Nintendo Switch向けに発売されたプラチナゲームズによるアクションゲーム『アストラルチェイン』。全世界同時発売されたが、同作のMetacriticレビューにおいて、レビュー爆撃が発生していると報道されている。GoNintendoなどがその詳細を報じている。
レビュー爆撃とは、特定の主張を広めるという目的のもと、大量のレビューが一斉に投稿される現象だ。そしてその多くはネガティブレビュー爆撃である。ユーザーレビューのコミュニティが充実している場所にておこなわれる傾向にあり、Steamレビューではしばしば見かける現象で、国内ではAmazonレビューなどでも見かけることがあるだろう。そんなレビュー爆撃が、レビュー集積サイトのMetacriticにて、『アストラルチェイン』を対象におこなわれていると伝えられている。
9月3日10時点で同作のMetacriticページを見てみると、メディアを対象としたメタスコアは87を記録していることに対し、ユーザースコアは6.1。メタスコアとユーザースコアに乖離が出る現象はそう珍しくない。ただ、ポジティブレビュー約1700に対し、ネガティブレビューは約1200。ネガティブレビューの量が多め。内容を見てみると、否定意見はさまざまだ。
Who has played #ASTRALCHAIN ? I just started it and seems pretty damn good bit @metacritic user score is at a mediocre 6.5 while critics are 87. I also checked at an odd time when user negative rating were 666 ☹️ pic.twitter.com/KrI48hZDwZ
— DrPynz (@drpynz) September 1, 2019
※ 9月2日時点でのユーザーレビュースコア
ネガティブレビューでもっとも多くの「参考になる」票を集めているのは、ユーザー名「ps3fan2」氏による批評。短い内容とあからさまなユーザー名を見れば、ハードウェア間のファンの対立を煽る意図を感じるかもしれない。そのほか、プラチナゲームズの過去作を持ち上げたり、抽象的な批判を見せる本作以外のレビュー歴のないユーザーも存在する。もちろん、具体的にゲーム内容を批判する投稿も存在するが、ゲーム内容を論じる内容の否定レビューが少ないと感じる人もいるだろう。またこの爆撃をうけ、ユーザースコア10をつける投稿がなされるといった応酬も発生しているようだ。
Metacriticのユーザーレビューは、アカウントさえ持っていれば誰でも投稿が可能。75文字以上の感想を添える必要があるが、比較的カジュアルにレビューをすることができる。一方でMetacritic のユーザーレビューはSteamレビューのようにシステムとしては整理されておらず、すべてのユーザーのレビューを確認することもままならず、統計的に投じられたレビューを精査することは難しい。そうした背景によりレビューの傾向の精査が難しく、それが正当な批判かどうかは判断がつきづらい。ただ任天堂系の海外メディアやredditは「プラットフォームがNintendo Switch独占であることにより、爆撃を受けた」といった旨の報道をしており、コミュニティ内ではその認識が定着していた。
はたして本当にレビュー爆撃であったのか。その理由はなんだったのか。その意図は不明であるが、9月3日にはネガティブレビューの大半が一掃され、およそ1000件ものユーザーレビューが削除された。6.1だったユーザーレビュースコアは9.0に上昇。同時にMetacriticは公式Twitterにて、『アストラルチェイン』のスコアを宣伝する投稿をおこなっている。ユーザースコアの削除をおこなったタイミングで宣伝の投稿をしたと考えてもよさそうだ。
Astral Chain [Switch – 87; User Avg. – 9.0] https://t.co/fLOAn1ARRK@Nintendo Insider: "Yet another addition to the Nintendo Switch library that will be fondly remembered for decades to come." pic.twitter.com/J2wCcxaSIQ
— metacritic (@metacritic) September 3, 2019
ユーザースコアは、メタスコアの信頼度の低下に伴い、その価値が見出されてきた。メタスコアの信頼度の低下は、メディア自体への信頼度の低下などに起因したものであると考えていい。メディアの批評を集積し加重平均値をとる同スコアは、ゲームの評価を測るひとつの基準にはなるものの、ひとつひとつのメディアが立脚し公平なものであることがある程度の前提となっている。その部分に疑問を抱けば、メタスコア自体の価値は揺らいでしまう側面がある。一方でユーザースコアは、熱意あるゲーマーからの声そのものとも見られる。ゲーマー達の声を集積する形になることもあるが、前述したように悪用についての対策はさほど講じられていないため、無秩序になればそれを律することが難しくなる。
メタスコアもユーザースコアも共に、作品の評価を参考するには有用になりえるコンテンツである。ただユーザーレビューは時に無秩序となり評価軸として機能しなくなることも多い。レビュー爆撃などが検知できるなど、さまざまなケースを想定したSteamレビューほどシステムを洗練させなければ、ユーザーレビューにおいてはこうした事例が発生することは避けられない。
なお『アストラルチェイン』においては、Metacritc以外のメディアレビュー集積サイトOpenCriticなどでも高得点を記録している。高評価が正しいか、それとも低評価がふさわしいか。そのジャッジを下したい方は、実際にゲームを手にとって遊んでみるのがいいだろう。