『Gears of War』のCliffy B、『LawBreakers』で政治的見解を押し付けてしまったことを後悔。だが失敗要因はそこではないと指摘される

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『Gears of War』シリーズの生みの親として知られるCliffy BことCliff Bleszinski氏。2012年にEpic Gamesを退社し、2014年にBoss Key Productionsを設立するも、『LawBreakers』『Radical Heights』と不発タイトルが続き、2018年5月にはスタジオが閉鎖した。その後は「二度とゲームを作らない」と発言する一方で、新しいゲームのアイデアが頭から離れない、しかもバトルロイヤルじゃないんだとつぶやいたりと、SNS上で活発な情報発信を続けている。

現在は演劇・ミュージカルへの投資・プロデュース業を始めたり、レストランに投資したりと、新たな人生を歩み始めているBleszinski氏。だがスタジオ閉鎖につながった『LawBreakers』の失敗は、いまだに頭を悩ませているようで、Instagramにて後悔の念をつづっている。特にBleszinski氏は、『LawBreakers』が“Woke”すぎたと考えているようだ。Wokeすぎた、つまり、社会的不公正や差別、多様性に敏感で、その考えを押し付けすぎてしまったと。

政治的言動を後悔

「スタジオが閉鎖してからというもの、どうすればもっと良い方向に持っていけたのか、頭を悩ませ続けているんだ。『オーバーウォッチ』という強敵が現れたときにガラッと方針転換するとか、自分のデザインアイデアにもっと厳しく向き合うとか。ひとつ悟ったのは、分断化が進む世界に向けて、自分の個人的な政治的見解を押し付けてしまっていたことだ。

『LawBreakers』を巡る言説が、“カッコいいゲームじゃないか” ではなく、“Wokeな男が、ジェンダーニュートラル・トイレで陳腐な政治思想を押し付けようとするゲーム”になってしまったんだ(注)。商品そのものを通じて、魅力を理解してもらうべきなのに。“おもしろそうなキャラクター” ではなく、“女性キャラクターをセクシーにすることを拒んだCEOのいるスタジオ”。“どのキャラクターで遊ぼうかな” ではなく、“白人男がゲームに多様性を詰め込み、インタビューで自分の意識の高さを披露して恍惚に浸っている”といったことが前面に出てしまったんだ。

優れた商品を生み出す企業/スタジオとしての地位を確立しているのであれば、政治的な言動も許されるけれど、我々はまだ実力を証明できていなかったし、あんなことをやって後悔しているよ」

注:
Boss Key Productionsは米国ノースカロライナ州のスタジオ。当時同州では、性自認ではなく出生証明証に記載された性別に合わせたトイレの使用を義務付ける州法(通称、トイレ法)に反発するボイコット運動が勃発し、議論の的となっていた。そうした中、Bleszinski氏は「私たちの新しいゲームには、ジェンダーニュートラル・トイレがあります」と発言。別途、海外メディアのインタビューにて、Boss Keyのオフィストイレのうち2つはジェンダーニュートラルであるとも語り、「パット・マクローリー(当時のノースカロライナ州知事)は馬鹿野郎だ。とことん困らせてやる(Troll the crap out of Governor McCrory)」と自身の考えを伝えていた(Polygon

本当にゲームの失敗と関係あったのか

2017年8月に発売された『LawBreakers』は、天変地異により重力が変動した未来の地球を舞台に、平和維持組織「LAW」と犯罪シンジケート「BREAKERS」の争いを描く、ヒーロー選択型のチーム対戦FPS。高機動アクションや無重力エリアでの激戦が売りの、ハードコア層に向けた実力主義シューターという触れ込みのもと海外ローンチを果たした。ゲームの評価自体はまずまずで、Metacriticのメタスコアは76/100点、ユーザースコアは6.5/10点。ただプレイヤーが一向に集まらず、2018年4月にアップデートが停止された。

