Hit Boxの新モデル「Hit Box CrossUp」発表。レバーレスが特徴だったシリーズの、一部大会ルールに抵触し得るレバー付きモデル
Hit Box Arcade社は日本時間7月25日、同社の販売する格闘ゲーム用レバーレスコントローラーである「Hit Box」シリーズの新モデル「Hit Box CrossUp」を発表した。現在開発中の商品で、8月1日より支援用のKickstarterが開始する予定だ。
Hit Boxシリーズは前述のようにレバーレスコントローラーを代表するモデルシリーズであり、レバーの代わりに上下左右ボタンで移動操作をする。PCゲームのWASD移動をイメージするとわかりやすいだろう。こういった移動ボタンは格闘ゲーム特有のコマンド入力を高速・高精度で入力できるなどのメリットがあり、近年じわじわと利用者数が増えてきている。
しかし、そんなHit Boxの最新モデルである「Hit Box CrossUp」の最大の特徴は本来オミットされたはずであるレバーが存在していることだ。左手で操作する移動用の入力デバイスは旧来のレバーへと戻っており、代わりに右手で操作する攻撃ボタンの周囲に移動ボタンが配置されている。「左手で移動とコマンド、右手で攻撃」というのはアーケードコントローラーの基本設計であったが、「Hit Box CrossUp」は左右両方の手で移動操作ができるようになっている。
この「Hit Box CrossUp」は、Hit Boxの利点を維持しつつも今までのレバー操作になれたプレイヤーが、Hit Boxを習得する際に一から移動ボタンに慣れなければいけないというハードルを下げることができる。通常時は今まで通りレバーで操作しつつ、レバー操作の負担が大きいタイミングのみ、右手でフォローをすることができるというわけだ。特に、レバーはその構造上、同方向の連続入力(→→や↓↓など)が絡むと一気に操作負担・難易度があがる傾向があり、右手に配置された移動ボタンはその助けとなるだろう。
レバーレスコントローラー特有の問題とされているSOCD(Simultaneous Opposing Cardinal Direction、左右や上下など反対方向への同時入力)の仕様は今までのHit Boxと同じとされている。左右の同時入力は相殺し、ニュートラル入力としてゲームに送られ、上下の同時入力は上入力として送られる。これにより、今までのHit Boxで出来ていたような移動ボタン特有のコマンド入力テクニックも可能となっている。
しかし、この「Hit Box CrossUp」は、大会出場などの目的に使う場合においてはどうしても見過ごせない点が存在する。『STREET FIGHTER V ARCADE EDITION』の公認プロツアーであるCAPCOM PRO TOUR(以下、CPT)のルールにおいては、このコントローラーは使用できない可能性が非常に高いのだ。CPTのコントローラーに関するルールは6月21日に更新されており、そこには以下のように記載されている。
以下引用:
移動行動を方向キーやレバー、アナログスティックではなく、ボタンとして適応したものを移動ボタンと言う。移動ボタンとレバーは共存して設置することができるが、その場合は対価として、対応する移動行動のキー入力を失わなければならない。例えば、上方向キーだけを移動ボタン化した場合、レバーの上方向の入力は無効化しなければならない。
「Hit Box CrossUp」の仕様は、このルールに明確に違反しているように思われる。なんらかの形で右手側の移動ボタンを無効にできる設定があれば、CPTの大会でも利用できる可能性はあるが、それはもはや普通のアーケードコントローラーとなんら変わらない。Hit Box Arcade社がこのCPTのルールを把握していなかった可能性は低く、真意は定かではないが「Hit Box CrossUp」のデモ映像も今までのモデルでは『STREET FIGHTER』シリーズが使われていたのが、『鉄拳』シリーズの映像へと変更されている。今後大会等で「Hit Box CrossUp」どういう扱いになるかは未知数であるため、そこを念頭に入れた上で購入・支援を検討する必要があるだろう。