ドラゴンオープンワールドゲーム『Day of Dragons』のKickstarterキャンペーンが、10月頭に終了した。最終的に集めた資金は約53万ドル(約5700万円)。目標額は1万3000ドルであったことを考えると、40倍以上の資金を集めたことになる。大きな成功の裏には、ちょっとした偶然が存在していたようだ。マーケティング・コンサルティング会社ICO PartnersのCEOであるThomas Bidaux氏が、その経緯を明かしている。
Accidental marketing of the year.
Game called Day of Dragons launched their Kickstarter campaign to raise $12,000 on the 2nd of September. First two days, it raised $1,300. Nothing crazy, but decent. 1/3https://t.co/Jj63NsNsDg
— Thomas Bidaux ✨-Working From Home ?- (@icotom) October 10, 2019
『Day of Dragons』は、ドラゴンをテーマとしたオープンワールドゲームだ。プレイヤーはドラゴンとなり、草原や砂漠といった複数のバイオームで構成された美しい広大な世界を生きていく。炎を吐いても、空を飛んでもいい。ドラゴンとてサバイバルには、食事は欠かせない。エサを見つけて喉を潤し、生き残ることに専念してもいいだろう。マルチプレイにも対応しており、友人とドラゴンライフを満喫することも可能。なお世界には、AIで動くNPCのドラゴンも存在するという。マルチプレイにおいては、専用サーバーが用意されるそうだ。ドラゴンは複数種類用意されているほか、ドラゴン以外の種もアンロックできるとのこと。
ドラゴンは歩行や飛行のほか、泳いだり眠ったりすることもできる。口からは火を吐き出せるほか、酸を飛ばしたり、特殊能力によって透明化することも可能。種によって、それぞれ異なる能力を持つとのこと。そのほか、巣作り要素も導入されている。卵を生むことで拠点をつくり、卵からはステータスを受け継いだドラゴンが生まれる。より優れたドラゴンを作り上げていくという楽しみ方もできるそうだ。
コンセプトこそ魅力的であるが、同作のクラウドファンディングキャンペーンは、最初から大成功というわけにはいかなかった。キャンペーン開始から2日経ち、集まった金額は目標額の1/10の1300ドル。ロケットスタートではなく、堅実なスタートと表現するほうが妥当だろう。このままじっくり資金を集め1万3000ドルに向かっていくと思われたが、キャンペーンの様子は急変する。というのも、9月7日に突如集まる額が大きくなり始め、目標額を悠々と突破。1日に5万ドル以上を集める日もあり、そのまま右肩上がりに伸び続け、最終的に53万ドルに到達した。
すべてが急変した9月7日に何があったのだろうか。実は、Kickstarterキャンペーンの裏では、Nianticとワーナーが運営するスマホ向け位置情報ゲーム『ハリー・ポッター:魔法同盟』のイベントが実施されていたのだ。9月7日に、この位置情報ゲームで実施されたイベントの名前は「Day of the Dragons(日本語ではドラゴンの日)」。通常プレイしている地域では手に入らない数種類のドラゴンが現れ、ボーナスXPが得られるというイベント。お祭り的な位置づけのイベントである。
ゲーム『Day of Dragons』と「Day of the Dragons」。似て非なる言葉ではあるが、検索時にはその単語の類似性は大きな威力を発揮する。冠詞をつけずGoogleで検索すれば、最上位に出てきていた『Day of Dragons』。普通に生活していてはあまり馴染みのない言葉が、イベントの実施により多くのユーザーの目にとまるようになった。Kickstarterキャンペーンの推移を見れば、「Day of the Dragons」の影響の大きさがはっきりと見て取れるだろう。
『Day of Dragons』が、そうした検索流入ユーザーにとって魅力的なゲームだったことも、成功の要因としてあげられるだろう。前述したように『Day of Dragons』は、ドラゴンになりきれるオープンワールドゲーム。キャンペーンページに記されたゲーム内容が実現されれば、魅力的な作品になりえる。素材としては8分にわたる映像が公開されており、ドラゴンが世界を闊歩する姿が確認できる。映像は無音で、フィールドはオブジェクトがないだだっ広いもの。見ようによっては、開発に不安を抱くユーザーもいるかと思われるが、ドラゴンが空を飛ぶ姿は、「ハリー・ポッター」を好むファンタジーファンに刺さり得るのだろう。作品と流入ユーザーの親和性の高さが、成功を呼び込んだ点に疑いはない。このストーリーを明かしたThomas Bidaux氏は、この現象を「Accidental marketing of the year」と表現している。
開発者が「もっとほしいけど、とりあえず最低限1万2000ドルほしい」と綴り始まったクラウドファンディングキャンペーンの集金額は、結果的に53万ドルに膨れ上がった。キャンペーン資金は、開発の補助的なものとして考えていたようだが、スタジオとしては嬉しい誤算になっただろう。そんなオープンワールドドランゲーム『Day of Dragons』は、11月22日によりSteamにて早期アクセス配信予定。ドラゴンになってみたい方は、来月22日の早期アクセス配信を待ってみるといいだろう。