『アウター・ワールド』のフォントサイズがまたデカくなる。大作たちを悩ます字小さすぎ問題

 
画像は発売当時のフォントサイズが小さかった仕様のもの

デベロッパーのObsidian Entertainmentは3月5日、『アウター・ワールド』の新たなパッチで「フォントサイズの変更」機能を追加すると発表した。同作は昨年11月のパッチでもテキストサイズの拡大を実施したばかりで、今回の修正は二度目の対応となる。

本作はObsidianが手掛けた『Fallout: New Vegas』の遺伝子を色濃く受け継いだ作品で、苛烈な資本主義がはびこる星系を生き抜く一人称視点のRPG。一貫したディストピア的世界観や安定したゲームバランスが評価を受けるSF作品だ。

画像は発売当時のフォントサイズが小さかった仕様のもの

手堅い評価を受ける『アウター・ワールド』だが、発売当初から抱える問題がいくつかあった。そのうちのひとつは、ゲーム内で表示される字のサイズだ。会話しているキャラクターの台詞にしろシステムを構成するUIにしろ、とにかくフォントが小さすぎたのである。日本語版はそれほど小さいわけではなかったのだが、英語版については傾向が顕著。大型のモニターを所持するユーザーでも、環境次第では画面から離れてプレイすることは困難に。限られたサイズの画面で遊ぶことについては、苦しんだプレイヤーもいるだろう。そうした声を受け、開発側はアップデートで対応。2019年11月に配布したパッチにてセリフ字幕やインターフェースなど、テキスト全般のサイズを拡大する改善を施した。この修正は喜ばしいものとして受け止められた一方、「まだ足りない」と感じるプレイヤーも根強く存在したようだ。

今回のパッチでは、前回よりさらに踏み込んだアップグレードがなされた。単純にテキストを拡大するのではなく、オプションで字を好みの大きさに変更できる機能が搭載されたのだ。ObsidianのUIプログラマーであるNate McDorman氏は自身のツイッターにて、スライダー調整で滑らかにサイズが変わる様子を動画付きで紹介している。同氏によれば本機能の開発には3か月を要したとのこと。このほかテキストの色味にも調整が施され、読みやすさが強く意識されていることがわかる。

HD画質がゲームのスタンダードとなってから、「字が小さすぎる」という問題は数々の大作を悩ませている。昨年1月に発売された『キングダム ハーツIII』は特異な書体も相まって、テキストの見づらさに不満が寄せられた。同年2月発売の『ディビジョン2』はスタイリッシュなUIが災いし、膨大な武器情報の比較を困難にしている。直近のビッグタイトルでは『ファイアーエムブレム 風花雪月』がインパクト大だ。日本語版では気にならないのに対し、英語版はとにかくテキストボックスの余白がでかい。理不尽な字のミニマムさに対し、ファンの間ではフォントサイズの変更を求める署名活動まで持ち上がっている。オンライン署名サイト「Change.org」にて、3月9日時点で500人以上の支持を集めているようだ。

『ファイアーエムブレム 風花雪月』

一方、こうした問題に対応する動きも開発側・ユーザ双方から出てきている。たとえば『ディビジョン2』と同じUbisoftが2017年に手がけた『アサシン クリード オリジンズ』は一定の文字サイズを確保したほか、明るい場所で字幕が消えるのを防ぐ半透明の黒いボックスを敷くオプションが選べた。またCD PROJEKT REDの『ウィッチャー3 ワイルドハント』は膨大なテキストが醍醐味なだけに、読みにくいテキストを大きく・鮮明にするためのModがいくつもファンから生み出されている。2019年のトップタイトル『デス・ストランディング』も、発売から1か月でフォントサイズ問題に対応。リリース翌月12月のアップデートにより、タイトルメニューのオプションから文字サイズ「大」を選択可能になった。

こうした流れの中で『アウター・ワールド』がフォントの可読性向上を図ったのも、ごく自然と言える。ただしひとつの作品で二度テキストサイズの修正が加えられるのは異例。ここには今年発売が予定されているNintendo Switch版の影響を見ていいだろう。新型コロナウイルスの影響で発売延期の憂き目を見ている同作だが(関連記事)、持ち運べるコンパクトな画面にも耐えうるブラッシュアップをかけたと思われる。

発売当初こそ文字の見づらさに不満が寄せられた『アウター・ワールド』だが、アクセシビリティの面においてはむしろ意識的な作品でもある。たとえば本作はマイクロソフトが開発した「Xbox Adaptive Controller」に対応。これは身体にハンディキャップを抱えるプレイヤー向けに生み出された、入力操作を自由にカスタマイズできるコントローラーだ。また視覚面で言えば、本作は色覚多様性に配慮したモードを搭載して“いない”。これは裏返して言えば、色に頼らずともプレイが可能ということだ。こちらの仕様は、開発者の1人であるTim Cain氏が完全に色覚を持たないことに由来する。同氏はUIを担当するデザイナーに、まずグレースケールで制作させてから本編へ組み込んでいるという。これらの取り組みと並んで、今回のアップデートはより幅広い人々に配慮した形と言えるだろう。

『アウター・ワールド』Nintendo Switch版の発売日は未定。もともと3月6日が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期することがすでに発表されている。新たなスケジュールについてはいまだ発表されていないため、今後の続報が待たれる。もし発売された時は、文字の見づらさを感じずに済む大きなフォントサイズでプレイできることだろう。