ゲーム開発コメディドラマ「神話クエスト」日本語対応でApple TV+配信開始。主張の激しいリーダーに振り回されるMMORPG運営陣の苦悩

 

Appleの映像配信サービス「Apple TV+」にて、Ubisoftが製作に関わるゲーム開発コメディドラマ「神話クエスト:レイヴンズ・バンケット(Mythic Quest: Raven’s Banquet)」シーズン1の配信が2月7日より開始された。全9エピソードで、日本語音声・字幕に対応。Apple TV+は有料サービス(月額600円)であり、初回加入時には1週間の無料トライアル期間が設けられている。

「神話クエスト:レイヴンズ・バンケット」(以下、神話クエスト)は、架空のMMORPG「神話クエスト(Mythic Quest)」を開発・運営するゲームスタジオの舞台裏に迫るコメディドラマ。世界一のMMORPGを生み出したクリエイティブ・ディレクターのイアン・グリムは自己主張が激しく、現場のスタッフは日々イアンの思いつきや気まぐれに振り回されている。イアンと口論しつつも、彼のビジョンに付き合うリード・エンジニアのポピー。エグゼクティブ・プロデューサーなのに気弱で求心力が弱いデビッド。冷淡無情なマネタイゼーション部門担当のブラッド、ネビュラ賞受賞作家という輝かしい実績を持ちながら日々酒を浴びてばかりのリードライターC.W.。個性豊かな開発スタッフによる、「神話クエスト」初の大型DLC「レイヴンズ・バンケット」配信前後のユーモラスな奮闘劇が描かれる。

同作はゲームスタジオならではのトピックを扱ったコメディドラマだ。DLCの品質に納得できず発売延期を望むクリエイティブ陣と、スケジュール厳守を望む親会社の板挟みになるプロデューサー。開発陣とは別のフロアに隔離されユーザーからの辛辣な問い合わせに向き合うコミュニティ・マネージャーや、ゲームの良からぬ情報がメディア(Kotaku)に取り上げられ事後対応に追われるスタジオの様子など、各エピソードの出発点となるのは、本当にあってもおかしくないシチュエーションである。残業代の支払いを求めてスタッフが組合を発足したり、人気ストリーマーの反応に一喜一憂したりと、ゲーム開発に関連した事柄を誇張気味に扱うことで喜劇化が図られている。

ゲーム開発を題材としつつも、シーズン1の全体的な物語の中心となるのは、芸術家肌のイアンと、リード・エンジニアとして理性的な視座を維持しようとするポピー。対照的な2人の関係性である。互いの主張をぶつけ合う中で心情の変化を見せる仕事仲間という、ゲーム開発への興味の有無を問わず関心を引き得る、普遍的なストーリーテリングだ。こうしてゲームスタジオで起きる事件を起点として、職場での入り組んだ人間模様が、ときにコミカルに、ときにハートフルに描かれていく。
(UPDATE 2020/02/10 15:25)上段落文章調整。

「神話クエスト」のプロデュース陣にはUbisoftが名を重ねており、作中の場面転換時に『フォーオナー』や『アサシン クリード』シリーズのアセットが使用されていたり、作中のオフィスに『フォーオナー』キャラクターの立て看板が置いてあったりと、なにかとUbisoftが主張してくる。ちなみにこの架空スタジオの親会社はカナダのモントリオールにあるという設定で、フランス人の重役と電話する場面も。どこまでUbisoftを参考にしたのか気になるところだ。

神話クエスト」シーズン1(全9エピソード)はApple TV+にて配信中。すでにシーズン2の製作が決定しており、「神話クエスト」の新たなDLCにまつわる物語を予定しているという(GameSpot)。

(追記 2020/02/10 16:10)
イアン役のRob McElhenney氏は「Late Night with Seth Meyers」にて、Ubisoft Montrealを訪れた際の体験を語っている。McElhenney氏いわく、長い髭を生やし、全身真っ黒のファッションで杖をついて歩いているクリエイティブ・ディレクターと出くわしたことが「神話クエスト」製作の決め手となったという。人物描写から察するに、2017年までUbisoft Montrealにて『フォーオナー』のクリエイティブ・ディレクターを務めていた、Jason VandenBerghe氏のことだろう。VandenBerghe氏は個性が強く、カリスマ的オーラを放つ人物。たしかに、イアンというキャラクターのインスピレーション元となったのがVandenBerghe氏だと言われると、妙に納得できる。

*Rob McElhenney氏の「Late Night with Seth Meyers」インタビュー

*E3 2015にて、『フォーオナー』を紹介するVandenBerghe氏(3:40~)