個人開発者Shota Bobokhidze氏は1月8日、新作ゲーム『Danger Gazers』をtorrentに放流した。『Danger Gazers』は今年1月3日に発売されたばかりのローグライトアクションゲーム。荒廃した世界を舞台とし、ランダムに生成されるマップをめぐり、敵を倒していく『Nuclear Throne』ライクな作品となっている。価格は9.99ドル。個人開発の小規模な作品ということで、プロモーションなどもなし。リリース直後はプレイヤー・レビュー数が共に少ない状態であったが、海賊版の放流によって売上が増加しているようだ。TorrentFreakなどが報じている。
Bobokhidze氏は1月9日、ゲームのクラックに関する情報が共有されるr/CrackWatchに、自身のゲームをtorrentに放流したことを、スレッドを立て公表。該当のスレッドには2000以上のサムズアップが集まり、その姿勢に共感するユーザーが現れ購入者が生まれだしたようだ。Polygonによると具体的には、リリース日と比べると売上が400%上がっているのだという。ウィッシュリストも以前の2倍追加されているとのこと。そのほか、ゲームの定価の倍以上の額を寄付するユーザーが複数現れたり、感謝のメールが数多く届いているとのこと。
Torrentに放流されたファイルは『Danger Gazers』最新バージョンのDRMフリー版。Steam限定の機能は含まれていないものの、ゲーム本編をフルで楽しめる。放流されたファイルには「開発者として、もし気に入った場合や今後もインディーゲームが出てほしい場合、買うのを検討してもらえれば嬉しい」と慎ましいメッセージが添えられている。一見すると個人で作った1000円のゲームを、発売1週間で放流する意図は不明。海賊版を利用したプロモーションではないかとの声もあるが、Bobokhidze氏はPR目的であることも否定している。
放流した理由としては、ゲームを購入できないユーザーや、買う前にゲームを遊んでおきたいユーザーなどに、遊ぶ機会を提供したかったのだという。また氏自身が海賊版ソフトを使っていた経験があるそうだ。当時はそのほかの選択肢がなかったことから、罪の意識もなく単純に海賊版を利用していたとのこと。買うことで開発者に還元できるとわかってはいたが、考え直すことはなかったと告白している。自身の経験も踏まえてより多くのユーザーに遊べるようにした結果、予期せぬ好意的なリアクションを受け取ったとコメント。見返りは求めていなかったという。
PCゲームにおいてクラックは、長年苦慮してきた課題。一方で、無料でソフトを入手する点というよりは、「プロテクトをクラックする」というプロセスについては注目を集めることも多い。アンダーグラウンドでは熱狂的なユーザーたちが、海賊版の流出に目を光らせている。『Danger Gazers』の開発者は、そうした界隈を知る者として自身のゲームを放流。豪快な決断がそうしたコミュニティに支持されているのかもしれない。
とはいえ、海賊版をダウンロードするという行為は、決して肯定されるべきではないだろう。また『Danger Gazers』は、SteamCharts計測でもプレイヤー数が少ないことが確認でき、発売されてから海賊版が放流されるまでに投稿されたレビューは4件。400%の売り上げ増加とはいえ、母数が少ないという点も考慮したい。一方で、少なくともこうした手法により注目を集めているのも事実。インディーゲームは宣伝をしなければ埋もれてしまいがち。そうした状況下では、海賊版の放流ですらプロモーションとして機能する時代がきているのかもしれない。