モンハン風アクションRPG『Dauntless』開発元、シンガポールのゲーム会社にスタジオ売却。売却額が上昇し、買い手候補が絞られる前に


シンガポールに拠点を置くテック企業Sea Limitedは1月28日、カナダ・バンクーバーのゲーム開発スタジオPhoenix Labsを買収したことを発表した。Phoenix Labsは、基本プレイ無料のモンスター狩りアクションRPG『Dauntless』の開発元。2014年にBioWareやRiot Gamesのベテランスタッフらが新設したスタジオであり、今ではスタッフ数が100人を超えている。今後Sea Limitedのゲーム部門であるGarenaは、Phoenix Labsと協力し『Dauntless』の成長を支援するほか、アジアやラテンアメリカを含むグローバル市場およびモバイル市場向けの展開を模索していく。

『Dauntless』は、『モンスターハンター』シリーズから影響を受けた基本プレイ無料のアクションRPG。最大4人での協力プレイに対応している。プレイヤーは凶暴なベヒモスを狩るスレイヤーのひとりとして、陸地が無数の浮遊島に分裂した「砕かれた大地」にてベヒモス討伐に向かう。ゲームの流れとしては、プレイヤーたちが集うハブエリアにてクエストを受注し、ベヒモスが住まう浮遊島に移動。剣、槍、チェインブレイド、ハンマーなどの武器種を駆使し、ベヒモスの行動パターンと弱点を観察しながら戦っていく。そして集めた戦利品を使って装備品を作成・強化し、さらなる強敵に挑む。

『Dauntless』の対応プラットフォームはPC(Epic Gamesストア)およびPlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch。2019年12月には日本語字幕に対応。プラットフォーム間のクロスプレイとチャット、Epic Gamesアカウントを利用したクロスセーブに対応しており、2020年にはモバイル展開も計画されている。Phoenix Labsの声明によると、累計プレイヤー数は2000万を突破しているという。

そんな『Dauntless』の開発元を買収したSea Limitedは、東南アジアおよび台湾向けにデジタルエンターテインメント事業を展開。ゲーミングプラットフォームのGarena、eコマースのShopee、デジタル決済のSeaMoneyを主軸サービスとしている。Gerenaは2019年第3四半期に3億2000万アクティブユーザーを記録。2017年にはモバイル向けのバトルロイヤルゲーム『Garena Free Fire』をリリースし、安価端末でも遊べるよう最適化に力を入れたことで東南アジアやラテンアメリカ圏で大ヒット。今では登録ユーザー数4億5000万人、累計売上10億ドルを超えるほどの成長ぶりを見せている。

Sea Limitedは東南アジアやモバイル市場におけるノウハウに長けており、『Dauntless』の今後の展開を考える上での利点は大きい。またSea Limitedは、Phoenix Labsに最初期から投資してきたという経緯がある。Phoenix LabsのCEOであるJesse Houston氏は海外メディアGamesIndustry.bizに対し、「私たちにとっての次なるフロンティアはモバイルです。それから、飛び込んでみたい新興国市場がいくかあります。そうした市場に進出する上で必要なノウハウを社内で蓄積していくのか、あるいは外部組織と協力するのか、悩んでいました」とコメント。そして外部にお願いするのであれば、初期投資家として既に関係性があり、Phoenix Labsの不足点を補えるGarenaを選ぶのは、自然な流れであったと説明している。

Houston氏いわく、Garenaが強みとしている地域で成功をおさめるには、言語の壁以上のハードルを超える必要がある。Garenaは東南アジアやインド、南アメリカ展開を強みとしており、今後は中東圏も視野に入れている。そうした欧州市場を超えた他国展開の恩恵を得られることは、Phoenix Labsにとって大きなプラスとなる。またSea Limitedの資金が入ることで、これまで予算の関係で制限されていた人材採用面も強化できると、Houston氏は語っている。

またHouston氏は、なぜこのタイミングでスタジオを売却したのかという点にも答えている。Phoenix Labsはベンチャーキャピタルの投資を受けて活動しているため、投資家へのリターンについて考えねばならない。まだ投資家からのプレッシャーが高まる段階ではなかったものの、スタジオを売るのであれば、事業が好調なうちに売っておいた方がよい。それに、このままスタジオが成長を続けると、売却額が上昇し、売却先が一部の巨大企業に絞られてしまう。売却先について選択の猶予が残されているうちに売っておきたかったというわけだ。

今回の発表文によると、Phoenix Labsのマネジメントチームは買収後もそのまま残る(Business Wire)。同スタジオは今後、Garenaのグローバルネットワークやモバイル展開といった強みを活用できるようになるとのことだ。