Nintendo Switch版『ウィッチャー3』は、最適化前は10fpsしか出なかった。移植チームが「クリエイティブな工夫」で仕事をやり抜く

今年10月に発売されたNintendo Switch版『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション』。CD PROJEKT REDが手がけた大ヒットオープンワールドRPGであり、リッチなコンテンツとビジュアルを誇るAAAタイトルの移植は、ゲームそのものだけでなく技術的な側面からも大きな話題となった。

結果的に、Nintendo Switch版もメディアやプレイヤーから非常に高い評価を得ることとなったが、その移植にはさまざまな苦労があったことが想像される。移植を担当したSaber InteractiveのCEO Matthew Karch氏が、開発当時どのような問題に直面し、そして解決させたのかを海外メディアVentureBeatに語っている。

スポンサーリンク

Saber Interactiveは、『World War Z』などを手がけたことで知られるデベロッパーだ。Nintendo Switch向けタイトルの開発経験もあり、さらにPS4 Pro/Xbox One X向けに『ウィッチャー3』を4K対応させる作業を担当し、CD PROJEKT REDの独自ゲームエンジンREDengine 3にも精通していることから、本作のNintendo Switchへの移植を引き受けたという。

スポンサーリンク

同社のMatthew Karch氏は、『ウィッチャー3』をただ移植しただけの最適化前の段階では、フレームレートは10fpsしか出ておらず、メモリはNintendo Switchの仕様(4GB)を50パーセント多く消費、さらにデータサイズは、もっとも容量の大きいゲームカード(32GB)より20GBもオーバーしていたと明かす。そこで、まずREDengine 3のツールを使いビジュアルエフェクトなどに手を加えていった。

具体的には、動的シャドウのライティングをオフにし、SSAO(Screen Space Ambient Occlusion)もカット。また、表示するNPCの数も30パーセント減らした。しかし結果はというと、もはや『ウィッチャー3』らしいビジュアルではなくなってしまい、それらは本作にとって重要な要素であったことに気づいたという。たとえばNPCの数を調整した後は、ノヴィグラドやトゥサンでは廃墟のように感じられたそうだ。結局、これらの要素の大部分はふたたび実装されることになった。

*テック系メディアDigital Foundryが、Nintendo Switch版とPS4版のパフォーマンスを比較

フレームレートを向上させるために代わって手をつけたのは、ゲーム内のアニメーションやAI、レンダリング、クロス(布)シミュレーションなどの部分だったという。その作業においては、何を犠牲にするかという判断よりも、本作が真に必要としている要素を維持するためにはどうすれば良いか、その解決策を導き出すことにより重点を置いていたそうだ。

単純に要素を削るのではなく、クリエイティブな手法によって最適化をおこなった一例として、太陽からの光を受けて落ちるシャドウが挙げられた。本作の広大な屋外空間において、シャドウはビジュアルにリアルさをもたらす重要な要素。ただ、画一的な手法での最適化はNintendo Switchには向かなかった。そこで、ゲームエンジンがどのようにシャドウを演算しているかをいちから見直し、静的なシャドウマップや地形へのライトマップの設定と、動的なシャドウマップを組み合わせることで、オリジナルのビジュアルに似せることに成功したとのこと。

スポンサーリンク

植物についても同様に調整がおこなわれた。Karch氏は、本作の屋外環境のビジュアルのおよそ50パーセントは、植物の葉によって構成されていると述べる。すなわち処理の重さにも繋がっているのだろう。この最適化については、植物がどのように生成され、レンダリングされるのかを決めるアルゴリズムを変更したという。加えて、プレイヤーからの距離に応じて木々のディテールを変えるLOD(Level of Detail)や、ライティング、そしてシャドウについても調整し、オリジナル版のビジュアルを可能な限り維持しながら、パフォーマンスを引き出したとのことだ。

ちなみに、Nintendo Switch版『ウィッチャー3』の解析をおこなったDigital Foundryによると、フレームレートはTVモード・携帯モードどちらにおいても最大30fps、場面によっては20fps程度まで落ちる結果に。また解像度は、TVモード時は最大720pで、携帯モード時は最大540p。こちらも場面によって下落すると報告している。

Saber InteractiveのMatthew Karch氏は、1年をかけて根気強く移植に取り組んだ結果、ファンが期待する『ウィッチャー3』のビジュアルを失うことなく30fpsに到達できたと達成感を語っている。本作のビジュアルは、もちろんオリジナル版と並べて比較すると見劣りする部分は存在するが、移植の仕上がりを高く評価するレビューも多く見られ、同社は難しい仕事を見事やり抜いたと言えるだろう。

 

ニュース

Indie Pick

インタビュー

レビュー・インプレ

Devlog