E3に25年間参加してきたGeoff Keighley氏、E3 2020不参加表明。グローバルな祭典を望む同氏と、主催側との意見相違により

E3に25年間参加してきたGeoff Keighley氏、E3 2020不参加表明。グローバルな祭典を望む同氏と、主催側との意見相違により。Keighley氏はThe Game AwardsやE3 Coliseumのプロデューサー/司会者として知られる。

The Game AwardsやE3 Coliseumなどのプロデューサー兼ホスト役として知られるGeoff Keighley氏は2月13日、ゲーム見本市E3 2020への参加を見送ることを発表した。同氏は1995年の第1回開催時からE3に参加しており、2017年以降はE3のライブ放送パネルセッションE3 Coliseumのプロデューサー兼ホスト役を務めてきた。だがE3 2020の開催に向けて、主催者側の方針と意見の相違が生じたようだ。Keighley氏は、E3 Coliseumのプロデューサーとしての仕事を辞退するという、難しい決断を下したと表明。25年間で初めて、E3に参加しないことを決めた。

Keighley氏は今後、他の手段、他のイベントでゲーム業界をサポートすることを楽しみにしていると述べ、声明をとじた。また別のツイートでは、「ゲームとゲーム業界を愛するみんなにとって、正しい選択ができたことを願います」と伝えているように、主催団体ESAおよびE3 2020の方針について思うところがあったのだろう。参加しないと決めた理由について「要因はたくさんあります。現時点でのイベント内容を知って、参加するのに抵抗を覚えたのです」とも述べている

同氏は、「E3が意義のあるイベントとして存続するためにはどのような変化が必要か」というユーザー質問に対し、「E3はもっとデジタルかつグローバルなイベントになる必要があると思います。E3は多くの人々にとって大きな意味を持つブランドですが、展示会場だけのものであるべきではありません」とも回答している。なお8月にドイツで開催されるgamescomには、例年どおり参加するとのこと。ゲーム見本市全般ではなく、あくまでもE3固有の要因があるのだろう。

E3の主催団体ESA(Entertainment Software Association)は2月12日の発表文にて、E3 2020はさまざまな面で再考されたイベントになることを強調。新しいステージ体験、実験的なゾーン、新規タイトルやビデオゲームのイノベーションを披露するライブイベントが伴うことを伝えた。E3 2020では、出展者や展示・発表内容の存在感を増幅させる展示会場とともに、よりインタラクティブで、よりイマーシブな体験を届けるべく努めていると記されており、会場そのものの盛り上げに力を入れ、訴求していることがわかる。会場中心主義ではなく「デジタルかつグローバル」なイベントを望む、Keighley氏との相違が汲み取れる部分でもあるだろう。

E3は基本的には小売店やメディア向けの見本市であるが、一般消費者向けの新作発表の場、ゲームの祭典としても機能している。時代の流れとともに、ゲームイベントの役割は従来的な見本市から移行しつつあり、Keighley氏は「客観的に考えてみると、E3とは、業界とファンが結束し、ゲームという媒体を世界規模で祝うための概念である」とGamesIndustry.bizに対し答えている。そしてE3の未来は、そのゴールに向けてどれだけ効果を発揮できるかにかかっていると述べた。

また同氏の持論として、E3はゲーマーを繋げるために、よりデジタル、グローバル、そしてインクルーシブになるべきであり、彼がプロデュース・司会しているThe Game AwardsならびにSteam上で実施されたThe Game Festivalに参加した方であれば、Keighley氏のビジョンはある程度掴めるだろうとコメント。誰しもが参加できるイベントという、同氏が求めるE3のあるべき姿と、E3主催側の思惑との乖離が垣間見える。

*マイクロソフトのXbox事業責任者Phil Spencer氏は早い段階でE3 2020参加を表明していた

近年ではゲームパブリッシャーによるE3以外での情報発信および独自の発表会が増えており、E3の存在感は以前と比べて薄れつつある。今年1月には、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)がE3 2020への出展を見送ることを発表(関連記事)。E3 2019に続き2年連続での不参加を決めた。同社は参加見送りの理由として、E3 2020はSIEが今年注力しているものを披露する場として最適ではないと感じるに至ったと説明している。SIEはかつて、E3は時代に追従できておらず、インターネットの普及もあり、かつて持っていたインパクトはもうないとも述べている。一方、SIEと同じくホリデーシーズンに次世代機Xbox Series Xを発売するマイクロソフトは、1月の時点からE3 2020参加を表明していた。

またE3 2019では、公式サイトの脆弱性により、E3 2019に参加した業界関係者、ジャーナリスト、コンテンツ・クリエイターの住所・電話番号を含む個人情報2000件が漏洩するという事件が発生した(PC Gamer)。情報管理面で不安を残しており、今回も2月12日、E3 2020の出展決定企業リストが掲載された、E3公式サイトの公開前ページ情報が漏れてしまった。この出来事も、Keighley氏がE3不参加表明を出す要因のひとつであったと、先述したGamesIndustry.bizのインタビューにて明かされている。

E3 2020は、6月9日~6月11日にかけて開催予定。参加登録は日本時間2月16日より受付が開始される。E3 2020への参加が決定している企業として発表済みなのは、マイクロソフト、任天堂、Ubisoft、Bethesda Softworks、セガ、カプコン、スクウェア・エニックス、Take-Two Interactive、バンダイナムコエンターテインメント、Warner Bros. Games。事前にリークした出展決定企業リストには任天堂の名が含まれていなかったことから、同社の不参加が危惧されていたが、ESAの正式発表により参加が確定情報となった。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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