『Grand Theft Auto Online』(以下、GTAオンライン)にて、中国本土と香港のユーザーたちが衝突しているようだ。BBCや、香港に拠点を置くAbacusが報じている。BBCによると、香港での抗議運動を模したような対立が、ゲーム内で勃発しているという。
事の発端としては、まず香港のフォーラムサイト「LIHKG 討論區」のユーザーたちが、同作のコスメティクスアイテムの組み合わせにより、キャラクターの服装をデモ隊のようなルックスに仕上げられることを発見。『GTAオンライン』の「ダイヤモンドカジノ強盗」アップデートにより、コスチュームの品揃えがさらに増えたことがきっかけになった。黒い衣類に、黄色のヘルメット、ガスマスク。そうした服装は「Glory to Hong Kong」セットと名付けられ、「Stand With Hong Kong」クルーとして、同じ服装をしたユーザーたちがゲーム内で集い始めた。一方、そうした動きを知った中国最大手SNS Weiboのユーザーたちは、警察隊のコスチュームに身をまとい、暴動鎮圧用の警察車両(放水銃付きのライオット水圧バン/RCV)に乗り込んでデモ鎮圧に向かった。
現実世界では、24日~25日のクリスマス時期にも、繁華街での無許可抗議運動が続いた香港。デモ隊と警察隊が衝突し、負傷者も出たと報じられている。そうした現実世界での争いを模した活動が、ゲーム内でも繰り広げられている。『GTAV』ならびに『GTAオンライン』の舞台は香港ではなく米国であるが、プレイヤー人口が多く、服装や車両などデモに適したコンテンツが揃っており、デモ隊や警察隊になりきる場として適していたのだろう。
「Stand With Hong Kong」のユーザーたちは、ゲーム内でパトカーに火炎瓶を投げたり、地下鉄の駅で破壊活動を行ったりと、完全なる暴徒と化した。一応、先述したAbacusによると、『GTAオンライン』にある街ロスサントスの地下鉄運営会社が政府側に味方したため、地下鉄をターゲットにしたという、架空の設定を設けてデモ活動を行ったようだ。ただSNSでの報告によると、両者の衝突は警察隊の圧勝に終わったとのこと。単純に人数差が大きかったという。
香港デモをモチーフにしたゲームとしては、香港デモに抗議者として参加する三人称視点シミュレーション『Liberate Hong Kong』が今年公開された(itch.io)。デモの前線に立ち、ゴム弾や催涙ガスを避けながら進むという内容であり、Steam版のリリースに向けたValveの承認を得られなかったことでも話題となった(Gizmode)。そのほか、Android向けの『The Revolution of Our Times』や、“香港で起きた悲劇”から70年後のディストピアという設定のビジュアルノベル『Karma』などが今年発表された。一方、『Everyone Hit the Traitors』というブラウザゲームでは、立場を逆にし、迫りくるデモ隊を素手やバット、鉄球で倒し、逮捕する(Abacus)。設定上、デモ隊は西洋国家に扇動され、報酬を得るために警官を殺害しているという、プロパガンダゲームである。
このように香港デモに触発されたゲームは存在するものの、実際にゲーム内で、プレイヤー同士がデモ隊と警察隊に分かれて衝突するというのは、なかなか興味深い出来事である。なお参加者の意図はそれぞれだろうが、このように『GTAV』『GTAオンライン』と香港デモが関連づけられることで、中国政府による検閲対象になってしまうことを恐れるユーザーの声もあると、Abacusは報じている。