Bleszinski氏は過激な発言で有名な人物であり、確かに『LawBreakers』のプロモーション中も政治的な発言をおこなっていた。だが、実のところジェンダーフリートイレの話などは、それほどコミュニティで話題になったわけではなく、作品の失敗要因としてはさほど大きくないと考えられる。今回のBleszinski氏の発言を扱った海外メディア(後述)も、『LawBreakers』が“Woke”かどうか、話題になっていた覚えはないと述べている。

当時ヒーロー選択型のチーム対戦FPSとしては、有料の『オーバーウォッチ』と基本プレイ無料の『Paladins』がポジションを固めており、すでに飽和気味な市場であった。また『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』およびバトルロイヤルジャンルが人気上昇中の時期でもあった。そうした時期的な問題や、ハードコア層に絞ったコンセプトであったこと、淘汰されずに生き残れるだけの差別化が不足していたことなど、複合的な要因であったと考えられる(関連記事)。

発言を曲解されたと嘆く

Bleszinski氏は、ゲームを売り込む際に自身の政治的見解を公に発信することは、ゲームにとってプラスに働くおこないではなかったと後悔しているが、そうした政治的姿勢が絶対的な失敗要因であったとは言っていない。そもそも当時気づかれていないことから、失敗要因に含まなくてもよいほど些細なこととも思える。ただ、Bleszinski氏が失敗要因として字数を割いて語ったのはその部分だったこともあり、彼の言葉は「Bleszinski、『LawBreakers』が失敗したのは、政治的すぎたからだと語る」(PC Gamer)「Cliff Bleszinski、『LawBreakers』の失敗を政治的発言のせいにする」(Forbes)といった断定的な見出しとともに広まっていき、「そこが原因ではない。なぜ失敗したのか理解できていない」と反発を受けることになった。

こうした反応を受けてBleszinski氏は、Instagramの投稿を更新。以下のように、Bleszinski氏らしく言葉を紡いだ。

「はっきりと伝わらなかったかもしれないから言うけど、あくまでも原因のひとつであって、それがすべてではないよ。マーケティング、タイミング、Xbox OneではなくPlayStation 4で出したこと(注)、そのほかいろんな要因が挙げられる。馬鹿げたクリックベイトの見出しで釣った方々、ほしかった結果は得られましたか?」

注:
『LawBreakers』の対応プラットフォームはPC/PS4のみ

またBleszinski氏はTwitter上でも、自分が何を言おうと、ネットとゲーマーの一部は断固として私を嫌い、言葉の解釈を変えて批判し続けるんだと嘆いている。たしかに記事見出しのいくつかは断定的な言い回しになっている。ただ記事の中身や、ユーザーからの反応には、どうして政治的言動が失敗要因のひとつだと思ったのか、いまいち腑に落ちないという内容が多い。『LawBreakers』を追っていたYouTubeのゲームレビュアーSkill Upも、同作が“Woke”だった記憶はないし、もっと大きな問題があるだろうと述べている。気にすべき論点はそこではないという思いから、人々が首を傾げたというのが実情に近いのではないだろうか。

Boss Key時代の言動を後悔し、その後悔発言への反応に嘆くBleszinski氏。スタジオが閉鎖してからは、情熱を注ぐ先をゲームから演劇に移し、ミュージカルへの投資およびプロデュース業をこなしている。ノースカロライナ州のレストランにも投資しており、昨年7月には、自叙伝を出版すべく、パブリッシャーを探していると報告していた(GameSpot)。

ゲーム開発から身を引いてからも、歯に衣着せぬ発言で注目を集めており、ゲームづくりに関心を示す素振りも見せている。また『Gears of War』シリーズの現開発元The Coalitionから、同シリーズのプロデューサーRod Fergusson氏が退職すると発表された際には(該当ツイート)、「『Gears of War』フランチャイズのコンサルをするというオファーは今も有効ですよ、マイクロソフト。そちら次第です」とツイートしている。はたして、何かしらの形でゲーム業界に復帰する日はくるのだろうか。

ちなみにTwitterユーザーからの「気をつけてよ、『Gears of War』を“Woke”な作品にしすぎたくないんだ」というコメントには、「気づいてないかもしれないけど、もうなっちゃってるよ」と返している

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