先月1月17日、CD Projekt REDは、オープンワールドRPG『サイバーパンク2077』の発売延期を発表した。もともと予定されていた今年4月16日から、9月17日へとリリース日が変更。約5か月の後ろ倒しとなり、プレイできる日を待ち遠しく思う方も多いことだろう。そんな中、発売日の待ちきれなさから、なんと『Fallout 4』をサイバーパンクの世界へと塗り替える人物が現れた。
海外メディアEurogamerに在籍する記者Emma Kent氏は2月7日、同誌にて「Cyberpunk 2077 got delayed, so I made it in Fallout 4 instead(サイバーパンク2077が延期したので、代わりにFallout 4の中につくりました)」と題された記事を投稿。その内容は、あらゆるModを駆使して『Fallout 4』を『サイバーパンク2077』の世界に改変させるといったもの。発売日まで耐えられない。かといって、他のゲームをプレイしていてもどこか心が落ち着かない。そこでKent氏は、サイバーパンク系Modが豊富な『Fallout 4』に目をつけたわけだ。
今回Kent氏は、自身の記事内にて動画を公開しており、そこで氏が実際に作り上げた『サイバーパンク2077』の世界を見ることができる。映像内ではゲームプレイの様子とともに、Mod導入による変更箇所をフィーチャー。ネオン煌めく街並み、サイバネテックな服装やエッジの効いた髪型、ワイヤーフレーム仕様のPip-Boyなど、まるで『Fallout 4』とは別作品のよう。見た目からしてこだわり具合が伝わるが、なかでも特筆すべきは主人公の能力だろう。敵との交戦中には、バレットタイムを発動。APを消費しつつ時の流れをスローに。また、敵ロボットを遠隔からハッキングする様子も確認できる。
実はこれらの能力は、過去に公開された『サイバーパンク2077』のデモプレイ映像にて、同作の主人公「V」も利用している。昨年8月に公開されたゲームプレイ映像では、Vが自動販売機をハッキングするシーンや周囲の空間をスローにする演出などが確認できた。Kent氏は、こうしたシステム面も『Fallout 4』内でバッチリ再現しているというわけだ。また氏のプレイ動画をよく見ると、敵に赤い枠やダメージログが表示されている。これらも『サイバーパンク2077』のデモプレイ映像にて見られる演出だ。
『Fallout 4』の荒廃したボストンの街並みを、ネオン煌めくサイバネテックな空間に変えて見せたKent氏。『サイバーパンク2077』の現時点で判明している要素を、ほとんど取り入れているといっても過言ではないだろう。決してModderやゲーム開発者ではない氏が、一体どのようにしてハイクオリティなサイバーパンク空間を完成させたのだろうか。その過程は、今回氏が投稿した記事にて説明されている。
冒頭にも述べたとおり、今回Kent氏が『Fallout 4』内に作り上げた世界は、複数の既存Modを組み合わせて作成されている。まず街並みの再現に関しては、映画「ブレードランナー」をモチーフとした建物を追加するMod「Blade Runner Avenue」を利用。もともとは、より大規模なサイバーパンクMod「Blade Runner tribute overhaul」の導入を試していたようだが、それだけでは『サイバーパンク2077』の世界を再現できないと判断。複数のModの使用を考慮し、あえて規模が小さめのオーバーホールModを選択したという。
そして基盤となるModの導入後、約22のプラグインやスクリプト拡張機能、また「Transfer Settlements」Modを使用し、作成した土地の入出力をおこなえるように。くわえて、よりネオンを強調するために、「Darker Nights」Modで屋外全体をかなり暗くしている。さらにもともとあった雑草や木々の類は、「Scrap Everything」で綺麗サッパリと削除したとのこと。これにて荒廃したボストンの街並みは、超高層ビルや胡散臭いマーケットが雑多に立ち並び、妖しげなネオンが輝く「ナイトシティ」へと変貌を遂げた。
