ドラマ版「ウィッチャー」製作総指揮者がreddit AMAを実施。キャスティングやニルフガード帝国に関するユーザー質問に答える

ドラマ版「ウィッチャー」製作総指揮者がreddit AMAを実施。ニルフガード帝国の描写やキャスティングなど、「ウィッチャー」ファンから寄せられた質問に答えていった。

Netflixオリジナルドラマ「ウィッチャー」の製作総指揮/ショーランナーのLauren Schmidt Hissrich氏は1月7日、ユーザーからの質問に答えるreddit AMA(Ask Me Anything。何でも聞いていいよ)を実施した。シーズン2の撮影に向かう飛行機に乗る前の、空港ラウンジでの空き時間を使って回答したということで、約1時間の短いセッションではあったが、ドラマシリーズに関する興味深い情報が引き出されていた。

まず、シーズン1のエピソード数が8つと少なめであった理由を問われたHissrich氏は、描こうとしている物語や、視聴者が最後まで見てくれるであろう長さ、そして与えられた予算をもとにエピソード数を決めていると説明。とくにTVシリーズを始めたばかりの、まだ成功するかどうか分からない段階では、エピソード数が多ければそれだけ1エピソードあたりに割ける予算が減ってしまう。そうした点を考慮した上で、8エピソード構成に落ち着いたとのことだ。シーズン2も似たようなアプローチで決めていくつもりであり、原作小説において作者のAndrzej Sapkowski氏が何を語ろうとしていたのか、そしてなぜそれを語ろうとしたのか。そしてシリーズの今後の展開のために何を描いておくべきなのか。そういった点を踏まえて製作を進めていくとのことだ。

キャスティングに関しては、キャラクターの外見が原作に忠実ではないと指摘する声があった。こうした問いについてHissrich氏は、原作者やプロデューサー陣と議論を重ねた結果、原作世界における差別は人間同士の肌の色ではなく、人間対エルフといったように、種の対立によって描写されていると解釈。そもそも原作では肌の色に関する記載が少ないことにも言及している。

みんなが同じ人種だからこそ、人間同士の肌の色ではなく、エルフやドワーフといった種の違いに人々の目が向くというのが確かに一般的な仮説ではあるが、Hissrich氏は「今は2020年ですから」と前置き。ドラマ版では「種の違いという、より大きな相違があることから、ウィッチャーの世界の人々は、互いの肌の色の違いを気にしない」という、異なる仮説のもとキャスティングを進めていったと説明している。「2020年」という発言には、ダイバーシティが大切にされる時代になったのだという意図が込められているのだろう。また、視聴者から期待されているキャラクターの外見像にマッチしないという理由で、役者がオーディションに参加しづらいようには感じてほしくなかったことから、役者の人種を考慮しない「color-blind casting」を実施したとのこと。その方針はシーズン2でも変わらない。

また原作ファンには、ニルフガード帝国が完全なる悪者として描写されていたことに疑問を持つ者が多く、今回のAMAでも複数人がニルフガードの描き方について質問していた。ドラマ版では狂信的な教徒たちのように描かれているが、原作におけるニルフガードは文明化された先進国であり、単なる悪の帝国ではない。今後のシーズンでは彼らの異なる側面が描かれるようになるのか、という質問にHissrich氏はイエスと回答。シーズン1ではニルフガードを「悪者」として描く必要があったが、「狂信者とは思えないカヒルとフリンギラが、ニルフガードに肩入れするのには理由があるのではないか」と視聴者に感じてもらえるようなキャラクター描写になっていたことを願うと述べている。シーズン2ではニルフガードの舞台裏をより入念に描いていくとのことで、単純な悪の象徴として描かれ続けるわけではないようだ。

シーズン1のエピソード1に関しては、当初は重要人物であるレンフリの幼少期のフラッシュバックを含める予定であったが、物語が複雑になりすぎることからカット。また一部撮り直しが必要になったりと、完成までに時間を要した。こうしたシーズン1での試行錯誤を経て得た教訓をもとに、シーズン2では脚本を大幅にスリム化するという。またシーズン1は時系列を追うのがやや大変な構造となっていたが、シーズン2はよりリニアな物語になるとのことだ。

さらにシーズン2では、ゲラルトが正しい判断を下したのかわからない、善悪がはっきりせず視聴者同士で議論が起きるような展開により力を入れていきたいとのこと。ヤスキエル(小説の英語翻訳版におけるダンディリオン)のトレードマークでもある帽子については、実は製作済みであり、シーズン1の段階で役者のJoey Bateyに試着してもらったが、しっくりこなかったためボツになった。ただ今後も帽子を被る可能性がないわけではないという。

*ゲーム版『ウィッチャー』シリーズにてゲラルトを演じているDoug Cockle氏も、ドラマ版「ウィッチャー」を気に入ったとのこと

ドラマ版「ウィッチャー」のシーズン2は2021年公開予定。現在配信中のシーズン1はユーザー評価が高く、Rotten Tomatoesでのユーザー平均スコアは93%。レビュー集積サイトMetacriticでは10点満点中7.8点となっている。Netflixが公開したデータによると、「ウィッチャー」は2019年のNetflix新作TVシリーズの人気ランキング2位(1位は「ストレンジャー・シングス」のシーズン3)。カテゴリを問わない総合人気新作ランキングでは6位に位置している(Hollywood Reporter)。ちなみに総合人気1位は、アダム・サンドラーとジェニファー・アニストンが共演したミステリーコメディ「マーダー・ミステリー」であった。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

Articles: 1953