課金に前のめりになる『マリオカート ツアー』。任天堂は懸念を払拭するサービスを提供できるか

任天堂は9月25日に「マリオカート」の待望のモバイル版となる『マリオカート ツアー』をリリースした。順調な出足を見せている『マリオカート ツアー』だが、一部のゲームファンや海外メディアからはあまりにアグレッシブな課金要素に不満の声も出始めているようだ。

任天堂は9月25日に「マリオカート」の待望のモバイル版となる『マリオカート ツアー』をリリースした。記事執筆時点でApp Storeの評価は4.6、Google Playの評価は4.2と、プレイしたユーザーからは高い評価を受けている。順風満帆なローンチを果たした『マリオカート ツアー』だが、一部のゲームファンや海外メディアからはあまりにアグレッシブな課金要素に不満の声も出始めているようだ。

 

定番のガチャ課金に対する不満

『マリオカート ツアー』には「ルビー」という課金要素が存在する。ルビーはいわゆる課金石でログインボーナスやランクアップのボーナス、カップをクリアすることで入手が可能だが、3個につき240円か10個につき720円で購入することもできる。

ルビーの用途はいわゆるガチャだ。1回のガチャにつきルビー5個、あるいは10回のガチャにつきルビー45個が必要だ。ドカンからガチャを引くことによって新たなキャラクターやマシン、グライダーなどが手に入る。コインラッシュでコインを貯め、ショップでキャラやマシンを購入することもできるが、コインラッシュにもルビーが必要だ。コインラッシュはコインが大量にばらまかれたコースを走ってコインを集めるのだが、ルビーをベットしてコイン入手に挑戦するという仕組みは、ややギャンブル性が高いと感じられるかもしれない。

 

ゴールドパスによって二段構えの課金になっているという批判

『マリオカート ツアー』には「ゴールドパス」という月額課金が存在する。ゴールドパスとは、強いていえば『フォートナイト』のバトルパスに近い、定額制でさまざまな特典が得られる課金要素だ。月額550円で「ツアーで得られるギフトがゴールドギフトになり報酬がアップする」、「ゴールドチャレンジで特別なピンバッジを獲得できる」、「200ccがアンロックされる」などの特典を得ることができる。

『マリオカート ツアー』の課金要素がPay to Winにあたるのかどうかはあえて問わないが、「ルビー」と「ゴールドパス」の2種類の課金要素があるのは明らかな二段構えの課金といえるだろう。他のサービス型の作品と比較して珍しいわけではないが、「マリオ」の名を冠する作品としての構造が問われている。『スーパーマリオ ラン』は1200円で全ステージを楽しむことができたが、『マリオカート ツアー』は月々550円に加えて、場合によってはルビーを購入することになる。

『マリオカート ツアー』をプレイする子どもたちの中には「ゴールドパスに加入したほうがコインラッシュでも有利になるかも?」と疑念をもつ子たちもいるかもしれない。課金が課金を呼ぶような仕組みにならないよう、任天堂には丁寧な説明を心がけてほしいところだ。
【UPDATE 2019/9/27 23:30】
記事初版にて「ゴールドパス加入したほうがコインラッシュが有利になるというのは、確実だろう」と記載しておりましたが、不確かな情報でした。訂正し、確認不足の状態で掲載したことをお詫び申し上げます。

しかし、任天堂が公開している動画「【9/25開幕!】マリオカート ツアー ニュース #1」はあまり丁寧とはいえない。課金に大きく関わるキャラクターの集め方について「1つ目がツアーギフト」、「2つ目はドカン(ガチャ)」と説明しているが、細かい点について「他にも集める方法があるようですが、細かい話はおいておいてスペシャルニュースが~」とごまかしてしまっている。

https://www.youtube.com/watch?v=Y5IxCTdqTdE

Redditには、いよいよ任天堂が課金に本気を出してきたという見方をするゲーマーもいる。任天堂はもはや岩田聡氏が社長を務めていた時代とは異なり、投資家の求めに応じてF2Pでの課金に積極的にならざるを得ないという声だ。事実、現社長である古川俊太郎氏は今年の展望としてSankeiBizのインタビューに答えて「(スマホゲームを)いずれは収益の柱を支える一つにしていきたい」と語っている。

 

『マリオカート』ブランドを懸念する声も

「私の子どもが、私のクレジットカードを使って『マリオカートツアー』で3000ドル以上使ってしまった」といったニュースが今後登場することで、『マリオカート』への信頼が揺らぐのではないかと心配するゲーマーもいるだろう。一方で、既にモバイルゲームはビデオゲームの収益のほぼ半分を占めており、フリーミアム・モデルとマイクロトランザクション・モデルはビジネスモデルとして機能しており、今回の『マリオカート ツアー』によってなにかが変わることはないだろうという意見もある。

同じようにガチャ課金要素のある『ファイアーエムブレム ヒーローズ』は、ガチャに依存する収益システムでありながらも比較的公平で寛大な課金要素だったと評価する声もあり、結局のところ『マリオカート ツアー』も今後の運営次第(平たくいえばどれだけルビーを配るか)で評価が分かれることになるかもしれない。

 

Apple ArcadeやGoogle Play Passとの比較も

海外メディアで目につくのは『マリオカート ツアー』とApple ArcadeやGoogle Play Passとの比較だ。とくにゴールドパスとApple Arcadeは月額料金が同じ4.99ドルということで比較に上がることが多い。Google Play Passにいたっては最初の1年は月額1.99ドルだ。

『マリオカート ツアー』に『VARIOUS DAYLIFE』などオリジナル・タイトルを含むApple Arcadeの100本のゲームや、Google Play Passの350本のアプリと同じ価値があるのか――といいたいのだろう。THE VERGEに至っては『マリオカート ツアー』の最初の記事のタイトルが「『マリオカート ツアー』がApple Arcadeと同じ月額料金で開始」と挑発的だ。

任天堂がスマホゲームへの課金に前のめりになることについて、いまのところ否定的な声はそれほど大きくはない。それはひとえに任天堂ブランドへの信頼によるものだ。任天堂には、今後『マリオカート ツアー』の課金要素を正当化できるだけの、素晴らしいサービスが求められているといっていいだろう。

Masahiro Yonehara
Masahiro Yonehara

ゲーム世界の散策とスクリーンショット撮影を趣味にしています。コア、カジュアルを問わず、ハードルが低く奥が深いゲームに惹かれます。

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