商標権侵害を理由に、itch.ioにて一部のゲームが削除申請を受ける。「きみならどうする?」の本のタイトルが争点に
インディーゲーム配信サイトitch.ioにて、商標権侵害の訴えにより4つのゲーム作品が削除要請を受けているようだ。削除の申し立てをおこなったのはChoosecoという米国の出版会社。これにより、itch.ioでは現在3つのインディー作品がダウンロード不可となっている。この出来事の詳細は海外メディアThe VergeやGameSpotなどが報じている。
itch.ioは、インディーゲームの販売を中心とするゲーム配信ストア。作品登録の際にはお金や審査を必要とせず、誰でも気軽にゲームを配信できる仕組みを特徴としている。一方で今回、同サイトのインディー作品4タイトルに向けて削除要請をおこなったChoosecoは、ゲームブックの発行を中心事業とする米国の出版社。商標権侵害を訴える同社は、一体インディー作品のどういった箇所に訴えを起こしているのだろうか。
実は、Choosecoが削除を申し立てた4つの作品には共通点が存在している。それはストアのゲーム概要欄およびタイトルに記載される「Choose Your Own Adventure(君ならどうする)」の文言だ。以下、該当作品と今回抵触したとされる部分を挙げていく。
『It’s a Date!』:作品の説明文中「choose your own dating sim text adventure」の記載。
『A Series of Choose Your Own Adventure Stories Where No Matter What You Choose You Are Immediately Killed by a Werewolf』:タイトル中「Choose Your Own Adventure」の記載。
『CYOA GB』:タイトル中「CYOA(Choose Your Own Adventureの略語)」の記載。
『Purrfect Apawcalypse』:作品の説明文中「apocalyptic dog dating choose your own adventure game」の記載。
*こちらの作品は一部記載変更により、現在ダウンロード可能となっている。
以上が今回Choosecoにより訴えが起こされた作品と該当箇所となる。あいだに単語が挟まれていたり、略語だったりと細かな違いこそあるものの、おおかた文章の意味するところは同じ。従ってChoosecoは、商標権「Choose Your Own Adventure」を侵害されたとして削除要請を出しているということだ。その実同社は、該当の文章をタイトルに掲げるゲームブックをこれまで184作品出版してきており、シリーズものの創作物における商標として今回の文言を登録している。こうした背景から前述したインディー作品群は、削除通知を受け取ることになってしまったのだろう。
削除通知の内容としては、Choosecoが「Choose Your Own Adventure」の商標を保持しているという旨や、権利違反に当たるとされるページのURL、同社の連絡先などが記載されている。また、今回のような方法で該当のフレーズを使用することは商標権者およびその代理人、法律によって禁止されているとも同社は主張している。今回の出来事を機にitch.ioを運営するLeaf Corcoran氏は、Twitterにて該当のフレーズを使用するゲームクリエイターらに注意喚起をおこなっており、またChoosecoの申し立てを否定するつもりはないとも述べているという。今のところ同社と戦う姿勢はないようだ。
warning to any devs using the phrase "choose your own adventure" to describe their games, Chooseco is issuing takedown notices to @itchio for trademark infringement. Example game page they went after: pic.twitter.com/YG0JGUoHAA
— leaf @ itch.io 🙌 (@moonscript) December 9, 2019
「Choose Your Own Adventure」の商標権侵害を巡ってChoosecoは過去にも、キャンペーンの広告に同商標を使用していたとして、自動車メーカーのクライスラーにも提訴していたようだ。また最近では、海外ドラマ「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」のエピソード名に同商標が使用されているうえ、話の内容からChoosecoのゲームブックに暗いイメージを与えかねないとのことで、ドラマの配信元であるNetflixにも損害賠償を請求していた。とかく“あなたならどうする”といった文言は、さまざまな方面で使われやすいのかもしれない。
先に挙げたChoosecoの訴えは双方とも大企業に向けられたものであるのに対し、今回は比較的小規模なプラットフォームであるitch.io。かつその中で配信されるインディーゲームに対しての削除申し立て。Choosecoはここまで目を光らせているようだ。ただ、先述した『Purrfect Apawcalypse』のように、該当箇所の文言を変更するなどしてChoosecoに訴えを取り下げてもらえば、ダウンロードを再開できる可能性はある。双方のあいだに生じたわだかまりが一刻も早く解消することを願いたい。