『The Artful Escape』正式発表、2020年内リリースへ。ギターかき鳴らしカラフルな世界を旅する横スクロールACT


Annapurna Interactiveは11月15日、イギリス・ロンドンで開催された「X019」にて『The Artful Escape』を正式発表した。同作は、メルボルンに拠点を置くインディースタジオBeethoven&Dinosaurが手がけるサイケデリック・横スクロールアクション。2017年のE3にて、トレーラーの公開とともに、すでに開発が明かされていた同作。この度2年の時を経て、新たな映像が公開された形となる。対応プラットフォームはXbox One/iOS(Apple Arcade)。

『The Artful Escape』は、色鮮やかな世界をギターひとつで旅する横スクロールアクションだ。時は1972年。主人公の青年ギタリスト、フランシス・ヴェンデッティは、とある悩みを抱えていた。それは、自身のキャリアが伝説的なフォーク歌手である叔父の演奏スタイルで染められていること。さまざまな葛藤に苦しみつつも、ギタリストとしての将来に不安を覚えたヴェンデッティは、初のコンサートを目の前にして叔父からの自立を決心。自分だけの演奏表現、そして自己のアイデンティティを見つけるため、故郷のロンドンを離れて旅に出るのだった。

『The Artful Escape』のゲームプレイでは、走ったりジャンプしたりとプラットフォームアクションにおける基本的な動作を交えつつ、主人公の所持するギターを弾いて多彩なギミックを乗り越えていく。今回公開されたトレーラーには、ギターをかき鳴らしながら雪山を滑る主人公の様子や、沼地、古城の見える丘、果ては宇宙など、アーティスティックかつ幻想的なステージ群が確認できる。また、映像の随所に映し出される奇妙な形状をしたクリーチャーたちも印象的だ。

前述したように不思議なクリーチャーも登場する『The Artful Escape』だが、同作に戦闘要素は一切用意されていないという。あくまで楽曲の創造や、旅による発見といった要素に重きを置いたストーリー主導の作品となるようだ。戦闘がない本作では、クリーチャーたちとはセッションという形で対面。ギターを用いて、ともに熱いハーモニーを奏でるのだ。

ギターをテーマに織り込んだ作品ということで、本作ではサウンド面にも力が注がれている。ゲーム内の楽曲制作には、エレクトロニックミュージシャンとして名高いJosh Abrahams氏が参加。シンセサイザーを用いた力強くも美しい楽曲づくりに定評のある、オーストラリア出身のサウンドクリエイターだ。幻想的な世界とナラティブなストーリーを特徴とする本作のゲームプレイをAbrahams氏が携わる楽曲がいっそう盛り上げてくれることだろう。またこうしたサウンドづくりには、プレイヤー自身もゲーム内で参加できるという。バックミュージックとデュエットを組む感覚でギターをかき鳴らし、自分だけのオリジナルな演奏を楽しむことも可能なゲームデザインとなっているようだ。

『The Artful Escape』の開発を手がけるBeethoven&Dinosaurは、オーストラリアのメルボルンを拠点とするスタジオ。創設者は、ロックバンドThe Galvatronsでボーカルおよびリードギターを担当していたJohnny Galvatron氏。同氏はバンド結成時の2007年から約10年のあいだギタリストとしての道を歩んでいたが、長きに渡るバンド活動の中で本の執筆や短編映画の制作、そしてゲーム開発など、音楽以外の芸術分野に興味を持ったという。それからGalvatron氏は、芸術活動に精を出すことに。こうした経緯もあり、自身の音楽活動で得た経験をゲーム開発に活かしたいという思いから、前述したAbrahams氏やプログラマーのJustin Blackwell氏らを迎え入れてスタジオを設立したようだ。

実際に本作には、Galvatron氏の音楽活動での経験が色濃く反映されている。ゲーム内で展開される物語は、デヴィッドボウイの代表アルバム「ジギースターダスト」からインスピレーションを受けたものとなっているという。過去にGalvatron氏は、本作のストーリーを「ジギースターダストを作成するために、星間旅行でロンドンから旅立つデヴィッドボウイの物語」と説明している

またデヴィッドボウイといえば、自身の見た目やキャラクターを度々変更していたことから複数の「ペルソナ(顔)」を持つ人物としても知られる。『The Artful Escape』に登場するカラフルかつ多元的なステージの数々も、複数の顔を持つデヴィッドボウイの人物像から強く影響を受けて作られているようだ。さらにゲーム内に登場する主人公の叔父は、フォークシンガーのボブ・ディランをモチーフとして生み出されたキャラクターだという。伝説的フォークシンガーという叔父の設定は、確かにボブ・ディランを彷彿とさせる。

ほかにも『The Artful Escape』のアート面においては、スタンリーキューブリックや、スティーブンスピルバーグ、ウェス・アンダーソンなど名立たる映画監督の映像作品群からもインスピレーションを受けているとのこと。オリジナリティ溢れる本作の根底には、Galvatron氏の多岐にわたる芸術分野での経験、そして数々の著名な人物の功績が沢山詰まっているのだろう。アート、サウンド、ストーリー、全てにおいてこだわりが光る『The Artful Escape』は2020年内のリリースが予定されている。