「GeForce NOW」からサバイバルゲーム『The Long Dark』が削除。無許可配信のお詫びにグラボが送られる

 

インディースタジオHinterland Studioの設立者/ゲームディレクターのRaphael van Lierop氏は3月2日、極寒オープンワールド・サバイバルゲーム『The Long Dark』について、NVIDIAのクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」から取り下げたことを明らかにした。NVIDIAも、同スタジオからの要求によりラインナップから削除したことを公式フォーラムにて案内している。

GeForce NOWは、NVIDIAのGeForce GPUを搭載するクラウドサーバーで実行するPCゲームを、PCやスマホなどでストリーミングプレイできるサービスで、海外では正式サービス中。GeForce NOW側ではゲームを販売せず、SteamやEpic Gamesストア、Uplayなど既存のデジタルストアと連携し、ユーザーがそれらのストアで購入しすでに保有しているPCゲームを、GeForce NOWのサーバーにインストールしてプレイする形を採用している点が大きな特徴である。

Steamなどで販売されているすべてのゲームがGeForce NOWでプレイできるわけではないが、NVIDIAは対応タイトルを随時追加している。一方で、今年2月の正式ローンチ前後にはActivision BlizzardやBethesda Softworks、カプコン、コナミ、スクウェア・エニックスなどが同サービスから撤退し、各社の全タイトルがラインナップから削除(『Wolfenstein Youngblood』は除く)。Hinterland Studioの『The Long Dark』は、これに続く形となった。

GeForce NOWから作品を取り下げることを決断した同スタジオのvan Lierop氏は、そもそもNVIDIAからは『The Long Dark』をラインナップに加えることは事前に相談もなかったと明かす。上のツイートでは、だから削除を求めたのだとしているが、ファンへの返信の中では、「無断でサービスに対応させていたこと」あるいは「許可を求める必要はないとNVIDIAが考えていたこと」自体は主な理由ではないとも述べている。

https://www.youtube.com/watch?v=bqMdEdqnBag

ただしこうした決断には逆風もあるようで、van Lierop氏に対しては、ユーザーはすでに作品を購入しており、それをプレイする環境として、いわば“リモートPC”であるGeForce NOWを選んでいるというだけという意見や、こうした仕組みにおいては開発者には何の損害もないはずだとし、わざわざ撤退することは理解できないという声が寄せられている。

それでも同氏は、『The Long Dark』はValveとの合意によってSteamにて配信しているのであって、NVIDIAとは何の契約もしていないとし、作品をどこに提供するのか、あるいはしないのかは開発者がコントロールするべきだと述べる。これについてゲーム業界で弁護士活動をおこなうPete Lewin氏は、GeForce NOWは消費者にとっては素晴らしいサービスである一方で、新たなプラットフォームに移植したり独占配信契約を結ぶにあたって障害となる可能性があり、開発者にとっては逆に酷いサービスになり得るとコメント。van Lierop氏もこれに同意している。

ユーザーとしては自分のライブラリにあるゲームを遊んでいるだけであり、NVIDIAはそのPC環境をストリーミングという形で貸しているだけではある。ただ、そのサービスにて商売がおこなわれている以上は、同社は事前に配信許可を得るべきであり、また開発者はGeForce NOWもプラットフォームのひとつであると認識して、さまざまな判断を下す必要があるということなのだろう。たとえばGOG.comでは、ユーザーのSteamライブラリにあるゲームをインポートできる似たようなサービスGOG Connectを提供しているが、こちらでは契約を結んだタイトルだけが対応している。

なお、『The Long Dark』は無許可でGeForce NOWのラインナップに加えられていたが、少なくとも先述したActivision Blizzardタイトルについては、ベータテスト実施時に合意が存在した。しかし、正式ローンチに合わせてタイトルは削除。NVIDIAは誤解があったと説明しており、その合意が正式ローンチ後も有効であるかどうかに、両社の間で認識の差があった模様である(Bloomberg)。そのうえでActivision Blizzardは、あるいはほかの撤退した各社も、現時点ではGeForce NOWをタイトルを提供する場として利用しない判断を下したようだ(関連記事)。

NVIDIAは、正式ローンチと同時に月額4.99ドルのFoundersプランに加入したユーザーの無料トライアル期間である90日が終わるタイミングで、ラインナップから削除されるゲームが多かれ少なかれ出てくるかもしれないと説明しており、同社も有料サービスの提供は開発・販売元の判断に影響を与え得ることを認めている。ライブラリに保有しているゲームをクラウドストリーミングプレイできるサービスそのものは画期的。しかし今回の一件では、結局のところサービスの成否はいかに対応タイトルを拡充させていくのかにかかっており、ほかのクラウドサービスと同じ状況にあることが浮き彫りとなった。

NVIDIAは対応タイトルの追加を続けており、先日には『サイバーパンク2077』にも対応予定であることが発表された。ちなみに、『The Long Dark』を取り下げたHinterland Studioには、無許可で対応させていたためか、お詫びとしてグラフィックスカードが無料提供されたそうだ。

なお、日本でのGeForce NOWはソフトバンクによって運営され、先日クローズドベータテストを終了。現在は無料のプレサービス期間として、正式ローンチまでの間はベータテスト参加者は引き続きプレイ可能となっている。ベータテストに落選した人にも、随時プレサービスへの参加を案内しているとのことだ。日本での正式ローンチ日は近日発表予定とのことである。