街が完成したところで、今度はキャラクターの作成に取り掛かったKent氏。再現するのはもちろん、『サイバーパンク2077』の主人公Vだ。今回キャラを制作するにあたり、一番初めに公開された同作のデモプレイ映像を参考にしたよう。まずは瞳孔の色を「Glowing Eyes」Modで金色に変更。そして「Female Robot Textures」および「Lots More Female Hairstyles」の2つのModで、サイバネティクスな顔とパンクな髪型をこしらえている。服装に関しては、「CROSS_2077」Modに含まれるジャケットを着用。最後に、Pip-Boyを「Holographic Pip-Boy 8000」と「CyberSounds」Modで近未来仕様にすることで、Vの出来上がりだ。
武器については、2018年に公開された『サイバーパンク2077』のデモプレイ映像を参考に導入。「Gun GS Cyberpunk pistol」Modでピストルをサイバー仕様に。モダンな見た目のアサルトライフルは、「AS Vektor」Modで追加している。また、武器Mod「CROSS_Cryolance」でメカニカルなエネルギー銃を導入。近未来チックな武器Modを複数取り入れ、可能な範囲でVの用いていた銃器に近づけているようだ。
敵に銃を向けた際に、対象が赤枠で囲まれる演出は「Toggleable Hightech Vision Modes」を使用。このModで敵のハイライトを可能にしている。さらに「Self-Guided Sniper Bullets」Modを導入することで、銃弾が自動で敵を追尾するように。最後にこだわりポイントとして、「Hollywood Bullet Tracers」Modで射撃した際のフラッシュに迫力を加えているようだ。
もちろん、Vの能力についてもModで再現されている。たとえば遠隔ハッキングだ。『Fallout 4』本編においてロボットのハッキングは、背後からこっそり近づかない限り成立しない。そこで「jlauzon’s Robotics Expert Overhaul」Modを活用して、離れていてもハッキングできる仕様に変更したという。では、バレットタイムはどのように再現しているのだろうか。これについては最初、ジェットによるスロー効果の活用を考えたものの、自由にオンとオフが切り替えられない点に問題を感じたとのこと。最終的には、APを消費してスロー効果を発動できる「Bullet Time – Slow Time」Modを導入するに至ったようだ。
また「CROSS Pre-War Cybernetics」および「Cybernetic Implantation Laboratory」Modを利用することで、主人公の能力を高めている。前者ではサイバネテックなアーマーを、後者では特殊能力を入手可能。特に後者のModにて追加される瞬間移動は、Vの再現に大きく貢献したという。この時点でかなり『サイバーパンク2077』の世界に近いと言えるが、Kent氏はUI面にも手を加えた。「DEF_UI Cyberpunk 2077 Preset」ModでHUDを少し湾曲させ、「Active Effects on HUD」や「Survival stats widget」Modを駆使することで、各種ステータス表示位置や色を変更している。
敵へのダメージテキストの表示は「Floating Damage」Modを使用。これにより、一層RPGらしい演出に。そして最後に重要となるのが、NPCたちの人数や行動だ。Kent氏曰く、NPCの制御についてはもっとも苦労したという。ネオン街を賑やかにするために「Better Settlers」Modで入植者を増やすも、全体的に動きが少なくイマイチな印象に。そこで「Busy Settlers」や「Stationary Scavengers」Modを導入し、ワークステーションにおけるNPCのアニメーションを増加。そうすることで、街の喧騒や雑多な雰囲気を演出しているようだ。
こうしてKent氏は『Fallout 4』のなかに疑似『サイバーパンク2077』を完成させた。使用したModの合計数は約30。クラッシュやバグの危険、そして膨大な作業量と戦いながらも、本格的なサイバー世界を作り出した氏の努力ならびに技術力は、称賛に値すると言えるだろう。また最終的に100を超えるModを試したとも氏は述べており、『サイバーパンク2077』に対する並々ならぬ熱い気持ちは、記事の文面からも伺える。同作の発売日が待ちきれないプレイヤーは、Kent氏のようにModを利用して、プレイ気分を味わってみるのもいいかもしれない。