EAがNintendo Switch向けにゲームを出さないのは「歓迎されていない」から?データをもとにリリース数4本の理由を説明

Electronic Artsは7月30日、2020会計年度第1四半期の決算を発表した。この決算発表会見の質疑応答では、Nintendo Switchに対する同社のスタンスが語られ注目を集めている。

Electronic Artsは7月30日、2020会計年度第1四半期の決算を発表した。前年同期比および直近12か月の前年比にて増収を記録し、会見では『Apex Legends』や『The Sims 4』、『FIFA 19』を含むEA SPORTSタイトルなどのライブサービスが好調であるとしている。

また、この決算発表会見の質疑応答では、EAはどのようにしてゲームを販売するプラットフォームを決定しているのかを問う質問があり、Nintendo Switchに対する同社のスタンスが語られ注目を集めている。

EAというと、大手パブリッシャーとしてあらゆるジャンルのフランチャイズを抱え、またEA Originalsとして外部スタジオのインディーゲームも販売している。そうしたタイトルを毎年多数リリースしている一方で、Nintendo Switch向けに発売したのは『FIFA 18』『FIFA 19』『Unravel Two』『Fe』がすべて。『Unravel Two』と『Fe』は外部のインディースタジオの作品であるため、EA自身が同プラットフォームに供給しているのは実質『FIFA』シリーズのみという状況だ。数多くのタイトルを持つ同社が、これまでたった4本しかリリースしていないというのは消極的にも映る。

先述の質疑応答にてEAのCEO Andrew Wilson氏は、ゲームの対応プラットフォームについて評価検討する際には、いくつか注目していることがあると述べる。まずは、操作性やコミュニティのエコシステムといった観点から見たプラットフォームの特性に、そのゲームは本当にフィットするのかどうか。そして、対象プラットフォームのコミュニティは、そのゲームがリリースされることを歓迎するのか、それとも別のプラットフォームにてプレイしたいと望むのかどうか、という点も挙げている。

Wilson氏によると、Nintendo Switchユーザーの大部分はPS4かXbox OneあるいはPCも所有しているという。そして、EAがNintendo Switch以外に向けてゲームをリリースした場合、Nintendo Switchのヘビーユーザーであっても、該当プラットフォームにてそのEA作品を楽しむというデータがあるそうだ。Wilson氏は、対応プラットフォームの評価はケースバイケースであるとも述べるが、ほとんどのゲーマーに遊んでもらえている状況が既にあることが、Nintendo Switch向けのリリースを絞っている理由のようだ。

『FIFA 20』

そうした状況の中で、EAはあえて『FIFA』シリーズだけはNintendo Switch向けに投入している。今回の質疑応答にてWilson氏は、『FIFA』シリーズはプラットフォームであると表現し、全世界数億人のサッカーファンが共にサッカーを体験できる場を、あらゆるゲームプラットフォームにて提供していると述べる。ほかのEA SPORTSタイトルの競技と比べるとサッカーはとりわけ巨大なコンテンツと言え、そのファンを取り込むためには、Nintendo Switch版にも価値があるという判断だろうか。

なお、EAは当初からNintendo Switchへの参入には慎重姿勢を取っており、次々にタイトルを投入していくかどうかは、『FIFA 18』が成功するかどうかで需要を見極めるとしていた(関連記事)。その結果については明かされていないが、同作パッケージ版のイギリスでの初週販売本数は、PS4/Xbox One版だけで全体の97パーセントを占めたという(Ukie)。その後もNintendo Switch版が制作されているため、最終的には一定の成功を見たのかもしれないが、ほかのタイトルのリリースに繋がるほどの売れ行きではなかった可能性はありそうだ。

ちなみに、『FIFA』シリーズのNintendo Switch版はやや特殊な立ち位置にある。同じタイトルであっても、PC/PS4/Xbox One版に加えられた新要素やゲームモードの多くが収録されない別バージョンとなっているのだ。9月27日発売予定の最新作『FIFA 20』でも、チームやユニフォーム、演出などのアップデートはおこなわれるものの、ゲームプレイ機能およびモードはNintendo Switch版『FIFA 19』と同じ内容であるとされている(公式サイト)。同作では、ストリートサッカーを楽しめる新モード「VOLTA Football」が目玉のひとつだが、これもNintendo Switch版には収録されなさそうだ。

技術的なハードルがこうした仕様に繋がっている可能性もあるだろうが、RedditのNintendo Switchコミュニティでは今回の質疑応答での回答に対し、EAのNintendo Switchに対するサポートが限定的だからほかのプラットフォームでプレイするのだという意見があり、多くの賛同が集まっている。

質疑応答にてAndrew Wilson氏は、『The Sims 4』のNintendo Switchでの展開についても発言。リリースの可能性は無いとは言わないが、多くのファンを惹きつけることが出来ている現状に満足している旨のコメントをしている。

海外大手メーカーのNintendo Switchに対するスタンスはさまざまで、たとえばActivision BlizzardはEAと同じくリリース数が少ない。一方で、Ubisoftは主力のAAAタイトルこそ控えめだが、カジュアル・パーティーゲームを中心に多く展開している。Bethesda Softworksも積極的にリリースしているメーカーのひとつで、こちらは『The Elder Scrolls V: Skyrim』や『DOOM』『Wolfenstein』シリーズといった大型タイトルを移植していることが特徴的である。

なお今回のEAの決算発表の中では、『Need for Speed』シリーズ新作と『Plants vs. Zombies』の新たなシューター作品が2019年第3四半期に発売予定であるとし、『Need for Speed』の新作については、8月20日からドイツで開催されるイベント「gamescom 2019」にて披露することが明らかにされた。これらの作品はNintendo Switchでも発売されるのかどうか注目されそうだ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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