容易。コンテンツのオンライン公開自体も、ほんの数秒で行える。ゲームの制作・合作・流通・コミュニティ生成。各工程をワンストップで行える場所なのだ(GamesIndustry.biz)。また上のトレイラーでも示されているように、複数のコンテンツをリンクさせ、ゲーム内ポータルを通じて、別の『Core』製コンテンツへとワープする機能も搭載している。コミュニティ内でのコラボレーションを想定して、ツールが用意されているようだ。学習用資料としては、公式サイトに各種ドキュメントやチュートリアルが掲載されている。そのほかManticore Gamesのサンプルゲームの構造を参考にするのも良いだろう。現時点では最大16人同時プレイ可能なマルチプレイゲームを制作可能。将来的にはシングルプレイやCo-opゲームにも対応していくという。
アルファテストが始まったばかりということもあり、現時点で公開されているユーザー製コンテンツの数は限られている。開発元公式のサンプルゲームもしくはクローズド・アルファテスト中に作られたユーザーコンテンツだ。とはいえ、Manticore Gamesが公開している「Core Royale」「Core Plaza」「Cannons and Corsairs」「Spellshock」などからは、『Core』を使ってどのようなコンテンツを制作できるのかが垣間見れる。
なおユーザーのゲーム内アバターは、どの『Core』製ゲームを遊んでいても共通のものが使用される。アバター用の有料コスメティクスアイテムやオプション購入が、本作におけるマネタイズ手段となっている。将来的にユーザーは、チップやサブスクリプションなど何かしらの手段を通じて特定のコンテンツクリエイターを支援できるようになるという(制作したゲームそのものを有料販売することは不可)。プラットフォームとして繁栄しないとマネタイズ化が難しいビジネスモデルではある。
こうしたクリエイションツールは万人向けの製品ではない。そして間口の広いゲームクリエイティブプラットフォームとしての可能性の高さやツールとしての多機能性は、PlayStation 4向けに販売されている『Dreams Universe』が群を抜いているだろう。コンテンツ制作・共有・合作の場という『Core』のコンセプトは、『Dreams Universe』のそれに近い。また主眼は違えどプレイヤー人口の多さでは『フォートナイト』のクリエイティブモードも、クリエイターが集う場所として親しまれている。
はたして『Core』は、数あるクリエイションツールの中で独自の魅力を打ち出し、プラットフォームとして繁栄することができるのだろうか。手軽に試せる無料ツールというのは訴求点となり得るが、人が集まらないとプラットフォームとして成立せず、ツール自体が無料ゆえにマネタイズ化も難しい。まだアルファ段階であり、ここからツールとして、そしてコミュニティとして発展を遂げられるのか、推移を見守る必要がある。
『Core』の利用には、公式サイトでのアカウント作成および専用ランチャーのダウンロードが必要。ツールやドキュメント類は、現状英語のみに対応している。